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St. Petersburg, Russia - August 8, 2017: Motorcycle Harley Davidson. Motorcycle tank.

なぜ、ハーレー・ダビッドソンは倒産寸前から這い上がれたのか?

マキシマーケティングという言葉をご存知ですか?無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』の著者で経営コンサルタントの梅本泰則さんは、そのマキシマーケティングを上手く活用し成功し続けている「ハーレー・ダビッドソン」の方法を紹介しています。

私の教科書「マルチメディア時代のマーケティング革命」

1.マキシマーケティングとの出会い

私がコンサルティングを行う上で、教科書にしている本が何冊かあります。今回は、その中から、一冊を紹介しましょう。

本のタイトルは『マルチメディア時代のマーケティング革命』。ダイヤモンド社から1994年に出版されています。

著者はスタン・ラップとトーマス・コリンズ。二人とも広告代理店の経営者ですが、それほど有名ではありません。

この本はタイトルから分かるように「マーケティング」の本です。しかも「革命」とあります。ついついタイトルにひかれて買ってしまいました。そして、読んでみると、ビジネスの参考になることが一杯。アメリカの後を追っかけている日本の企業には、役に立ちそうなことが書いてあります。

当時、販売に行き詰っていた私には、天からの贈り物でした。打つ手が見えてきたからです。

1994年と言えば、アメリカは大量消費時代が終わりを迎え、景気後退に入っていた時期です。どの業界も、売り方を変えねばと四苦八苦していました。そのため、新しいマーケティング手法が次々と現れます。

一方、日本でもバブルが崩壊して、不景気が押し寄せてきている時代です。こちらも、モノやサービスの売り方を変える必要に迫られていました。

そんな時に、ラップとコリンズは「マキシマーケティング」という考え方を提唱したわけです。大衆に売るのではなく、「個客」に売る時代がやって来たと、強調します。それに気がついたいくつかの企業が、時代に対応したプロモーションを行い、成功を収めました。

ラップとコリンズは、そうした企業を研究し、「マキシマーケティング」という考え方にまとめていきます。「マキシ」とは、簡単に言えば、「顧客満足の最大化」ということです。

2.マキシマーケティングとは?

その頃、米国では、ダイレクトマーケティング、リレーションシップマーケティング、データベースマーケティング、パーソナルマーケテイング、ワントゥワンマーケティングなど、さまざまな新しいマーケティング手法が誕生していました。

マキシマーケティングは、それらの要素を含んだものと言っていいでしょう。現在盛んになっているデジタルマーケティング、ウエブマーケティング、SNSマーケティングなどは、ここから生まれたと言っても良いと思います。

そして、この本で紹介されているのが、次の12社です。

・デル
・ハーレー・ダビッドソン
・レゴ
・ネッスル、
・シーグラム(酒造メーカー)
・フィディリテイ・インベストメント(金融)、
・ライダー(トラックリース)
・ノース・アメリカン・ライフ(保険)、
・MCI(長距離電話)
・NBO(雑貨ディスカウント)、
・ゼラーズ(ディスカウントストア)
・ニーマンマーカス(百貨店)。

新進気鋭の企業もあれば、伝統的な企業もあります。食品会社から、保険、通信、メーカー、小売店と、幅広く紹介されているのが良いですね。

その後、成長を続けた企業ばかりでなく、買収されたり、無くなってしまった企業もあります。30年の歳月による時代の移り変わりは、本当に速いということです。

それぞれの企業のマーケティング手法は同じではありません。しかし、その手法は、大変インパクトの強いものです。

「そうか!こうすればもっと顧客が増えるのだ」
「こうすれば、お客様に満足してもらえるのだ」

従来の売り方しか知らなかった私には、貴重なヒントでした。

30年近く経った今でも、参考になることがあります。そういう意味では、私の仕事にとって、大切な教科書です。

そこで、この本にある12社全部の手法を紹介することは出来ませんので、最も活用しやすいと思う「ハーレー・ダビッドソン」が採った方法を紹介します。

3.ハーレーのマキシマーケティング

ハーレー・ダビッドソンは、1903年にダビッドソン家の裏庭の小屋から始まりました。1992年の同社の超大型オートバイ市場シェアは、68%です。スゴイですね。

しかし、大変な目にもあっています。市場シェアが拡大したためでしょう。1980年代の初めに、品質の低下で売上を落とし、倒産寸前の状態に陥ります。

その事態を救ったのがマーケティングです。カスタマーリレーションシップを作り上げることに成功しました。その最たる活動が「ハーレー・オーナーズクラブ」です。1993年には会員数は世界で20万人となります。SNSの盛んな現在からすると大した数ではありませんが、当時としてはスゴイ数です。

初年度の会員費は無料。2年度以降の会員費は35ドルです。現在のレートにしても5,000円そこそこですから、決して高くはありません。年間、10億円の会費収入が得られます。

会員特典は、以下のようなものです。

・ABCツーリング:違った町や場所を訪れるとポイントがたまり、ポイントによってオリジナルのピン、帽子、バンダナがもらえる
・緊急ピックアップサービス:自宅から50マイル以上離れたところでの牽引サービス
・フライ・アンド・ライド:何カ所かのツーリングセンターで、ハーレーを借りられる
・HOGトラベルセンター:飛行機や車のレンタル、ホテルの予約をしてくれる
・マイレージメリットプログラム:決まった期間内での走行距離によって賞品がもらえる
・10年連続会員認定:継続して10年以上の会員には特別ワッペンが贈られる
・ツーリングハンドブック:ハーレー取扱店のある全市町村の地図やツーリング情報などがついたハンドブックがもらえる
・ホッグテイルズ:年6回発行される会員広報誌。イベントニュースや会員からの投稿など、面白い記事が掲載される

ものすごい量の特典ですね。これらの会員特典を実施するには、専任部署が必要でしょう。

その他、ハーレー・オーナーズ・クラブの会員とのミーティングを行って会員同士の交流に力を注いでいます。また、販売店とのミーティングも盛んで、その場にはハーレーの役員も参加し、現場の声を拾っているようです。「試乗会」も行われます。新製品への、顧客の意見を集めて製品に反映させようとするのが目的です。

ハーレー・ダビッドソンは、まだまだ多くの企画を用意して、お客様との関係を深く持とうとしています。これが、マキシマーケティング、つまり顧客満足の最大化を図る方法の一つです。

きっと、あなたにも参考になることがあるでしょう。ネットを使えば、より簡単に出来るかもしれません。ぜひ、お客様と強い友好関係を作り、将来にわたるお店のファンになってもらいましょう。

■今日のツボ■

・マキシマーケティングは、顧客満足の最大化を図る方法である
・「マルチメディア時代のマーケティング革命」には、12社の実例がある
・その分かりやすい事例として、「ハーレー・オーナーズクラブ」がある

image by: Alex Erofeenkov / Shutterstock.com

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ワン・トゥー・ワンコンサルティング代表。スポーツ用品業界での経験と知識を生かし、業界に特化したコンサルティング活動を続ける。
スポーツ用品業界在籍33年の経営コンサルタントが、スポーツショップの業績向上法について熱く語ります。スポーツショップのために書かれた、日本初のメルマガです。ここには、あなたのお店がかかえている問題を解決するヒントがいっぱいです。

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【著者】 梅本泰則 【発行周期】 週刊

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