経済的発展を背景に、自らの権力を確固たるものにした習近平国家主席。しかし今、好景気を牽引してきた不動産市場が崩壊の危機を迎え、若年層の失業率も悪化の一途を辿るなど、政権は大きなピンチを迎えています。そんな中国政府が「戦争を求めている」とするのは、日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さん。津田さんは自身のメルマガ『国際戦略コラム有料版』で今回、彼らが周辺諸国との軍事的緊張を高める行動を取る理由を解説するとともに、世界は今後「大戦争時代」に突入するとの予測を記しています。
まるで黙示録が述べている通りの状況に。いま世界の「臨界点」が近づいている
ロシアの侵略戦争の上に、中国経済崩壊の危機になり、AIの発展や地球の灼熱地獄化など複数の事象が重なり、まるで黙示録が述べている世界になってきた。この現状と今後の検討をしよう。
中国経済の動向が問題であり、不動産市場の崩壊で、シャドーバンクが利息の支払いができず、不動産バブル崩壊が「リーマン級」の金融危機に繋がる可能性が出てきた。金融危機が拡大すれば中国経済を直撃しかねない。
しかし、この不動産には諸外国の資金は入らず、中国国内だけの問題になるようだ。1990年代の日本のバブル崩壊時と同じである。
その上に、米国が半導体の輸出規制をしているので、中国での電子機器の生産ができず、中国からの輸出も減っている。欧米日の製造業は、コロナ時のサプライチェーン崩壊から、中国での生産から、日本やアジアに生産拠点を移したことで中国の生産面での依存がなくなっている。
このため、若年層の失業は50%以上にもなっているようであり、バブル崩壊の影響は多方面に出ている。デフレにもなっている。
このため、景気後退局面であるため、中国人民銀行(中央銀行)は15日、中期貸出制度(MLF)の1年物金利を2.5%に引き下げた。
それと、中国景気に敏感な銅価格の下落が目立っている。
そして、とうとう中国不動産大手の恒大集団が17日に、米国で破産申請したことで、中国経済の大減速を示した。
このような、中国経済の大減速を受けて、欧米日企業の中国での売上げも厳しくなることで、世界景気が減速すると日欧米の株も下げている。
そして、中国は日本にとって最大の貿易相手国で、企業の海外拠点も中国に4割近くが集中するなど経済的な結びつきは強い。特に、中国を市場にしている日本企業にとっては影響は深刻だ。
それと、中国のバブル崩壊で、中国から投資家は撤退をしていることで、中国の株価も大きく下落している。需要の減少で欧米日企業は、中国への投資もしない。その上に反スパイ法ができて、いつスパイとして捕まるか分からない状況であり、投資ができない。
しかし、中国は社会主義国家であり、株価がさがると、株の売り停止などの処置をすることで、株の暴落を防ごうとする。人民元安に対しても米国債売りで人民元を買い支えているし、基準値を作り、その値をキープするようである。
しかし、景気全般では、庶民や中間層の収入も資産がなくなり、景気の一層の低下になる。
国家経済が厳しくなると、国家は企業に代わり、職を作ることで景気の下支えをする必要になる。国家の一番大きな仕事は防衛である。
しかし、この職を増やす名目が必要であり、そのため戦争の危機が必要になり、ロシアとウクライナの戦争などでの欧米対中ロの戦いが起こっているとして、台湾を解放することが、中国の役目だとして、今以上の大軍備拡張を行うことになる。
経済は政治の下という感覚が、中国習政権にはあり、このため、政治で経済を動かすという動機が働きやすい。このため、戦争が必要になるのだ。
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中国は危機を作るために、台湾中間線を越えて、多数の中国軍戦闘機が台湾側にたびたび飛行させているし、台湾海峡を航行中の米艦艇に妨害したりもしている。そして、頼清徳副総統が米国に立寄ったことへの対抗措置として、大規模な演習を実施するという。しかし、台湾側は冷静に対応していることで、危機が作りにくい。
このため、南シナ海で中国領土を拡張する動きで、フィリピンやベトナムと摩擦を起こしている。中国は危機が必要であるので、自国領土を拡大させる必要がある。
尖閣諸島に対しても、中国海警局の「海警」4隻が日本の領海に侵入を繰り返し、日本漁船に接近しようとする。海上保安庁の巡視船が領海外へ出るよう警告というように、危機を作り出す可能性がある。
中国経済が大減速することは、すなわち、第3次世界大戦に向かってしまう可能性を秘めている。徐々に進行していた世界戦争へのティピング・ポイントが近いように見える。累積した戦争への要因が一気に悪い方向に向かう可能性がある。
この大戦争への準備のために、バイデン米大統領は18日、ワシントン近郊の大統領山荘キャンプデービッドで岸田文雄首相、韓国の尹錫悦大統領と会談し、3カ国の首脳会談を年1回開催するとし、また機密情報を迅速に共有するため、日韓と新たなホットラインを開設するとした。対中戦争の共同防衛のためだ。
日本の防衛費増額なども台湾海峡での戦争に対応するべく増強し、日米韓の連携も強化する方向である。戦争の時代に対応するしかない。
それと、中国のミサイルが日本に取っては脅威であり、日本と米国が極超音速兵器迎撃ミサイル「GPI」の共同開発を行うとした。
一方、中ロを中心に北朝鮮、イラン、シリアなどの非人道的政権が連携するのは確実で、民主陣営を固めて対抗していくが、中立的なグローバル・サウスでも仲間を増やすことも必要である。
米ハワイ州マウイ島の山火事など、地球灼熱地獄化が止まらない。スペイン・カナリア諸島のテネリフェ島でも、山火事が発生し、当局が「制御不能」と訴えている。また、カナダ北部ノースウエスト準州政府は、山火事が迫っているとして、オーロラ観光で知られるイエローナイフの住民約2万人に避難命令を出した。
台風の強さや雨による洪水の多さや戦争の危機や世界経済がおかしくなっていることなどの複合的な事象が、ヨハネの黙示録の記述している事と同じになってきた。
今後、世界は大戦争時代になると見た方が良い。私が中学時代から座禅をしているが、そのとき見た様相が、徐々に現実化している。
このコラムを始めた切欠も、この座禅で見た様相にならないことを願って行ったので、非常に心配な状況になったと認識している。
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ウクライナ戦争の推移
ウ軍は戦力の集中がなく、多方面で戦力を分散させているため、米国当局者は、ウクライナ軍が現在の攻勢でマリウポリを落とすのは極めて困難だと判断しているようだ。
米国当局者によると、ペンタゴンは単一突破点への大規模戦力の集中をウクライナに対して「何度も」すすめたが、ウクライナ政府は兵力損失を考えて、それとは違った戦略を選んだと。
分散的な戦闘でも、徐々には前進できるが、問題なのは、重防備した三重の防衛線すべてを突破できるかどうか、そしてトクマクやそのさらに奥にある目標を奪還するというような、さらに重要な戦果を達成するための十分な戦力を、消耗してもなお、保持できているかどうかにあるという。
クピャンスク方面
ロ軍は、シンキフカとその西側のオスキル川沿いのウ軍陣地を攻撃したが、撃退されている。シンキフカからペルショットラブネバの間のウ軍は、高台の陣地まで撤退して、防備を固めている。
クレミンナ方面
ロ軍は、ディブロバの北西に戦車隊を先頭に攻撃して、ウ軍陣地を複数制圧して、支配地を増やした。
セレブリャンスクの森でもウ軍とロ軍が戦闘中であり、ウ軍はアゾフ旅団を支援に送った。
ザポリージャ州方面
1.ベルカノボシルカ軸
中央では、ウ軍は、ウロジョイナを奪還した後、更に南のスタロムリニフカの戦いも始まった。
それと、ウロジョイナの東側でも前進して、高台のロ軍陣地を攻撃している。
ロ軍はウロジョイナに攻撃したが、ウ軍に撃退されている。
2.オリヒウ軸
ウ軍は、ロボティネの北半分を奪還したが、ロ軍が逆襲をして、中央部で戦闘したが撃退し、ウ軍がロ軍の地雷原を克服し、トクマク解放の戦いに突入と、第1防衛線に到達したようである。
ヘルソン州方面
ロミルブロガーは、アンノフスキー橋南西の第2の橋頭保やコザチ・ラヘリの橋頭保をロ軍が破壊したという。ロ軍は、ザポリージャ州から空挺部隊をヘルソン州に戻してきたようである。
これを見て、アンノフスキー橋の橋頭保を残して、後の橋頭保から撤退したようである。
そして、ノボカホフカの西のコルスンカ北部にウ軍特殊部隊が上陸している。
ウ軍の軽装備特殊部隊は重火器のロ軍空挺部隊には勝てないので、撤退したようであるが、この部隊は違う場所に上陸して、ロ軍の重装備部隊を翻弄する。この重装備部隊をヘルソン州に留めておくことが役目だからだ。
しかし、ロ軍はザポリージャ州方面から空挺部隊をヘルソン州に戻したことで、ウ軍はベルカノボシルカ軸に温存していた新たな機械化部隊を複数入れてきた。その中には第82空中強襲旅団も含まれている。この旅団には英戦車チャレンジャー2、ドイツのマルダー歩兵戦闘車、ストライカー米歩兵戦闘車などがあり、最強部隊の1つである――(『国際戦略コラム有料版』2023年8月21日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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