MAG2 NEWS MENU

Words "BONUS" with blocks

賞与支給日の20日前に死亡した社員に賞与は支払うべきか?

夏と冬のボーナス。貰える人にとっては、1年の楽しみのひとつと言っていいかもしれません。しかし、賞与の支給日に死亡していた場合、その支払いはどうなるのでしょうか?無料メルマガ『「黒い会社を白くする!」ゼッピン労務管理』の著者で特定社会保険労務士の小林一石さんが、裁判結果をもとに詳しく解説しています、

賞与支給日前に死亡した社員に賞与を支払う必要があるのか

12月24日生まれの芸能人と言えば石原さとみさんがいます。

クリスマスイブが誕生日というとそれを羨ましがる人もいるかも知れませんが、ただ、そこでよく言われるのが「プレゼントを一緒にされちゃう問題」です。

これは24日に限らず12月生まれだとその確率が高くなるようですね。

ただ、この「日付」は本人の努力でなんとかなるものではないので、周りが工夫してあげるしかありませんね。

この「日付」は労務管理においても問題になることがあります。

それについて裁判があります。

ある病院でそこに勤めていた職員に賞与が払われなかったとしてその病院が訴えられました。

実はその職員は賞与の支給日の20日前に病気で亡くなっていました。

その病院の就業規則では「賞与は支給日に在籍している職員に支払う」となっていたため、それに従って病院は賞与を支払っていなかったのです。

ではこの裁判はどうなったか。

裁判所は以下のように判断し、病院に賞与を支払うように命じました。

・(病院は)賞与を支給する義務を当然に負うものではないから、賞与の対象者の範囲に基準を定めることは否定されることではない。将来の貢献を期待し、在籍の有無を考慮すべきことも認められる

・ただ、本件のような病死による退職は、任意退職とは異なり、労働者がその退職時期を事前に予測したり、自己の意思で選択したりすることはできない。このような場合にも支給日在籍要件を機械的に適用すれば労働者に不測の損害が生じ得ることになる

・また、病死による退職は懲戒解雇などとは異なり、功労報奨の必要性を減じられてもやむを得ないような労働者の責めに帰すべき理由による退職ではない

・以上を考慮すると賞与支払請求権の発生を妨げるものではないと認められる

いかがでしょうか?

おそらくみなさんの会社の就業規則でも支給日の在籍を要件にしている場合が多いと思います。

それ自体は問題ありません。そして、在籍していない場合に支給しないことも問題ありません。

ただ、今回のような場合は注意が必要です。

これは死亡退職に限らず、定年退職や整理解雇などの会社都合による退職も当然ながら含まれます。

あとは、法律論を離れますが実務的にはどう考えるべきか、です。

例えば、就業規則の通りに賞与を支払わなかったとしましょう。

遺族の人にも就業規則の内容を説明し、納得してもらったとします。

そうすれば、支払わなかったとしても問題は起きないかも知れません(繰り返しくどいですが法律論を考慮しなかった場合です)。

ただ逆に、支給日には在籍していないものの、それまで会社のために一生懸命働いてくれて、本人の意思とは関係無く在籍していなかった社員に、「本当に支払わなくて良いのか」ということも、考える必要があるような気がします。

みなさんはどう考えるでしょうか。

image by: Shutterstock.com

特定社会保険労務士 小林一石この著者の記事一覧

【社員10人の会社を3年で100人にする成長型労務管理】 社員300名の中小企業での人事担当10年、現在は特定社会保険労務士として活動する筆者が労務管理のコツを「わかりやすさ」を重視してお伝えいたします。 その知識を「知っているだけ」で防げる労務トラブルはたくさんあります。逆に「知らなかった」だけで、容易に防げたはずの労務トラブルを発生させてしまうこともあります。 法律論だけでも建前論だけでもない、実務にそった内容のメルマガです。

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 「黒い会社を白くする!」ゼッピン労務管理 』

【著者】 特定社会保険労務士 小林一石 【発行周期】 ほぼ週刊

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け