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「グローバル教育」はポーズ。IT化は絶望的、日本の大学の呆れた現状

少子化によって生き残り競争が激しくなる日本の大学。「グローバル教育」や「国際化」を打ち出す大学も増えてきましたが、実態は“ポーズ”だけと言わざるを得ないレベルのようです。今回のメルマガ『東南アジアここだけのお話【まぐまぐ版】』では、米国の大学院で教育学を学びマレーシアに11年以上滞在する文筆家で編集者の、のもときょうこさんが、IT化の遅れや留学生との壁など、日本の大学と大学生の問題点を複数指摘。学費や生活費の安さや卒業し易さに加えて、グローバルとは真逆の「独特な文化」の方が強みになると提言しています。

日本で「グローバル教育」「国際化教育」は難しいと思った件

「日本の教育は悪くない」とよく言われます。「悪くない」はその通りだと思います。しかし、今回帰国し、大学生にヒアリングしてみたところ、教育そのものはわかりませんが、少なくとも日本でグローバルに対応する力をつけるのはやっぱり厳しそうだなと思ったので書いてみます。

大学のIT化が絶望的だった……

今回、ヒアリングしていて衝撃だったのは、大学のIT化が絶望的にされていないことです。入試は今や世界的に大学にアプライするのはウエブベースが主流。長男は今の所、オランダ、イギリス、カナダ、オーストラリアの大学に申し込みましたが、面接から合格通知まで全てオンラインで完結し、紙を送った件数はゼロ。

それが当然の時代なのですが、日本では私立大学を含めて、いまだに郵送ベース、紙ベースが多いです。もっともグローバル化が進んでいると思われる世界的に評価が高い大学でも、情報の多くが紙で配布されていると聞いて驚きました。

それから学生のスタートが違いすぎることです。例えば入学してからGoogle Driveやタイピングの練習をすると聞きました。一流大学で、パソコンがほぼ使えない学生がいると聞いたのも驚きました。今まで調べ物はどうやってきたのでしょうか?

私が見てきた多くのマレーシアの高校では、Google DriveやPowerPointが使えないと、グループワークができませんでした。私のいる(誰でも入れる)アメリカの大学でも同様です。入学してからエクセルやワードの使い方を覚えるのでは、大学の勉強自体に支障が出るのでは?

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グローバル教育を謳っても、ポーズだけだったりする

留学生と日本人学生の生活が完全に分離しているところが多いようです。留学生の多い大学の日本人学生は、「授業も別々で、ほぼ交流がない」と言っています。まさに、こんな感じです。
「友達ができず孤独で不安」外国人留学生が日本社会に溶け込みづらいワケ | China Report 中国は今 | ダイヤモンド・オンライン

 筆者は昨夏、外国人留学生のオンライン交流会に参加したが、そこで目の当たりにしたのは、来日する外国人留学生の孤独だった。

 

 東欧出身のAさんもまた、日本で友人を作るのが難しいと感じている一人だった。「あなたに日本人の友達はいますか?」という筆者の質問に、彼女は「そもそも、友人の概念が日本人とは違います」と切り出した。

 

 Aさんは「日本語の『友達』は私たちからすると『知り合い』という意味に近いのですが、日本人と“知り合い”になるのも大変難しいです。なぜなら、外見の違いで外国人は怖いと思う人が多いからです」と訴えた。

ある程度民族で固まってしまうのは、どの国の教育機関にもあるとは思いますが、日本の場合、特に仲間に入るのが難しいことがデータでも知られています。そして大学の場合、この「外国人怖い」は本当にあるようです。

私が卒業した早稲田大学もそうでしたが、そもそも英語でコミュニケーション取れない学生が多いため、交流にならないです。最近では英語コースを作る学校も出てきましたが、ごくごく一部で、学科も限られます。

 日本人との間にできる見えない壁は、社会人になってからも依然存在し続けた。東アジア出身のRさんは、会社の飲み会での体験を語ってくれた。

 

「日本人は、日本人の間だけで盛り上がるタレントやテレビ番組を中心とするトピックを選びがちです。外国人からすれば、日本人が関心を向ける話題はかなりニッチであり、ついていくことができませんでした」

これ、日本にいるとありがちですが、案外気づいていない人が多いんでは、と思います。その場にいる全員が理解できる共通の話題を選ぶのも、コミュニケーションの重要なポイントかと思うのですが、「国際的に話せる話題そのもの」がないのかもしれません。

私も大学時代に外国人との「交流サークル」に入っていた時期がありますが、「日本人が日本のことを教えてあげる」風の、上から目線のものだったと思い出しました。

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英語ができないのは、学生ばかりではないようです。私は、「留学生「国際化」を謳う大学の入試過程で、英語のレポートを日本語訳して出さなければいけないのはなんでだろう?と不思議だったのですが、「教授が英語を読めないから」だと聞きました。レポートをDeepLにでも放り込んで読めばいいのに、と思ったのですが、「紙」で受け付けてるのでそれもできないみたいです。

グローバルのことが学べるのはインターネットがあるからこそ。「グローバル=英語教育」になってしまっている大学が多いのかな……。だったら、いっそのこと国際化された大学とは言わないほうがいいと思うのですが……。

でも、いいところもある

そうはいっても日本の大学にはいいところもたくさんあります。これだけ「グローバル」と掛け声をかけても変わらない構造、ハードと見掛けだけ変わって、中身は一緒ーーのスタイルを逆に利用するのです。

まずは比較的自由で単位が取りやすいことです。欧米の大学は単位を取るために必死で勉強し続けないとなりませんが、このストレスは相当です。私がいる「誰でも入れる」大学ですら、毎週レポートを3つは出さないといけないので、一流大学に入ったらどんだけ大変だろうと思います。評価軸は客観的に決まっており、教授が「温情」で単位をくれるとか、ありえないです。

ところが日本では、もう少し自由です。4年の間に別のことができます。勉強を押し付けられたくない、大学時代に旅行したい、もしくは勉強はオンラインで自分でやる、と思う学生にはいいのではないかと思います。これは「大学にはいる」ことが目的だった学生のニーズにもあっています。

次に学費が安いことです。欧米の大学に受かったはいいものの、学費の高さ(年間500万とか)で諦めてしまう学生、少なくありません。特に国立大学は良心的で、生活費も決して高くありません。

そして東アジアの独特でユニークな文化があります。グローバルに背を向けているからこその、独特の文化が残っていると思います。日本に「グローバル」を求める学生は少ないのでまあいいのかな、と思います。

特に、海外で学んできた日本人は、グローバルに対応する力はついているでしょうから、いったんこの文化を経験して「多様性」を肌で理解するのは、ありかもなーと思いました。

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image by: Shutterstock.com

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文筆家・編集者。金融機関を経て95年アスキー入社。雑誌「MacPower」を経て以降フリーに。「ASAhIパソコン」「アサヒカメラ」編集者として主にIT業界を取材。1990年代よりマレーシア人家族と交流したのときっかけにマレーシアに興味を持ち11年以上滞在。現地PR企業・ローカルメディアの編集長・教育事業のスタッフなど経てフリー。米国の大学院「University of the People」にて教育学(修士)を学んでいます。 著書に「東南アジア式『まあいっか』で楽に生きる本」(文藝春秋)「子どもが教育を選ぶ時代へ」「日本人には『やめる練習』が足りていない」(集英社)「いいね!フェイスブック」(朝日新聞出版)ほか。早稲田大学法学部卒業。

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【著者】 のもときょうこ 【月額】 ¥1,320/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎週 木曜日

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