これまで4回に渡りお伝えしてきた、静岡県湖西市の市立中学校における重大事態いじめ事件への、同市教育委員会による隠ぺいを含めた許しがたい対応。そんな彼らの体質は容易に改善されるはずもなく、現在も失態を晒し続けているようです。今回のメルマガ『伝説の探偵』では現役探偵で「いじめSOS 特定非営利活動法人ユース・ガーディアン」の代表も務める阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんが、市教委がついた嘘と「開き直り」を紙面で紹介。彼らの姿勢を「全てにおいてダメな見本」と強く批判しています。
助け求めるいじめ被害者の手を払いのける。静岡県湖西市教育委員会の壮大な開き直り
2019年、当時中学2年生であった女子生徒が部活動などで回復不能な重大ないじめ被害を受け、その後隠蔽されていた事件については、伝説の探偵でも何度も触れてきた。
2023年7月、湖西市のいじめ隠ぺい事件で新たな動きがあった。
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重大事態いじめのガイドラインに沿わぬ形で調査を進めた第三者委員会
既に4回に渡って記事にしてきたので、記憶に新しい方も多いだろうし、報道で目にした方もいるだろう。
2019年、湖西市立の中学校に通う女子生徒が、部活動などで深刻ないじめを受けたが、学校長の思い込みによって、いじめはないとされ、その後放置、隠ぺいされた事件である。
湖西市教育委員会や市長に助けを求めるも、これらは無視されたりブロックされるなどしたが、文科省や静岡県教育委員会の指導があって、湖西市教育委員会は、第三者委員会を設置した。この第三者委員会により、市教育委員会の対応や学校の対応があまりに杜撰であったと指摘され、いじめ被害はあったと認定されたものの、後日発表された被害側の所見書では、この第三者委員会すら国の定める重大事態いじめのガイドラインに沿わぬ形で調査が進められ、不十分な対応であったことが明かされたという事件。
被害側は、隠ぺいに関与した教職員や主体的に隠ぺいを行った当時の学校長などへの加害者からの謝罪を求めていた。また、第三者委員会の形成についてのプロセスに瑕疵がある状態で、調査結果へのプロセスが示されていないことやこの説明がないことから、情報開示やその説明などを求めていた。
これらは至極当たり前の要求に過ぎないが、言葉で言っただけでは回答する兆しも無いため、所見書を提出して公開したのだ。
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この記事の著者・阿部泰尚さんのメルマガ
阿部探偵が暴く湖西市教育委員会がついた大ウソ
5月11日の第三者委員会報告記者会見直後、湖西市教育委員会の教育長は、第三者委員会の提言通り、「教育委員会直下に常任の第三者委員会」を形成すると、自信満々に答えていた。
しかし、そもそも10年前にできた「いじめ防止対策推進法」について理解不足であり、その勉強会をするなどと、トンデモない発言もしていたし、そもそもこのいじめ隠ぺい事件は、法律を無視するどころか逆行した対応で、被害生徒に回復不能な被害を与えているし、この隠蔽には教育委員会自体の法律理解不足もあり、これを指摘した第三者委員会すら、文科省のガイドラインを守らない始末であったのだ。
だから、被害側は、常設の第三者委員会自体を形成するのは危険ではないかと指摘して、まずは検証委員会を設置することを要望した。
また、国内では初の試みとしていじめ対策に実績を上げている大阪寝屋川市のいじめ対策を、被害側が提言した。これは、教育委員会ではなく市長部局に監察課を設置するというもので、積極的ないじめ被害の認知や、段階を設けたいじめ対応など機動的な対策と予防が期待できる。
こうした提言が報道によって明らかになると、湖西市教育委員会は、恰も自らが考えたかのように「常設の調査委員会(常任第三者委員会)は、市長部局直下で検討している」と公表したのだ。
被害側をサポートする唯一の支援団体として、私は本件に関与しているが、この話を聞いた時、即座にこれは「嘘」であると思った。
理由は簡単だ。
市長部局直下に第三者委員会を置く場合は、市役所の調整レベルで済む話ではない。
大阪寝屋川市の場合でも、関連する条例が議会を通っているし、根拠となる法令が必要になってくるはずなのだ。
あまりに、湖西市が小賢しいアホな回答をしているので、どうせつくならトコトン嘘をつかせようと思って黙っていたが、もう十分嘘をついたし報道記録にも残っているだろうから、本記事で明らかにしたわけだが、この地には正しい知識と経験を持った専門家がいないのだろうと思う。
広く意見を求めず、調べもせず、学びもしないからこんなことが起きているのだろう。
その後、湖西市の影山市長は、大阪寝屋川市の広瀬市長に寝屋川プランを直接学びたいと打診し、広瀬市長はこれを快諾した。広瀬市長は、感謝する被害側にTwitterを通じ公開の下で、対応していきますよと答えている。
が、しかし、「0706所見書への経過報告」では、下記のように湖西市教育委員会は回答をしている。
第三者による調査委員会の常設及び市長部局に設置する組織について
いじめ防止対策推進法に示されている重大事態にかかる調査委員会としての、第三者委員会は、すぐに立ち上げることができるように常設の必要があると考えております。
御要望のあった市長部局に、早期に対応し、いじめの芽を摘む組織については、プロジェクトチームの立ち上げと、寝屋川市への視察に向けての調整など検討を進めております。
つまりは、第三者委員会は教育委員会直下に常設するが、寝屋川プランは検討段階であるということだ。
おいおい、大丈夫なのか??である。
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「もう終わりにして。あとは静岡県教育委員会に任せてるから」
報道では、2023年7月7日に、7月6日にあった、教育委員会からの被害側への説明について報じている。
被害側は、6日に「所見、謝罪時の要望についての経過報告」とあるので、わかりやすく「0706所見書への経過報告」とここでは表記する。
さて、これ、6日の説明がなぜ7日の報道になったのか?であるが、答えは簡単だ。
市の教育委員会は、被害側は単独で話を聞くなどに恐怖していることから、報道陣の前での説明を求めたが、これを教育委員会側が拒絶し、報道陣を締め出したのだ。
さらに、書面などは、被害側から提供してもらえばいい!と対決姿勢をとったのだ。
この「0706所見書への経過報告」は、大きく「第三者委員会について」と「謝罪や処分について」「被害側への楽手支援や進学などへの不利益対応について」の3つにわけることができるが、総じて言えることは、「極めて不誠実なゼロ回答」である。
簡単に内容を要約すれば、
いじめはあった、被害者は深刻な回復不能な状態に陥った、隠ぺい行為があった、ガイドラインは守らなかった、法律も守らなかった。これら守るように頑張る。
だから、もう終わりにして。あとは、静岡県教育委員会に任せてるから、その判断がでたら、また検討するからさ。
である。
第三者委員会の報告や提言、被害側からの衝撃的とも言える所見書、大津の凄惨ないじめ被害やそれまでのいじめ自死事件などの積み上げとしてできた「いじめ防止対策推進法」は、すべて、スケープゴートとして使われ、まるで、通過儀礼のように「なんの反省にも基づかず、何の改善も見込めない組織」なんだろうと、被害側は説明の途中から、話す気力すら失せたという。
怒るの先にある脱力と絶望感ということであろう。それほどまでに劣化した湖西市教育委員会、いったいどこへ進もうというのだろうか。
願わくば、大阪寝屋川でよく学び、検討とは言わずに、その仕組みのみならず、志も共にしてもらいたいものだ。
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すべてにおいて「ダメな見本」の湖西市教育委員会
私は記事を書くのみならず、いじめ被害の支援団体の代表理事として、各地域で起きるいじめ問題の支援に当たっています。
湖西市のいじめ隠ぺい事件も、途中から前任引継ぎのないまま、支援に当たっているわけですが、今回の経過報告を受けて、「うわっ、マジ?開き直ってんじゃん」と正直思いました。
トライアンドエラーすらできていないというか、組織として、形だけの改善があっても、中身が伴わないんだろうなと思います。こうした事態は、各地域で起きています。
それはなぜか?よく私も問われるのですが、これらの組織は、本来こどもの成長や教育、その基礎の基礎は安全等のためにあるはずですが、いつの間にか、組織の構成員の生活と出世、保身のためになってしまうからだと思います。
組織の長は、自分の代では何事も起きず、何か良きイベントでもあればと期待するわけです。
過去、都内のある小学校の校長で、どうしようもない校長がいたのですが、彼の場合は、いじめ対応は時間稼ぎをして中学に行ってしまえば終わりと考えていて、とにかく引き延ばしを計り、大規模イベントは何があろうが功績だからと参加していました。
私は当時、単なる探偵でしたが、私が経営者層に人脈が強くあり、その区の教育長といつでも会える存在だと知ると、突然私にゴマすりを始めました。
あまりに、態度が豹変したので、副校長が話し合いの最中に突然泣き出したほどです。
彼の場合は、こどもが第一ではなく、自分の保身と出世が第一です。
世で言う、嫌いな上司の全ての性質を兼ね備えていたのでしょう。だから、事務トップの副校長が泣きだしたのではないかと。
嫌いな上司、嫌な組織としては、百点満点では、絶対にいけません。
建前でも、こどもが第一という姿勢を見せてもらいたいと思います。
そして、まずは良い見本を見せてくれと思います。
今回の湖西市は、助けを求める手を払いのけ、地獄に落とすかの如く、隠ぺいを行い、これが明らかになると、みんなの前では謝って見せ、手のひら返しをして開き直る。
独裁国家のように報道陣を締め出す。
今のままでは、全てにおいてダメな見本ですね。こどもに誇れません。
きっと、こどもたちもそんな大人にはなりたくないと思うと思います。
今回は経過報告ですから、最終報告はもう少しマシになっていればとは思いますが…。
まあ、期待するだけ血圧高くなりそうです…。
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image by: 湖西市長 影山剛士 - Home | Facebook