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なぜロイヤルホストの業績はコロナ禍前を上回ったのか?炙り出された企業の強さ

ファミレス大手3社の一角を担うロイヤルホストの業績が、コロナ禍前を上回る好調さを見せています。何が同チェーンに顧客を惹きつけているのでしょうか。その分析を試みるのは、フードサービスジャーナリストの千葉哲幸さん。千葉さんは今回、ロイヤルホストが続ける「至極真っ当な努力」の数々を取り上げるとともに、取材を通して実感したファンと同チェーンの良好な関係性を紹介しています。

プロフィール千葉哲幸ちばてつゆき
フードサービスジャーナリスト。『月刊食堂』(柴田書店)、『飲食店経営』(商業界、当時)両方の編集長を務めた後、2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴三十数年。フードサービス業界の歴史に詳しい。「フードフォーラム」の屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。

なぜ、ファミレス「ロイヤルホスト」は業績がコロナ禍前の水準を上回ることができたのか?

外食企業にとって、コロナ禍が落ち着いてきた今日、コロナ禍とはその企業の本質的な“強さ”の部分をあぶり出す役目を果たしたのではないかと筆者は考えている。

それを象徴しているのがファミリーレストランの「ロイヤルホスト」(221店/2022年12月末)の動向だ。同チェーンの2022年12月期の売上水準が19年度を上回った。同社22年度の決算説明資料によると、19年度比で10月117.5%、11月106.9%、12月114.2%となっている。客単価は250円アップしている(実額は非公表)。

コロナ禍にありながら、その好調の要因はどのようなものか、同チェーンを展開するロイヤルフードサービス株式会社(本社/東京都世田谷区)の代表取締役社長、生田直己(なおき)氏へ取材したことから、そのポイントをここでまとめておきたい。ちなみの同社は、ロイヤルホールディングス株式会社の外食事業の中核となる事業会社である。

「地域の店」に食事目的のファンが来店

それはまず、店舗の立地環境が挙げられる。「ロイヤルホスト」は1971年北九州の黒崎に1号店がオープンしてから50年以上の歴史がある。当初はモータリゼーションが発達途上で、車で来店できるように駐車場を数多く抱えた店舗にした。このような形で30年くらい経過したが、人の集まり方が都市や繁華街にシフトするようになり、店舗もロードサイドタイプからビルインタイプに変わっていった。

しかしながら、コロナ禍で一番影響を受けたのは都心タイプであった。繁華街や駅前には全く人がいない状態。一方、コロナ禍にあっても強かった店はロードサイドに象徴される「地域の店」。元々食事を目的に来店されるお客が多い店で、コロナ禍が悪化していきながら逆にこのような利用目的のお客が増えていった。そして、これまで以上に食事を楽しんでいた。そこで客単価も上がった。

ファミリーレストラン50年の歴史の中で「ロイヤルホストは少し高いけれど、おいしい店」というポジションを得るようになったが、コロナ禍での閉塞感が漂う中でこの「おいしい」という部分が「行きたい店」という目的来店の動機をもたらしたようだ。つまり、普段からの「ロイヤルホスト」のファンが身近にある同店に足を運ぶようになった。

最も特徴的なことは、フードメニュー人気上位の「オニオングラタンスープ」の出数が1.5倍になったこと。これは新婚旅行中のマリリン・モンローがこのメニューを好んで続けて来店したという伝説があり、「ロイヤルホスト」に日ごろ親しんでいるお客が好んで注文するメニューの一つである。

そして「ロイヤルホスト」が強みとする「洋食」に磨きをかけた。それを象徴するのが、昨年導入した「洋食小皿」シリーズ。その一つとして「シーフードリクームオムライス&煮込みハンバーグ」2,398円(税込、以下同)で、ネーミング通りに洋食の楽しみを一つのお膳の中にセットにして、人気を博している。また「海老と蟹のグラタン&ビーフシチュー」2,288円もあり、同店のファンにとって「あれもこれも食べたい」という欲求を満たしてくれる。

「洋食小皿」シリーズ。その一つとして「シーフードリクームオムライス&煮込みハンバーグ」2,398円

テイクアウトと外販に力を入れる

次に、コロナ禍にあってテイクアウトに着手したことも業績を押し上げた要因の一つとなっている。コロナ前にもテイクアウトを行なっていたが、カレーやサンドイッチの類で数品であった。しかし、ステーキやハンバーグといった「ロイヤルホスト」の強い部分もテイクアウトで楽しんでいただこうと、テイクアウトメニューのラインアップを抜本的につくり直した。

これらの価格が低いメニューでは「ベジタブルカレー&雑穀ごはん」1,382円、「アンガスサーロインステーキ重」1,650円というのがあるが、「200gアンガスサーロインステーキごはん」3,218円という3,000円を超えるものや、「アンガスサーロインステーキ(450g)」5,162円というホームパーティの需要を見込んだ商品もある。「手作りフライドチキン」410円や「天然海老フライ&紅ずわい蟹のクリームコロッケ」730円といったサイドメニュー的なメニューもあり全21品目となっている。

これらの容器はそれまでプラスチック製であったものを、お重のような形状のものを採用してテイクアウト商品の価値を高めた。

コロナ禍が始まったころ、店の売上が低かった中でテイクアウトは10%を占めていた。いまイートインが増えてきてテイクアウトの占有率は低くなったが、売上の金額は変わっていない。つまり、テイクアウトは売上のプラスになっている。生田氏は「ロイヤルホストのメニューをテイクアウトで楽しむというパターンが定着してきたのではないか」と述べる。

調理済みフローズンミールの「ロイヤルデリ」を「ロイヤルホスト」で販売するということも根付いてきた。コロナ禍にあってイートインの客数が少なかったことから、従業員がお客にこの商品の魅力を積極的に告知するようになった。

当初はレジ周りに「ロイヤルデリ」のための冷凍設備がない店もあり、注文をいただいたらキッチンの冷凍庫に入れてある「ロイヤルデリ」を取りにいくということを行っていた。そんな中で、レジ周りに冷凍設備がある店より、ない店の方が「ロイヤルデリ」の売上が高いといった成功事例が現れて盛り上がりを見せたという。こうして「ロイヤルホスト」にとって「ロイヤルデリ」の販売は定番化するようになり、全店でレジ周りに冷凍設備を入れるようになった。

調理済みフローズンミールの「ロイヤルデリ」の冷凍施設をレジ近くに設置することは標準装備となっている

自信のあるメニューを堂々と打ち出す

メニューブックでは3,000円前後のプラタッター(盛り合わせ)が盛んにアピールされている。

「ロイヤルホスト」が得意とするメニューを集めたプラッターが人気を集めるようになった

4月にオープンした「光が丘IMA店」では「タッチパネル・オーダー」を採用しているが、最初のメニュー画面にいきなりこれらのメニューが表示されている。このような高価格の路線はメニューにおける自信の現れと見ていいようだ。

4月にオープンした「ロイヤルホスト光が丘IMA店」は107坪で102席というゆったりとした構成

「光が丘IMA店」で導入されているタッチパネルには、いきなり3,000円クラスのメニューを表示している

「ロイヤルホスト」では7~8年前から「価値創造戦略」に力を入れている。象徴的な事例として、生田氏は「ステーキ」を紹介してくれた。高品質なアメリカのアンガスサーロインステーキを現地でパッキングしてチルドで入れて、それをキッチンで封を開けてある程度トリミングをして、チルド庫でちょっと寝かしている。素材の価値が上がると自ずと値段も上がる。生田氏は「当初は『2,000円超える商品はどうかな』と思っていたが、この一連の商品がお客様にご好評をいただいて、これを継続しているところ」と語る。

冒頭で述べた客単価アップは目的来店が増えた証である。「ロイヤルホスト」が取り組んでいる価値創造戦略が顧客に根付いてきているのであろう。そして、普段から同チェーンとのファンとの結びつきが強いことも実感する。

image by: Ned Snowman / Shutterstock.com , 千葉哲幸
協力:株式会社丸亀製麺

千葉哲幸

プロフィール:千葉哲幸(ちば・てつゆき)フードサービスジャーナリスト。『月刊食堂』(柴田書店)、『飲食店経営』(商業界、当時)両方の編集長を務めた後、2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴三十数年。フードサービス業界の歴史に詳しい。「フードフォーラム」の屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。

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