マキシマーケティングという言葉をご存知ですか?無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』の著者で経営コンサルタントの梅本泰則さんは、そのマキシマーケティングを上手く活用し成功し続けている「ハーレー・ダビッドソン」の方法を紹介しています。
私の教科書「マルチメディア時代のマーケティング革命」
1.マキシマーケティングとの出会い
私がコンサルティングを行う上で、教科書にしている本が何冊かあります。今回は、その中から、一冊を紹介しましょう。
本のタイトルは『マルチメディア時代のマーケティング革命』。ダイヤモンド社から1994年に出版されています。
著者はスタン・ラップとトーマス・コリンズ。二人とも広告代理店の経営者ですが、それほど有名ではありません。
この本はタイトルから分かるように「マーケティング」の本です。しかも「革命」とあります。ついついタイトルにひかれて買ってしまいました。そして、読んでみると、ビジネスの参考になることが一杯。アメリカの後を追っかけている日本の企業には、役に立ちそうなことが書いてあります。
当時、販売に行き詰っていた私には、天からの贈り物でした。打つ手が見えてきたからです。
1994年と言えば、アメリカは大量消費時代が終わりを迎え、景気後退に入っていた時期です。どの業界も、売り方を変えねばと四苦八苦していました。そのため、新しいマーケティング手法が次々と現れます。
一方、日本でもバブルが崩壊して、不景気が押し寄せてきている時代です。こちらも、モノやサービスの売り方を変える必要に迫られていました。
そんな時に、ラップとコリンズは「マキシマーケティング」という考え方を提唱したわけです。大衆に売るのではなく、「個客」に売る時代がやって来たと、強調します。それに気がついたいくつかの企業が、時代に対応したプロモーションを行い、成功を収めました。
ラップとコリンズは、そうした企業を研究し、「マキシマーケティング」という考え方にまとめていきます。「マキシ」とは、簡単に言えば、「顧客満足の最大化」ということです。
2.マキシマーケティングとは?
その頃、米国では、ダイレクトマーケティング、リレーションシップマーケティング、データベースマーケティング、パーソナルマーケテイング、ワントゥワンマーケティングなど、さまざまな新しいマーケティング手法が誕生していました。
マキシマーケティングは、それらの要素を含んだものと言っていいでしょう。現在盛んになっているデジタルマーケティング、ウエブマーケティング、SNSマーケティングなどは、ここから生まれたと言っても良いと思います。
そして、この本で紹介されているのが、次の12社です。
・デル
・ハーレー・ダビッドソン
・レゴ
・ネッスル、
・シーグラム(酒造メーカー)
・フィディリテイ・インベストメント(金融)、
・ライダー(トラックリース)
・ノース・アメリカン・ライフ(保険)、
・MCI(長距離電話)
・NBO(雑貨ディスカウント)、
・ゼラーズ(ディスカウントストア)
・ニーマンマーカス(百貨店)。
新進気鋭の企業もあれば、伝統的な企業もあります。食品会社から、保険、通信、メーカー、小売店と、幅広く紹介されているのが良いですね。
その後、成長を続けた企業ばかりでなく、買収されたり、無くなってしまった企業もあります。30年の歳月による時代の移り変わりは、本当に速いということです。
それぞれの企業のマーケティング手法は同じではありません。しかし、その手法は、大変インパクトの強いものです。
「そうか!こうすればもっと顧客が増えるのだ」
「こうすれば、お客様に満足してもらえるのだ」
従来の売り方しか知らなかった私には、貴重なヒントでした。
30年近く経った今でも、参考になることがあります。そういう意味では、私の仕事にとって、大切な教科書です。
そこで、この本にある12社全部の手法を紹介することは出来ませんので、最も活用しやすいと思う「ハーレー・ダビッドソン」が採った方法を紹介します。
3.ハーレーのマキシマーケティング
ハーレー・ダビッドソンは、1903年にダビッドソン家の裏庭の小屋から始まりました。1992年の同社の超大型オートバイ市場シェアは、68%です。スゴイですね。
しかし、大変な目にもあっています。市場シェアが拡大したためでしょう。1980年代の初めに、品質の低下で売上を落とし、倒産寸前の状態に陥ります。
その事態を救ったのがマーケティングです。カスタマーリレーションシップを作り上げることに成功しました。その最たる活動が「ハーレー・オーナーズクラブ」です。1993年には会員数は世界で20万人となります。SNSの盛んな現在からすると大した数ではありませんが、当時としてはスゴイ数です。
初年度の会員費は無料。2年度以降の会員費は35ドルです。現在のレートにしても5,000円そこそこですから、決して高くはありません。年間、10億円の会費収入が得られます。
会員特典は、以下のようなものです。
・ABCツーリング:違った町や場所を訪れるとポイントがたまり、ポイントによってオリジナルのピン、帽子、バンダナがもらえる
・緊急ピックアップサービス:自宅から50マイル以上離れたところでの牽引サービス
・フライ・アンド・ライド:何カ所かのツーリングセンターで、ハーレーを借りられる
・HOGトラベルセンター:飛行機や車のレンタル、ホテルの予約をしてくれる
・マイレージメリットプログラム:決まった期間内での走行距離によって賞品がもらえる
・10年連続会員認定:継続して10年以上の会員には特別ワッペンが贈られる
・ツーリングハンドブック:ハーレー取扱店のある全市町村の地図やツーリング情報などがついたハンドブックがもらえる
・ホッグテイルズ:年6回発行される会員広報誌。イベントニュースや会員からの投稿など、面白い記事が掲載される
ものすごい量の特典ですね。これらの会員特典を実施するには、専任部署が必要でしょう。
その他、ハーレー・オーナーズ・クラブの会員とのミーティングを行って会員同士の交流に力を注いでいます。また、販売店とのミーティングも盛んで、その場にはハーレーの役員も参加し、現場の声を拾っているようです。「試乗会」も行われます。新製品への、顧客の意見を集めて製品に反映させようとするのが目的です。
ハーレー・ダビッドソンは、まだまだ多くの企画を用意して、お客様との関係を深く持とうとしています。これが、マキシマーケティング、つまり顧客満足の最大化を図る方法の一つです。
きっと、あなたにも参考になることがあるでしょう。ネットを使えば、より簡単に出来るかもしれません。ぜひ、お客様と強い友好関係を作り、将来にわたるお店のファンになってもらいましょう。
■今日のツボ■
・マキシマーケティングは、顧客満足の最大化を図る方法である
・「マルチメディア時代のマーケティング革命」には、12社の実例がある
・その分かりやすい事例として、「ハーレー・オーナーズクラブ」がある
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