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中国は大崩壊へ。世界から孤立し輸出産業が打撃を受けた世界第2位の経済大国はどこで道を誤ったのか?

不動産市場の低迷などもあり、回復の兆しが見られないとされる中国経済。一時は「アメリカを抜く」とも言われ指導部もその気になっていた中国は、どこで道を踏み外したのでしょうか。今回のメルマガ『j-fashion journal』ではファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんが、中国経済が成長するために必要でだった施策を考察。さらに世界情勢や日本の今後の予測を試みています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:2024年、世界と日本の展望

1.中国とアメリカが揃って迎える経済危機

中国経済が崩壊しようとしている。この流れは2024年も変わらないだろう。2024年は、世界第2位の経済大国がどのように崩壊していくかを観察する年になる。最悪の場合、再び文化大革命が実行されるかもしれない。

中国経済の悪化は、コロナ禍だけが原因ではない。それ以前から、不動産バブルは進行していたし、供給過剰も起きていた。コロナ禍が過ぎれば、経済が回復するという説には根拠がなかったのだ。

中国経済が成長するには、人民の所得をあげ、国内市場を育成することが必要だった。企業には内部留保を義務づけ、累進課税を導入し、所得格差を是正する。持続可能な経済のためには必要な施策だ。

中国政府が世界に覇権を唱えるのではなく、平和を維持し、国内経済を成長させていれば、現在のような状況には陥らなかった。中国が孤立することもなかったし、輸出産業が壊滅的な打撃を受けることもなかった。

不動産バブルについても、人口に見合う不動産の供給量を計画するべきだった。それでこそ、計画経済である。しかし、自分で価格を決定した物件を売れば売るだけ地方政府の収入になったのだから、供給過剰に陥るのも当然だ。不動産価格を市場原理でコントロールすれば、これほどの供給過剰になる前に不動産価格が暴落していただろう。

習近平が言う「マンションは住むためのものであり、投資するものではない」という主張は正しい。しかし、その前に行うべき政策を何も行わなかったのだ。

中国が供給過剰に到るまで設備投資できたのはなぜか。不動産バブルに到るまで不動産を買い続ける購入資金があったのはなぜか。これは、海外から潤沢な資金供給があったからだ。米国の国際金融資本は、発展途上の中国に巨額融資を行い、経済成長を促した。米国は中国製品を積極的に輸入し、中国企業の米国市場上場に対しても優遇した。

その結果、中国企業は西側先進国の企業に勝利し、中国政府は米国にも勝利できると確信した。

米国の国際金融資本の資金は中国不動産市場にも流れており、それが地方政府の財政を支えていた。不動産バブル崩壊は、中国の産業と地方政府を支えていた資金の流れを止めてしまった。

中国経済は崩壊し、米国の国際金融資本は莫大な不良債権を抱えている。世界第1位、第2位の経済大国が揃って経済危機を迎えるのだから、世界経済もその影響を免れることはできないだろう。

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2.崩壊する太陽光発電とEVという「SDGsビジネス」

国連が定めたSDGsは、持続可能な社会をつくるための具体的な目標である。その中でも、温室効果ガスであるCO2の削減が重視されている。

具体的には、石炭火力発電から再生可能エネルギーへの転換、ガソリン車からEVへの転換が目標となっている。

SDGsの周辺には、様々なビシネスが存在している。その中でも、日本で注目されているのは、太陽光発電とEVだ。

太陽光発電は既にピークを越している。中国では、補助金目当ての数多くの業者が参入し、大量の太陽光パネルを販売したが、補助金を受けとると会社を畳んで逃げ出した。その結果、中国では太陽光パネル発電は下火になった。太陽光パネルは大量在庫となり、それが日本に輸出された。

日本でもメガソーラー発電は供給過剰となった。既に電力会社が買い取れる発電量を越え、電力の買い取り料金が下落している。更に、杜撰な造成や設置工事が原因で、土砂崩れが発生している。太陽光パネルには毒性の強い物質が含まれており、耐用年数を過ぎたパネルの廃棄処理も課題となっている。中国の事例を見る限り、適切な廃棄処理が行われるかは怪しいだろう。

また、太陽光パネルの原料となる多結晶シリコンは中国の新疆ウイグル地域が最大の生産地である。ウイグル人の人権侵害問題で米国は中国製太陽光パネルを輸入禁止にしている。日本政府はどのように判断するのだろうか。

以上のように、現状では太陽光発電事業に持続可能性は見いだせない。

EV(電気自動車)は走行中にCO2を排出しない環境に優しい車として欧米各国で積極的に導入された。また、中国はEV生産を国家プロジェクトと位置づけ、テスラの工場を特別待遇で誘致した。そして、多くの中国企業がEV製造に参入した。中国製の安価なEVは、国内外で販売を伸ばした。

欧米市場へのEV輸出が激増し、中国政府は「自動車輸出で日本を抜いた」と喜んでいる。

しかし、問題も山積している。エネルギー危機により電気代が高騰し、ガソリン車よりもコストが高くなってしまった。また、気温が低いとバッテリー性能が低下するため、冬場には立ち往生するEVも増えている。購入して3年を過ぎるとバッテリー性能が著しく落ちるため、保険に入れないという問題も発生している。バッテリー交換の費用は非常に高額であり、バッテリーのリサイクルへの見通しも立っていない。

環境に良いはずのEVも、製造工程まで含めるとガソリン車以上にCO2を排出していることも分かってきた。また、バッテリー廃棄により環境汚染を招く危険性も指摘されている。

2023年末になると、EV人気は下がり、プラグインハイブリッド車の人気が高くなっている。

こうした現実を見る限り、EVはまだ発展途上の技術であり、実用段階には達していなかったことがわかる。ユーザーに多くの選択肢を与えるというトヨタの全方位戦略は正しかったと言えそうだ。

SDGsそのものには価値があるが、周辺ビジネスについては、再構築が必要になるだろう。

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3.数百万のドローンによる防衛戦略を構築すべき日本

2022年2月24日に開始したロシアによるウクライナ侵攻は未だ継続している。戦争の状況は刻々と変化し、次第に新しい戦争の形態が見えてきた。

当初、ロシア軍はミサイル攻撃の後、戦車で地上戦に向かった。しかし、何台もの戦車がロケットランチャー、ドローンによる攻撃で破壊された。

また、ロシアの黒海艦隊の旗艦「モスクワ」は、ミサイル攻撃で沈没したという情報もある。

第二次世界大戦で主力として活躍した戦車、軍艦は、その座標がわかれば簡単にミサイル攻撃を受けてしまう。そして、座標は軍事衛星やドローン、地上のセンサー等により計測が可能である。

ロシア・ウクライナ戦争が長期化する中で、兵器のコストも重要な要素となっている。冷戦時代の武器は高額で高性能なものが多く、実戦というより牽制が目的だった。NATOからウクライナに供与された高額で高性能な武器はたちまち弾薬不足に陥っている。

23年2月4日、中国は米国に対し偵察用気球を飛ばし、米軍はF-22戦闘機によるミサイル攻撃で中国から飛来した偵察用気球を撃墜した。

軍事衛星全盛の時代に、中国は旧時代の気球で対抗している。しかし、気球の飛行高度は高く、通常の戦闘機では届かない。最新鋭の戦闘機によるミサイル攻撃は非常にコストが高い。しかし、気球の製造コストは安価である。もしも、数百、数千の気球が飛来した場合、米軍は対抗できるのだろうか。しかも気球は無人で、戦闘機は有人なのだ。

低コストで無人の兵器が主流になれば、戦争の作戦も軍備のあり方も大きく変化するだろう。

22年10月17日、ロシアはイラン製の自爆ドローンで地上の住宅を攻撃している。

一方のウクライナは、23年3月にオーストラリア製の段ボールドローンCorvo PPDSを数百機を受けとっている。Corvo PPDSは安価で、フラットパックで提供され、1時間で組み立てが可能だ。

更に、23年8月ウクライナ海軍は、無人潜水艇(UUV)のプロトタイプ「マリーチカ」を公開した。マリーチカは全長約5.5mの魚雷のような無人艇(ドローン)で、数百kgの爆薬を積んで1,000km近く航続し、ロシアの軍艦の最も脆弱な部分を攻撃できるという。

ウクライナにとって、今回の戦争は防衛戦であり、主戦場は国内だ。従って、航続距離が短く安価なドローンの活用が可能である。しかし、自国から離れた地域への侵略戦争の場合、航続距離の長い船舶や航空機、長距離ミサイルが必要となる。これらの兵器は高コストだ。

今後の戦争は低コストで大量生産可能なドローンが主力になるだろう。

高性能のセンサー、カメラ、半導体を搭載した防衛用ドローンの大量生産は、日本の得意分野である。数百万のドローンによる防衛戦略を構築してほしいと思う。

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4.政治家の煽動に簡単には乗らない日本人

さて、日本はどうなるのだろうか。

日本は米国の属国であるとか、中国に支配されているとか言われることがある。それほど、日本としての主張が聞こえてこないのも事実だ。

しかし、日本全体が間違った方向に進んでいるわけではない。米国、中国等を見ていると、国のリーダーが間違った方向に進むと、国全体も間違った方向に進む。日本は個人のリーダーに引っ張られているのではない。一人一人は好きな方向に進んでいるように見えるが、群れ全体は天が示す道を進んでいる。これは日本人の特徴でもある「常に相手の気持ちを考えること」に由来しているのではないか。

常に相手の気持ちを推し量っているので、周囲の空気には敏感である。新たな情報が入れば、すぐに収集しようとするし、周囲の人がどのように考えているかも確認する。意見が割れているときには、意見が集約されるまで保留することもある。

こうして集合知が生成されることが日本の特徴かもしれない。

更に、日本人はリーダーのトップダウンより現場の集合知を重視することが多い。総理大臣が何と言おうと、その意見が常識外れであれば、国民はその意見には従わない。無視するだけだ。そして、国民が無視していることを政治家やマスコミも感じ取る。いつのまにか、主張が消えていることも少なくないのだ。

日本の問題は、マスコミや政治家、役人が「大衆は愚かである」と思い込んで、真実を伝えないことだ。問題が明確に設定されれば、日本人の集合知で解決できる。しかし、自分の利益だけを考えて情報を操作されると、解決できるものも解決できない。多くの場合、愚かなのは、マスコミ、政治家、役人の方だ。

日本において、衆愚政治は存在しない。政治家の煽動に簡単には乗らないからだ。例え、間違えることもあっても必ず修正されるだろう。

従って、問題があるのなら、問題を開示すること。問題がないように情報を隠蔽するのが最も罪深い。

その意味で、世界が危機を迎える時代は、日本人が成長する時代でもある。2024年が成長を実感できる年になることを祈りたいと思う。

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image by: Fabio Nodari / Shutterstock.com

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