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今度は「ソフト老害」トレンド入りも「若者に媚びるオッサンのほうがキモイ」反発の声。3、40代は八方塞がり?「世代間対立煽り」に注意を促す声も

これまで主に50代以上に対して向けられていた「老害」という言葉。しかしここに来てにわかに「ソフト老害」なる新語が登場し、巷で大きな話題となっている。そのターゲットとなっているのは30代~40代であるという。

この「ソフト老害」の名付けの親は売れっ子放送作家の鈴木おさむ氏(51)。鈴木氏は昨年10月、自身のX(旧Twitter)にこのように綴った。

40代になり、職場で上と下の間に入りバランスを取るポジションで、自分は、上のプライドを傷つけず、下の意見をうまいことまとめたつもりでも、下の世代から見たら、その行動が老害2見えてたりするということに気づき、それをソフト老害と名付けました。
自分含めて。
皆さんのまわりに40代のソフト老害の人いますか?もしくは自分で俺、ソフト老害かもと思う方いますか?
本では、ソフト老害についても詳しく書いてます。

 

仕事の辞め方 仕事の辞め方

投稿のラストに繰り返されている「仕事の辞め方」が鈴木氏が「ソフト老害についても詳しく書いてます」とする書籍のタイトルで、その中に32年間続けてきた放送作家を辞めるきっかけとなった、自身が若い世代に対して仕事上のソフト老害」になっていると気付かされたエピソードが記されている。

鈴木氏は「ソフト老害」をどう定義しているのか

著作の中で鈴木氏は、「大切なのは40代でも行動次第では老害なんだという考えを世の中に広めることなのではないか」としているが、「行動次第」では30代でも「ソフト老害」になりうるということで間違いないだろう。

そんな内容が今月、テレビ番組で取り上げられにわかに注目を集めYahoo!の記事となってネット上で拡散、かくしてトレンド入りになったという流れだ。

これに対して20代以下の世代からは、以下のような声が上がっている。

《兄貴っぽい立場になりたいのかなんだかわからないけど、小言には変わりないしソフト老害って自覚してほしい》

《うちらから見れば30代以上はみんなおじさんだしおばさん。むしろ30代とか40代の人のほうが同世代ヅラして近づいてきて肩組むくらいの勢いで役に立たないアドバイスとか言ってくるのが鬱陶しいからほんとソフト老害って感じ》

《むしろ30代とか40代の上司の「こうした方がいい」っていう意見はスルーしちゃうほうが多いですね。無理矢理っぽい笑顔で言われてもねーなんても思う》

概ね鈴木氏の「ソフト老害」については賛同的な意見が目に付く。しかし当然ながら疑問視する30代以上のこんな投稿も。

《ミスしそうだから先手打ってアドバイスしてるんだけどそれも老害になるの》

《若い人って基本的に年上の言うことには「うるせーな」って思ってるってことか》

《じゃあなにか、20代以下だけで世の中全部回して行けるってことなんか?》

ちなみに9.2万人のフォロワーを持つ、現在40代の「自己防衛おじさん」こと橋本鉄平氏は、Xにこんなポストをしている。

さもありなん、である。

なぜ若者はかくも年長者を嫌うのか

古より、若者と年長者とは相容れないもの。ではなぜ若者はかくも年長者を嫌うのだろうか。それは年長者が年上だからである。小泉進次郎氏(42)が口にしそうな言葉ではあるが、厳然たる事実だ。そしてそこには理由がないため、解決方法も一切ないと言える。SNSの書き込みもそれを証明していると言えよう。

《年上ってだけで偉そうな物言いしてくるっていうのがもうダメ》

《なんで年上のひとって「物を教えてやる」みたいな態度で接してくるんだろう》

《先に生まれてきたことがそんなに偉いのかって言う人が多すぎて嫌になる》

これらが20代以下世代の偽らざる心情のようだ。しかし年長者世代には、自分自身が若者だった頃の記憶を思い起こしてほしい。事あるごとに「近頃の若い者は」と批判的に口にする年上の人間は常に嫌悪の対象ではなかったか。

そんなことを踏まえつつ、民間のカウンセラー資格を持つ50代の男性に聞いた。

「ちょっとくくりが大きくなってしまいますが、『坊主憎けりゃ袈裟まで憎い』みたいなもので、人間というものは嫌いな対象のすべてが嫌悪の対象になる傾向が強いですよね。嫌いな人間の言動はパワハラやセクハラに感じますし、大好きなおじいちゃんやおばあちゃんだったら気にならないのに、嫌いな年長者の体臭は加齢臭になってしまいますよね。そしてそれは現在の年長者もかつては年上の人たちに抱いていた感情のはずで、こういったサイクルが繰り返されているだけという考え方も成り立ちます」

ファッションにも「深くて暗い河」が

ファッションについても年長者と若者との間には深くて暗い河がある。これについてはかつて若年男性向けファッション雑誌でコラムを掲載していた50代のライター氏がこう語る。

「若者は年長者のファッションというのを常にダサいものと認識しているのは間違いありません。私が雑誌に関わっていたのは20年以上前ですが、その感覚は変わっていないでしょうね。例えば年長者が若者に流行中のアイテムをファッションに取り入れたりしたら、彼らは別のトレンドに逃避します」

例えばどのようなファッションがそれに当たるのか。

「これはもう数年前になるんですが、若者間で流行っていた細身の綺麗系ファッションを年長者世代が身につけ始めたら、その途端に若者はダボダボ系に逃げましたからね。トレンドには20年周期のサイクルはあるんですが、若者は“ちょっと上”の世代のファッションは半永久的にダサいとみなしてるようです」(同前)

2人の識者のコメントの中にはからずも「サイクル」というワードが登場したが、若者が年長者を嫌うのは「権力闘争の歴史」というサイクルも大いに関係しているだろう。富や女性、権力を我が物にすべく、若者は常に年長者に牙を向く存在であることは数多の事例が証明している。

若者に媚びることが「不必要」な理由

ここで一つの疑問が首をもたげてくる。はたして筆者(やはり50代)を含む年長者サイドが、若者世代の反応を気にするあまり、キョロ充、すなわちリア充と思われたいがために、職場や自身が所属するコミュニティでキョロキョロと周りばかりを気にする必要はあるのだろうか。

あえて言おう、不必要であると。

前出のカウンセラー資格を持つ男性もこのように話す。

「そもそも若者の目が気になる年長者というのは、自分自身がまだ若者のつもりというタイプが多いように感じられます。『30代に突入すればもはや若者ではない』と、それ以下の人間との間に埋められない溝があると認めたときに、その人の人生は先に向かって開けると言ってもいいんだと思うんですよね」

さらに言えば、戦いとは数である。それは日本の民主主義の根幹をなす選挙はもちろん、商品やカルチャーの多くが数的に優位な世代にターゲットを設定していることからも明らかだろう。つまり社会のほうが数的優位を誇る年長者に「ついて」くるのだ。

悩める30~40代の諸兄には、エコノミストの小池理人氏のポストを御覧いただきたい。

資料として総務省の人口ピラミッドが貼られている。第1次ベビーブーム、いわゆる団塊世代と第2次ベビーブーム(こちらは団塊jr.)、さらに氷河期世代の巨大な山が若干気にはなるものの、あえて下の世代と比べてみれば、30代であっても「数の勝負」であるならば若者世代に負ける要素が何一つとしてないことがお分かりになろう。

【関連】人口推計(2022年(令和4年)10月1日現在)‐全国:年齢(各歳)、男女別人口 ・ 都道府県:年齢(5歳階級)、男女別人口‐

数字を取りやすい「世代間対決」を煽るコンテンツ

「そもそも“世代間対決”を煽るようなコンテンツは、数字を取りやすいコンテンツなんです」

そう語るのは、ニュースバラエティやワイドショー番組の制作経験のある50代のテレビ関係者だ。

「嫌煙派vs喫煙派やら男性vs女性といった対立構図はいろんな層が乗っかってくるんで企画として通りやすいっていう側面があります。今回の『ソフト老害』はもはや一般的になった『老害』っていうおなじみのワードに、『それって高齢者だけの問題じゃないんですよ』という“意外な切り口”をかけ合わせたものにすぎません。コピーライティングの『常識を否定してみる』という手法も入れ込んだ、うまいやり方ですよね(笑)」

とまれ、何をやっても若い世代に嫌われるのであれば、のびのびと生きるのが一番。若者に媚びる年長者は、あまり格好の良いものでもない。

X(旧Twitter)の反応

※本記事内のツイートにつきましては、Twitterのツイート埋め込み機能を利用して掲載させていただいております。

image by : Shutterstock.com

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