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大手のためだけじゃない。小売店でも使える「経営理論」の活用法

経営理論は役に立たない!と大声で語る経営者を見て首をかしげるのは、無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』の著者で経営コンサルタントの梅本泰則さんだけではないはずです。梅本さんは今回の記事で経営理論とは何か、大手以外でも役立てる方法はあるのか、について語っています。

経営理論とチェーンストア

1.経営理論は役に立たない?

「経営理論は後知恵なので、実際の経営には役に立たない」と言った、年商10億円の経営者がいます。本当に役に立たないのでしょうか。

この経営者は、かつて経営理論を振りかざしたコンサルタントと契約をして、ひどい目にあったそうです。少しも成果につながらず、金と時間を無駄にされたと、不満をぶつけます。

何だか言いがかりのような気がしますが、いかがでしょう。

経営理論は多くの企業の経営手法を分析し、他の企業にも役に立つように考え方が整理されたものです。それを「後知恵」だとは言えないでしょう。

例えば、次のような経営理論はご存知だと思います。

・PEST分析(フィリップ・コトラー)
・STP(フィリップ・コトラー)
・SWOT分析(ケネス・アンドルーズ)
・3C分析(大前研一)
・ファイブフォース(マイケル・ポーター)
・バリューチェーン(マイケル・ポーター)
・アンゾフマトリックス(イゴール・アンゾフ)
・PPM(ボストンコンサルティンググループ)
・4P(ジェローム・マッカーシー)
・マッキンゼーの7S(マッキンゼー)

それぞれについての説明はしませんが、これらの理論を提唱したのは経営学者やコンサルタントです。そして、それぞれの理論を打ち立てるために、多くの企業を研究しています。ですから、一般的な経営者よりは多くの知見を手にしているはずです。その成果を「後知恵」だといって受け入れない経営者は、どうかしています。

もちろん、研究した当時は成功していた企業が、その後、業績が悪化したケースもあるでしょう。だからと言って、経営理論が役に立たないということにはなりません。

2.チェーンストアの経営理論

例えば、小売業界で有名なコンサルタント、渥美俊一氏のチェーンストア理論があります。渥美氏は、ペガサスクラブという経営研究グループを組織して、多くのチェーンストアを成功に導きました。例えば、ダイエー、イトーヨーカドー、ジャスコ、マイカル、ユニーなどそうそうたる企業が名を連ねています。

現在は、なくなってしまった企業もありますが、日本の高度成長に貢献したことは間違いありません。最近では、ニトリが渥美理論を実践して急成長したのは、有名な話です。スポーツショップの中にも、ペガサスクラブのメンバーになって成功を収めている企業があります。

とはいえ、ペガサスクラブのメンバー全員が成功するわけではありません。渥美氏から同じようにアドバイスを受けたとしても、経営者によって受け止め方が違います。活用の仕方も同じではありません。当然、企業ごとに成果が異なってきます。「金と時間を無駄にした」経営者は、コンサルタントからのアドバイスをうまく活用できなかっただけなのではないでしょうか。

そして、そのチェーンストア理論も大きな壁に当たっています。時代背景が異なってきているからです。チェーンストア理論は、大量生産、大量消費の時代に力を発揮しました。全国の郊外に同じスタイルの店舗を出店し、コストを抑えて運営します。広い売り場に大量の商品を並べ、競合他社よりも安く売ることが戦略の中心です。

ところが、今や時代は変わっています。日本の人口は減り続け、大量消費時代は過去のものです。すると、大量に出店した店舗と、その広さが重荷になります。あの好調だった家電チェーンや紳士服チェーンが経営に苦しんでいるのは、その証拠です。

スポーツチェーンも例外ではありません。かつてのような勢いはなくなってきています。そこで再び経営理論の出番です。

3.経営理論を活かす

例えば、PEST分析を使えば、世の中の動きを把握することができるはずです。次にSTPを使って、攻略市場を考え直し、新しい競争戦略を打ち出すことが出来ます。SWOT分析をすれば、自社の強みと弱みが明確になり、時流に合った方向性が見いだせるでしょう。

マーケティングも必要です。特に、4P(商品、価格、流通、販売促進)戦略を、構築し直すことが出来るでしょう。

すでに一部の業界では、チェーンストア理論の変更がされつつあります。例えば、店舗を郊外から都心へと移すチェーン店も増えてきました。異業種との合併で、新しい戦略を打ち出しているところもあります。

そうなると、顧客ターゲットを変えなければなりませんし、販売の仕方も以前のままではお客様が満足しません。ほったらかしにしていたお客様一人一人に、丁寧なサービスをする必要が出てきます。今までと同じチェーンストア理論に頼っていると、どんどんと衰退をしていくことでしょう。スポーツチェーンにも、そのことが求められています。

そうならないためにも、経営理論を基に、時流にあった経営戦略を打ち立てることが必要です。しかし、今のところ、そうした兆しは見られません。

では、あなたのお店はいかがでしょう。高度成長期に取り入れた販売戦略のままではありませんか。もしそうなら、今一度、戦略を考え直してみることです。そのために、経営理論を活用してみてはどうでしょう。経営理論は、大手のためだけのものではありません。

■今日のツボ■

・経営理論は多くの企業に役に立つように整理された考え方である
・経営理論をうまく活用すると、時流に合った戦略が考えられる
・スポーツショップも、経営理論を活用する必要がある

image by: Shutterstock.com

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ワン・トゥー・ワンコンサルティング代表。スポーツ用品業界での経験と知識を生かし、業界に特化したコンサルティング活動を続ける。
スポーツ用品業界在籍33年の経営コンサルタントが、スポーツショップの業績向上法について熱く語ります。スポーツショップのために書かれた、日本初のメルマガです。ここには、あなたのお店がかかえている問題を解決するヒントがいっぱいです。

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【著者】 梅本泰則 【発行周期】 週刊

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