累計発行部数100万部突破の人気コミック『セクシー田中さん』の原作者・芦原妃名子さんが急死し、各方面に衝撃を与えています。芦原さんは生前、同作品のテレビドラマ脚本の「原作クラッシャー」ぶりに心を痛めていたと報じられており、最悪の結末を迎えてしまいました。これに関して、原作付きドラマや映画の撮影現場をよく知る芸能記者歴30年のベテランジャーナリスト・芋澤貞雄さんは「テレビでは、台詞の改悪や登場人物のキャラクター変更は日常茶飯事」と指摘。同時に、脚本家として過去に同じような「改悪」の被害に遭ったことがあるという宮藤官九郎さんの「悲痛なつぶやき」を紹介しています。
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セクシー田中さんが「原作クラッシャー」で最悪の結末に
『セクシー田中さん』の原作者であり漫画家の芦原妃名子さんに関係者から行方不明者届が出されたのが1月28日、翌29日には栃木県内で発見されたという報道にドラマ出演者や関係者たちからの悲しみの声が止みません。
遺書のようなものも見つかっていたといいますが、御遺族の「今はそっとしておいていただき、静かに見守っていただければ」を尊重すると、その理由は憶測でしか書けません。
マスコミの報道では昨年10月期のドラマ化された同作品の脚本を巡るトラブルに心を痛めていたことがわかります。
芦原さんの作品は2003年に発表された『砂時計』が2007年に“TBS愛の劇場”枠でドラマ化、翌年には映画に。2008年に発表された『Piece~彼女の記憶~』も2012年に“日本テレビ深夜”枠でドラマ化されていますから、テレビ局のドラマ製作の内情も御存知だったと思われますが、今回のようなトラブルは初めて聞かれる話です。
製作サイドは「名前」「タイトル」「看板」が欲しいだけ?
“漫画に忠実に”、“ドラマの終盤も(原作を)原則変更しない”が、第9話と最終回の出来上がってきた脚本を自らが書き直さなければならなかった程、契約当初の約束…“必ず漫画に忠実に”が反故にされていたことに、放送が終了した後も「ドラマ化を今からでもやめたいぐらい」と訴えていたようです。
私の知り合いに漫画なり小説を書いている人物がいて、作品がドラマ化や映画化したいとオファーが来たんだけど…と相談された場合、たぶん私はこう言うと思います。
「製作側の目的はただ貴方の“名前”や“タイトル”、“看板(ストーリー)”を借りたいだけ。作品の中身はよっぽど綿密な打ち合わせや契約を交わさない限り必ずグチャグチャになりますよ。それでもいいのなら…」と。
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思い出さずにいられない、宮藤官九郎の悲痛なつぶやき
脚本のトラブルと聞いて私がすぐ思い出すのは2019年の大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』、大河史上最低視聴率を残してしまったドラマです。
脚本家は『池袋ウエストゲートパーク』『木更津キャッツアイ』『あまちゃん』のクドカンこと宮藤官九郎。
『いだてん~』の視聴率がにわかに怪しくなってきた時、クドカンは関係者にこんな言葉を漏らしていたといいます。
「本(脚本)が面白くないから数字(視聴率)が獲れないっていうけど、本をメチャクチャにしたのは局の方だョ。大河は時代考証とかの検閲を5回位経て台本が完成するんだけど、完成された台本には最初に書いた地の文章なんて跡形も無く消えてしまっている…これで面白くないって言われてもね…」
これを私なりに解釈すれば“脚本家・宮藤官九郎という名前が欲しかっただけで、実際の脚本は大河の優秀な演出家さんたちのもの”となります。
宮藤官九郎『不適切にもほどがある!』に見た希望
長い芸能記者生活の私は、今まで何度も原作があるドラマや映画の現場に立ち合ったことがありますが、特にテレビの場合、台詞の改悪や登場人物のキャラクター変更は日常茶飯事でした。
視聴率を獲るためには原作でさえ“ないがしろにしてしまう”…それで数字が悪ければそれは脚本家と銘打った人物のせい…と。
話が逸れますが、クドカンの『不適切にもほどがある!』が、テレビ離れ・ドラマ離れと言われている昨今に7.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)という好視聴率を残しました。
クドカンと阿部サダヲという“迷コンビ”に待ってました!というファンも多いと思うのですが(私もそのひとりですが)、芸能記者として感じ取れるのは、阿部の娘役を演じている河合優実の“ブレイク前夜”という独特の空気感です。
1986年という時代設定の高校2年生、17歳を演じている河合は日大芸術学部出身の23歳なのですが、彼女が放つ独特の空気感は『あまちゃん』の能年玲奈…のんと同じ匂いがすると感じるのです。
大ブレイクの予感が…。
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今度吉祥寺近辺のファミレスや銭湯でクドカンを見かけたら、「河合優実っていいよね…」と声を掛けようかと悩んでいる私です。
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プロフィール:芋澤貞雄
1956年、北海道生まれ。米国でテレビ・映画のコーディネーター業を経て、女性週刊誌などで30年以上、芸能を中心に取材。代表的スクープは「直撃! 松田聖子、ニューヨークの恋人」「眞子妃、エジンバラで初めてのクリスマス」。現在も幅広く取材を続ける。https://twitter.com/ImozawaSadao
記事提供:芸能ジャーナリスト・芋澤貞雄の「本日モ反省ノ色ナシ」
image by: セクシー田中さん|日本テレビ公式サイト