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加害児童の「殺し方ノート」さえ“いじめ”と認めず。東京・町田市タブレットいじめ自死事件の“再”調査委員会が闇に葬りたかったもの

重大ないじめ事案の調査を行うため設置されるいじめ第三者委員会。本来なら何より公平性が求められる第三者委ですが、地域によって実態はその対極にあると言っても過言ではないようです。今回のメルマガ『伝説の探偵』では、現役探偵で「いじめSOS 特定非営利活動法人ユース・ガーディアン」の代表も務める阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんが、「全国の第三者委の真の姿」を誌面で紹介。その上で、いじめ問題に関して他の先進国並みの対応を取らない日本に対する偽らざる思いを記しています。

※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:いじめ問題、希望を持てない自治体の差

「町田市タブレットいじめ自死事件」の再調査委員会のスッキリとしない報告

いじめ問題では、問題がある第三者委員会はかなりの割合で多い。いじめ防止対策推進法では、第三者委員会の設置者が、学校の設置者となっており、公立校であれば教育委員会、私学であればその学校法人というように、多く対応の問題が調査対象となる学校組織自体とほぼ同一と言える組織がその依頼主になるためだ。

また、教育委員会などの対応が問題となることもよくあるところであり、結果として依頼主が調査対象となることもあるわけだ。

一方で第三者委員会の独立性を確保した上で調査対象に忖度せずに公平中立な判断をするために設置要綱を取り決め、しっかりとした調査と判断を下すこともできる。

そういう意味でも第三者委員会の設置においては人選は極めて重要な課題と言えるのだ。

そもそもと、正そうとすれば、いじめ防止対策推進法における第三者委員会のあり方や設置についての条文は見直す必要もあるが、立法が国民の意見やこの10余年で起きた様々な問題に目も耳も貸そうとしなければ法律は変わることはない。

変わらぬ中であれば、その範囲の中で最大限のことをするしかなかろう。

さて、2024年3月、様々な第三者委員会が活動を終え答申を出している。

期としては区切りが良い時期でもあり、報告となる時期が重なることは、特に公の事業では多いのだろう。

例えば、「町田市タブレットいじめ自死事件」では再調査委員会が答申を出した。一応のいじめは認めたものの、なんともスッキリとしない報告であった。

この町田市での問題で、まず注目しておきたいのは「再」調査委員会であるということだ。

その前に設置されていた第三者委員会は、ほぼ調査をせず、ご遺族からの聞き取りもせず、さらには加害者の関係者が委員となっていたなどの問題以前に、設置をしたこと自体、当初はご遺族も知らない状態で勝手に進んでいたのだ。

であるのにも関わらず、この調査委員会は報告書を作って提出しているという。

私自身、本業が探偵ということもあり調査を生業としているから、調査報告書というものは良く作成するが、調査をほとんどせずに報告書を書くとすれば、それは想像の産物となる。それなりに経験はあるから、なんとなく書けそうな気もするが、誤った内容を書くくらいなら辞任するだろう。

つまり、報告の柱となる基本的な調査を欠いた時点で、その先は妄想になり、報告書ではなくダメな作文となり得るのだ。

まあ、町田市についてはバイアスがそもそもあって、いじめを認めたがらない方向であったように思える情報ばかりが私の手元にはあるから、公という立場を最大限利用したに過ぎないかもしれないが、それでは何の改善もないと思うのだ。

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そして、このような問題は町田市のみならず、小平市でも起きていることは以前に紙面でお伝えした通りであるし、遡れば名古屋市でもそうであった。

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高知県南国市では、岡林優空くんの件が有名であるが、それ以前のいじめ自死事件では、議事録を作らず、あやふやな調査結果を出すなど、文科省から再調査が当然の対応と指導されてもこれを無視して再調査を実施しないという問題も起きている。

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教育長を謝罪に追い込んだ門真中3いじめ自死事件の第三者委

一方、大阪門真市では、2024年3月、令和4年に起きたいじめ事件についての第三者委員会が報告書を出したが、実に62件ものいじめを認定し、いじめと生徒の自殺に密接な関連があるとした。

そもそも、大阪府門真市の久木元教育長は、その議会で「当時の対応に問題はなかった」と発言している。これは、YouTubeやニュース記録でも確認ができる。

しかし、第三者委員会の答申を受けて、3月19日の記者会見では謝罪をしている。

いじめ防止対策推進法の建付けで考えれば、第三者委員会としての依頼方法などの手続きは同一であろう。一方で、調査自体の精度やそれに伴う結果の在り方は全く異なる。

門真市の第三者委員会の報告書は公開版が市のHPで確認ができるので、ご興味のある方は読んでみるとよいが、いじめ防止対策推進法のいじめの定義で当然に判断し、SNS上での中傷などを含め「いじめである」と断じ、さらに学校がいじめとせず、組織的な対応をしなかったと対応の問題にも言及している。

一方、町田市においては再調査委員会ですらいじめの過程において加害者らによって作られていた「(被害児童へ向けての)殺し方ノート」をいじめ行為として認めていない。その理由は不明だ。ただ、思うに、学校は後生大事に金庫で保管していたということから、これ自体を闇に葬りたかったのかと勘繰りたくもある。

こうした自治体ごとの差から見えてくるのは、第三者委員会の設置権がある教育委員会や学校法人自体の問題であろう。

最後の砦となり得る「第三者委員会」はより厳密に行わなければならない。

また、いじめ防止対策推進法ができるまでの国会でのやり取りから考察すると、「第三者委員の中立公平性は誰からみてか?」については「被害者側」となっており、設置者だと言う文言はないから、こうした国会の立法段階のやり取りを重視するのであれば、被害側の意見は最重要であり、委員人選のみならず、委員会の独立性を担保する「設置要綱」にも意見を求めるべきということになる。

問題だらけで、有効な再発防止策を提言してもらっても、それが活かされず、なんとなく研修が増えるだけと思っている現場教員もいることだろう。

まあ、隠ぺいした人が出世するのを垣間見た職員がどこまで真剣にいじめ予防研修などを受ける姿勢が作れるかは疑問であるが。

高校に進学してしまえば「逃げ切り」完了

門真市のいじめ問題では、当時の加害者はすでに高校に上がり門真市の管轄にない。公立校は、大まかに小中学校は市区町村の管轄、高校は都道府県管轄だ。

教育委員会は独立した行政機関とされ、本来はその上下関係はないとされる。

一方、私学は学校法人などがその設置者となってだいたいは都道府県の許可を得ている。

つまり、門真市の場合は、加害者が公立校に進学したとすると、大阪府なりに事態の報告をして、いじめの指導をお願いするというのがその権能のギリギリ範囲であり、あとは大阪府がどう考えるか次第といったところだろう。

私立高校の場合もその高校の考え次第といったところか。

ニュースを見る限り、加害者の中には全く反省していない者もいると報じられている。そもそも第三者委員会の調査は、設置から結果が出るまでにだいたい2年程度、早くて1年前後だから、当然に管轄跨ぎが生じることがある。

この場合にどうするか?と言えば、何もないというのが多くの結果から見える実態だ。

システム上の問題や関連法の問題を問う意見が多いようだが、それはあると思いつつも、要は、次の管轄となる側の「いじめ加害」についての考え方、姿勢の問題も大きいだろうと思うのだ。

いじめ加害について例えば都道府県側が大問題であると捉えていれば、第三者委員会の答申を受けた段階で、アクションを始めるであろう。

いまのところ、そういう対応は見たことがないので、結果的に被害側には民事訴訟をしたらどうかとアドバイスすることになる。

最終的に司法が受け皿とする以外に今のところその環境は整備されていないのである。

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いじめ被害者の自死を武勇伝のように語る加害者

いじめの現場やその先の対応の現場にいる私は、加害者の人物特定などでその生活環境や行動を見ることがある。

そこで思うのは、学校の先生の前では鼻水を垂らして涙を流して反省している様子を見せていた子が、被害者の自死を武勇伝のように話して自慢する様子や保護者の記者会見の様子をスマホの動画で見て加害者同士で「どうせ何もできないでしょ!」と見下したように言う様子をみたりするから、反省はフリだけなんだろうなということだ。

もちろん、しっかり反省している様子の子もいる。私に連絡をしてきて、謝りたいのだけどどうしたらよいかと申し出てくる子もいる。

ただ、そんなケースは片手で数えれるほどしかない。その他多くは、のうのうと学校生活を謳歌し、次のターゲットを選んで、今度はより高度にバレないようにいじめをするわけだ。

もしも、学校社会全体がいじめ問題を問題視し先進国並みの対応をするとすれば、最低限でも加害者は更生教育を受ける程度はするであろう。しかし、こうした更生教育は今のところ皆無と言える。

つまり、私から見ると、学校社会自体が問題視すらしていないのではないかということだ。

いじめ防止対策推進法施行からそろそろ11年になろうとしているが、これだけの期間があって、何も改善できないのだから期待すらしないが、ちょっとでも希望の光がみたいものである。

「阿部くんはこっち側に来ないの?」ある文教関係者の問いかけ

ちょっと名前は言えないのですが、ここのところ偉い人に会う機会が続いています。

皆さん話すといい人で、話しの理解が早いので、驚いているのですが、ある学者の方から、こう言われました。

「いじめの認知数はそろそろ減るんじゃない?だって、人口減るでしょ、当然こどもの数も減るから起きる件数自体が万単位で減るじゃん

まあ当然の話です。例えば、ほとんど車が通らないほど交通量が減れば、事故は滅多に起きない、極論、車がゼロ台の地域で、車同士の事故は起きないわけです。

しかし、これまで増えていたりします。過去の統計数比較だといじめの認知数は統計調査上の問題や報告形式の問題(ほぼ不正ですが)などであまり参考になりませんが、増加傾向であったりします。

なので、「まあ、普通はそうなんでしょうけど、増えたりしそうですよ」と私が答えると、「それは政治、自治体、学校業界の犠牲者と言えるね」と話していました。

ある文教関係者からは、こう言われました。

「阿部君はこっち側に来たら、出版も思うままだよね。なんで、こっち側に来ないの?」と。彼が言うには、学校だけでも数万校日本にはあり、私が文教族の手の者になれば、出版すればその数は確定数として売れるから、ベストセラー作家も夢じゃないと。

まあ、言い返したら面倒だったので、「苦笑」で返事しておきましたが、こっち側、あっち側という区切りで物事を考えているのだなと勉強になりました。

まあ当分忙しいだろうなと思ったというのが本音です。

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image by: Shutterstock.com

阿部泰尚この著者の記事一覧

社会問題を探偵調査を活用して実態解明し、解決する活動を毎月報告。社会問題についての基本的知識やあまり公開されていないデータも公開する。2015まぐまぐ大賞受賞「ギリギリ探偵白書」を発行するT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚が、いじめ、虐待、非行、違法ビジネス、詐欺、パワハラなどの隠蔽を暴き、実態をレポートする。また、実際に行った解決法やここだけの話をコッソリ公開。
まぐまぐよりメルマガ(有料)を発行するにあたり、その1部を本誌でレポートする社会貢献活動に利用する社会貢献型メルマガ。

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