弊サイトでも既報の通り、もはや教育行政が崩壊していると言っても過言ではない東京都小平市。特に「いじめ問題」への対応は想像を絶するレベルにあるようです。今回のメルマガ『伝説の探偵』では、現役探偵で「いじめSOS 特定非営利活動法人ユース・ガーディアン」の代表も務める阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんが、そんな小平の市長や市教委の呆れた姿勢を、同市のHPに掲載されている「公式のやり取り」で明らかにするとともに、心ある若手市議と教育長らとの市議会での質疑応答の様子を紹介。そのあまりの酷さから小平市を「独裁市国」とし、弱者を泣かせ続けてきた役人に責任を取らせるべきと強く批判しています。
【関連】教師が生徒に「殺してやろうか」いじめと体罰の街・東京都小平市が調査を拒んだ“脅迫と体罰地獄”
やる気がない上に市民の権利を侵害。小平市いじめ体罰隠蔽事件の悪質
前回、小平市の問題を取り上げ、まだ続きがあるとした。
【関連】教師が生徒に「殺してやろうか」いじめと体罰の街・東京都小平市が調査を拒んだ“脅迫と体罰地獄”(2月9日発行記事・2月14日まぐまぐNEWS掲載)
特に反響が大きかったところは、調査対象となっている小平市教育委員会が、いじめ第三者委員会の調査報告書の案を作るとしているところであった。
まあ、これでは泥棒が警察の捜査に口を出してその報告まで作るようなものだから、だれが読んでも二度読みしてもスッキリしないであろう。
しかし、市長はタウンミーティングで実際の被害保護者に対し公衆の面前で、こう答えているのだ。
【市民】
私の娘が2年前の小学校6年生でいじめられて、学校に行かなかった。半年後にいじめ重大事態となり法律に則った調査は始まったが、まだ終わっていない。そろそろ調査報告書が出る。でもその調査報告書は、第三者委員会が作るのではなく、教育委員会が原案を作ると言われた。それは私たちから見たら、第三者ではないという印象なのでそれを指摘したが受け入れていただけていない。教育と行政は分離なので、市長は関与しないと思うが、市長として第三者性を担保されていると思うかどうか伺う。
【市長】
第三者委員会が調査をしていると捉えている。まとめ役を事務局である教育委員会が担っても、問題はないと考えている。
【市民】
その事務局が調査対象となっている。透明性が担保できていない。納得できない。おかしいと思う。
これは、小平市のホームページも記載されている公式のやり取りである。
下記はその記録である。
令和5年度第2回市民と市長のタウンミーティング
更新日:2024年(令和6年)1月16日 作成部署:市民部 市民課
場所
喜平地域センター
日時
令和5年12月9日(土曜)午前10時30分から12時
参加者数
25人
● リンク:令和5年度第2回市民と市長のタウンミーティング
何度も書くが、市教育委員会の対応も調査対象となっているのである。つまり調査対象者が調査報告書を作るということなのだ。
この記事の著者・阿部泰尚さんのメルマガ
問題意識が全くないと断じてもよい小平市教育委員会
この問題は市議会でも質問が出ている。
本件問題の相談を受けている小平市議会議員の安竹議員によると、下記のようなやり取りが教育長とあったという。
[安竹議員質問]
第三者性を客観的に担保するよう、第三者委員会の会議録やいじめ重大事態の調査報告書の原案については、教育委員会事務局ではなく第三者委員会の弁護士など第三者が担うべきと考えるが見解は。
[小平市教育長答弁(青木由美子)]
会議録につきましては、小平市教育委員会いじめ問題対策委員会の円滑な進行を図るため、教育委員会事務局において作成しております。
調査報告書原案の作成につきましては、第1点目及び第2点目で答弁申し上げたとおり、小平市教育委員会いじめ問題対策委員会がいじめ重大事態の調査報告書を協議・決定しており、教育委員会事務局は、その作成を補佐する立場でございます。
[安竹]
事務局でつくると第三者性はかなり低下している。事務局ではなく第三者委員会が最初からつくってと被害者家族から声が上がっていることについては。
[教育指導担当部長(岡崎奈緒子)]
公平性や中立性に疑義を持たれている状況にあるということは、認識してございます。
[安竹]
問題はないような認識のようだが、要は、被害者や被害者家族の声は無視するということか。特に対応しない、それでも大丈夫、という認識か。
[岡崎]
無視をするとか、そういうつもりは全くございません。
議員が御披瀝いただいたとおり、他地区では一切事務局が関わらない、何も担わないという自治体があるということも承知はしております。しかし、その自治体によって対策委員会の組織、構成、また業務量も異なりますので、一概に比較はできないものと捉えております。
被害に遭われている保護者の方からも、こういうようなお話をいただいた折には、丁寧に御説明もさせていただいております。
[安竹]
組織、構成、業務量のうち、具体的に何が問題で小平市ではできないのか。
[岡崎]
今申し上げたものの何がということではなく、総合的にということでございます。ただ、他市のそのような事例、組織の例については、研究をしてまいりたいというふうには考えております。よろしくお願いいたします。
[安竹]
被害者や御家族から指摘があり内部で検討しているはずだが、検討していないということか。個別具体にこういう課題があるからできないといったものが出てきていると思うが、今の段階では、そういった課題抽出が終わっていないのか、ある程度こういった課題はあると認識しているのか。
[岡崎]
様々な御懸念を持たれているということは、十分に認識をしております。ただ、委員会を一から全てを担っていただくというわけには今の状況ではいきませんので、そこは指示を受けながら、事務局も事務的なところは、事務回りのことは私どもで担わせていただいているという状況です。
[安竹]
今の状態だと担えないという一番大きな理由は何か。予算か。人員か。
[岡崎]
様々な面から研究を進めておりまして、今ここでこれがということは申し上げられません。
実際におよそ数百の重大事態いじめの現場に関わってきた私から見ても、原案を第三者委員会以外が作るというのは聞いたことがない。
それこそ、自治体とべったりの委員長や超高額のお車代を領収書なしでもらっていたどこかの議員のような私学の第三者委員会の委員長ですら、自ら報告書は書いていた。
「おい、俺より酷いな」と耳打ちしてきたのはそのときの委員長だ。
小平市教育委員会は問題意識が全くないと断じてもよいだろう。そして、いじめ防止対策推進法を真っ向から冒涜し、第三者性が歪み、中立公平とは真逆の方を向いているとも言える。
すでに出来上がっていた国民・市民の権利すら冒涜する仕組み
しかし、さらに問題は深い。
もはや国民の権利、市民の権利すら冒涜する仕組みがすでに出来上がっていたのだ。
国民には知る権利がある。これは憲法上認められた権利であり、国家が暴走することを止める要素があったり、民主主義の根幹とか血液ともいえるものだ。
独裁国家や国民の権利が蹂躙される国や歴史上でも人を人と見ないような差別や身分制があるような時は、こうした権利は認められていないのだ。
だからこそ、民主主義である日本には知る権利があり、情報公開制度がある。
そして、情報公開などに不服があるときは、行政不服審査会などがあり、その行政の機能を監視するわけだ。
あまりに多い「不開示」「不存在」と「のり弁状態の黒塗り」
さて、情報開示請求について被害保護者が共通して言っていたことは、「不開示」「不存在」があまりに多いということだ。さらに、開示されたとしてもほぼのり弁状態の黒塗りばかりであるという。
また、前回の記事でも触れたが、文書自体を作成していないものもあり、その理由を問われると「適時口頭で報告」と回答したというのだ。
これについて地方公務員法に詳しい人物に聞いたところ、口頭報告自体も原則としては文書として報告すべきであり、こうした適時口頭報告が常態化していたのであれば、全体的に地方公務員としての職務が出来ていなかったということにもなり得る認められない事態だという。
取材の間、こんなことがありましたと保護者から送られてきたメッセージにはこうあった。
「小平市は2023年9月頃から開示資料の窓口受け渡しを拒否しています。開示決定には請求から2週間の決まりがあるが、開示決定通知書を渡すのには期限がないことを悪用し、郵送渡しのみとしてなかなか送らず、わざと開示を遅らせています。挙句の果てに、郵送は市税を使うことになるから、決定通知書を受け取りに行くと話しても、拒否され、市税の無駄遣いになってもいいと回答されました。職員は税金に対して適正に使うという感覚がないのだと思います」
「開示請求していないのに勝手に不開示決定書を送ってきて、辻褄合わせのため日付を遡って開示請求書を書かせた件については、自分たち行政は必要なら日付を遡って書かせてもいいという認識のようです」
なぜ被害保護者がこの遡った日付の開示請求を書いたのかと言えば、小平市は「早く開示してあげたい親切心なのです」と騙して書類を書かせたという。その上で、不開示として、遡った日付とした開示請求書の書き直しすら認めないのだというのだ。
もはや、詐欺師の手口ではないかと思えてしまう。油断も隙も無いのである。
ちょっとでも文句を言えば市民であろうが容赦なく敵視し、ねつ造でも騙しでもなんでも利用して貶める、これは現在進行形で町田市のいじめ遺族が一方的にやられていることでもあるが、お隣ともいえる小平市でも同じようなことが起きているのだ。
しかし、法律はよくできているもので、こうした不正を許さない仕組みがある。それが、審査会制度だ。
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事情通が見れば固まるに違いない小平市行政不服審査会の名簿
自治体の中で似たような不作為や不正が起きることはある。黒塗り過ぎるのり弁報告というのはよく起きるとも言えるが、審査会(行政不服審査会)に申し立てをすると、いくらかは開示が進んだりするのだ。
が、ここにはその救いは期待できない。
すでに市議会では問題となっているようだが、小平市行政不服審査会の名簿を事情通が見れば固まるに違いない。
なぜなら、小平市の顧問弁護士の大先生方と元教育委員会委員長、元職員というど真ん中、利害関係者で委員会が形成されているからだ。
以下は総務省発行の情報公開制度のパンフレットだ
行政不服審査会については当然に、こう書かれている
「第三者的立場で公正・中立的に調査審議を行っています」と。
こうした場合の第三者、中立、公正というのは、その委員となる人物がいかに優れているかとか経験が有るかということではなく、立場上の担保が重要なのだ。
つまり、利害があると思われる立場で、場合によっては本来保護すべき側が不利になる裁定をしなければならない役割は人格など関係なく不適切だといえるのだ。
きっと素晴らしい実績をお持ちの方々なのだろうが、一方でその担保と言えば真逆とも言える立場であるわけだ。
これ以上は小平市が市行政のあり方を責任ある立場として今後改めていくであろうが、すでにあった事実は否定しようもないのだ。
なぜこんなことが起きてしまったのか、本当の意味での第三者にしっかりとした権限を与え、調査をしてその原因を追求すべきであろうと思う。
現状は独裁市国小平市。弱きを泣かし続けてきた役人には責任を取らせるべきだろう。
今回の取材を通じて感じた「一縷の望み」
見ての通り、小平市はやる気がないどころか、問題が起きた場合に市民の権利を侵害しても不利な証拠類を出さないと言われても反論しようがない体制ができてしまっているように思います。
市長も自らの権能をわかっていないのではないかという発言もあり、トップが指導力を発揮して問題を是正していくということは期待できないだろうというのが正直な感想です。
ただし、私は今回取材を通じて、一縷の望みがあると思いました。市議の安竹議員の存在です。
私は若手市議会議員の会の全国総会で講演するなどしたことがあり、それなりに地方議員の方との人脈があります。そうした中でよく言われていたことは、市議や県議が教育委員会と対決すると、文教などの仕事の際、サポートを受けられなくなり仕事にならないということもあって、なかなか対決まではできないと意見です。
だから、真っ向から違うことは違う、直すべきは直そうよと言える議員さんは、その世界の中では貴重な存在であるのです。
今後も状況を聞いたり情報共有をしていき、報告できることがあれば、伝説の探偵の中で紹介したいと思います。
この記事の著者・阿部泰尚さんのメルマガ
image by: 小平市公式HP