2022年7月に初めてお伝えして以来、過去5回に渡り報じてきた静岡県湖西市における重大事態いじめ隠ぺい事件。今年でいじめ事案発覚から5年が経過しましたが、この件に関する湖西市サイドの動きは相も変わらず誠意の感じられないもののようです。今回のメルマガ『伝説の探偵』では、現役探偵で「いじめSOS 特定非営利活動法人ユース・ガーディアン」の代表も務める阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんが、未だ被害者を「あっち側」と呼ぶ市長の姿勢を疑問視。さらに当問題を放置したまま今後のいじめの予防策を講じるとした同市についての違和感を記しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:湖西市いじめ隠ぺい事件から1年の顛末
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湖西市いじめ隠ぺい事件の未だに設置されない検証委員会
コミュニケーション、継続的に行っていて検証委員会と言ってもなにを検証する、やるのか、ムコウも再調査を求めるものではないと最初に言って頂いていますけど、中身が決まらないとスタートできないので、担当と相手が今、詰めさせて頂いている、その合意が取れないとスタートできないのかなと。
そこはお互いのどこまでどこまでというのを、すり合わせを、時間をかけて行っているのかなと思います。
これは5月22日湖西市市長の定例記者会見で、静岡新聞の記者が、以前から取り上げている湖西市いじめ隠ぺい事件の調査報告書が出てから1年経っていて、検証委員会をやるというけれど、いまだに設置すらされていないことに対し進捗状況などを質問したことへの市長の回答だ。
もしも、この市長の言葉を事件の概要や前提などを知らない人が聞けば、至極正当な回答のように思えてしまうだろう。答えはごく当たり前のことで、「何を検証するかなどを含めて項目のすり合わせとしているところだ」である。
ところが現実は違うのだ。
まず、いじめ自体は平成31年のことであり、いじめの申告と働き掛けが実り、令和3年に第三者委員会が設置され、令和5年5月に調査報告書が答申された。
当日私は立ち合い、その日のうちに、わずか2時間ほどの時間で意見書等々の下地を作成し、被害保護者さんの意向をうけて被害側から意見をまとめて書面化し、さらに記者会見に同席して補助した。当時はまさに第三者委員会からの不意打ちであり、中間報告もないまま被害側に意見をする機会を与えずに強硬答申したという印象で、慣れていない被害者のみであれば意見すらいえなかったのではないかと思われた。一方で、その際にこうした強引なやり方は文科省ガイドラインなどを逸脱するものであり、その他の問題も積もっていたことから、今後のためを含めて検証委員会の設置を求めたのだ。
それから1年経って、担当との話し合いは続いていると言えば続いているが、被害側と担当(市長部局)との話は、実はわずか2回しか行われていない。しかも、何を検証するのかという中身の話ではなく、規約なるものを送り付けてきて、被害側から、ちょっと足りなくないですか?という専門的な内容を返答したくらいなのだ。
そしてそれ以降、投げたボールは返ってきていない。まさに、キャッチボールで言えば、こちらはすぐさま球を投げ返すが、市側が球を持ったまま半年くらい彷徨うという具合なのだ。
さて、冒頭の記者会見で市長はこのようにも答えている。
市長 「継続的なお話し合い自体は担当からも聞いています」
おいおい…である。つまりは、市長もたかが検証委員会を設置するについて1年以上も経っている中で、わずか2回の話ししかないということもわかっているということだ。
湖西市の明らかに違う力の入れどころ
一方で、私が発案し被害側の合意を得て提案した、市長部局にいじめ等々に対応する監察課を設けて積極的なアプローチによっていじめの芽を摘み、仮に重大事態な問題が起きている場合についても教育視点でのアプローチではなく行政、法律的なアプローチと同時に被害者支援を担う「大阪寝屋川市型のいじめ対策プラン」については、2024年10月スタートを目標に準備室を作って進めているという。
さらに市長は、こども家庭庁から国の採択を頂いたのだとしたのだ。
どうやらこども家庭庁でのモデルケースにするようなのだが、こうしたことは被害側には全く伝わってこないのである。
市長 「いじめの早期発見、早期防止、重大事態防止というアプローチはですね、これは、組織としてこれはしっかりと進めていきたいなと思っています」
この発言もそのままの意味で受け取れば、それが出来たら越したことはないのだが、物事の順序を考えるに、今起きている問題の検証も済まないままに、国の採択はサラッと通し、予防策を講じるというのは、そもそもの問題がわからないままに新たな策を講じることになるわけだから、力の入れどころが違うのではないかという違和感が強く残るのだ。
立場によっては、「重大事態にさせないために」湖西市いじめ隠ぺい事件のように、いたずらに対応せずに時間を浪費させ長期化し風化するように促し、被害側が精神的に疲労困憊して「もういいです」というのを狙っているのではないかと捉えることもできよう。
未だ誠意ある謝罪を受けていない被害者サイド
湖西市いじめ隠ぺい事件では、被害保護者が粘り強く交渉を重ね、精神的に追い詰められたり、村八分のような嫌がらせを受けるなどに耐え、何とか戦ってきたから第三者委員会が立ち上がり、いじめ認定という結果を得たという部分が大きい。
そして、この粘り勝ちによって、湖西市では誰も気がついていないかもしれないが、市の「いじめ防止基本方針」が改定され、国のガイドラインに近い対応が期待できるようになった。2024年10月スタート予定の大阪寝屋川式の監察課プランも本件事件がきっかけである。
つまり、この大いなる犠牲は、これからの湖西市の児童生徒並びにその保護者や教職員など学校を取り巻く方々へ「正しいいじめ対策」の基礎を作ったに等しい。
が、しかし、ここで犠牲と書いた通り、被害側は未だに謝罪を受けていない。確かにへらへらした態度で当時の教育長は謝ったようだが、その他関係者は未だに謝らず、中には出世と思われる人事を受けた者もいる。さらに、本来は行われるはずの進学進路において誤情報を与えられその道を狭められるなど将来に関しても回復不能な被害を被っているのだ。
湖西市は責任ある自治体行政として、こうした被害回復に努める責務があるだろう。市長が、未だに「被害者」と言わずに「あっち側」「相手側」と呼ぶようだから、まさに敵視しているようにも思えるが、それは過去の自分の行いが簡単な謝罪や説明ではいいわけがつかないほど長期に無視を決め込んでいるからに違いないだろう。
まずは対話を普通に行うべきであり、1年間に2回の接触はコミュニケーションではないと己の辞書に書き込むべきであろう。その上で、少なくとも週に1度、担当部局は被害側と話し合いの機会を持ち、早急に検証委員会を発足させなければならない。
そうでなければ、どんなに素晴らしい対策を国の採択を受けて発足しても、汚点の上でのスタートになるであろう。こども家庭庁は「こどもまんなか」というスローガンを掲げているが、その「こどもまんなか」を「おとなまんなか」の考え方で歪めてはならないのだ。
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守られることがないいじめ防止対策推進法
条令や法律、それに伴う仕組みなどを道具に例えると、それを使う人によってその道具がどのように使われるか、もしくは使わないかなど、大きな差があると思います。
例えば包丁です。包丁は料理を作るために使う道具ですが、刃物です。食べ物をよりおいしく食べてもらいたいという多くの人が使えば、包丁は素晴らしい道具になります。
一方で、これを人に向けて攻撃に使えば、それは犯罪となるでしょう。
いじめ防止対策推進法から11年あまり、罰則がないことを言いことに隠ぺいをしたり、報告しなければならない事件を報告しなかったり、ほぼ毎日、その不正が報道に上がっていますし、報道にまでならない事件はその数十倍起きています。
まさに、法律を運用する側が誤った使い方をした結果に他なりませんし、これほどまでに続くのは運用する側が全く反省をしていないからと言っても過言ではありません。
そしてこれは、この日本の未来を作ると言っても過言ではない教育の問題であり、解消の兆しはないどころか知れば知るほど闇落ちするほど根深いあらゆる問題が浮上するのです。
合理的に考察するならば、未だに誤った使い方をする運用者にいつまで運用者であり続けさせるのか?という疑問が生じやしませんかと私は思うのです。
そろそろ日本人はあらゆる面で搾取され我慢を続ける必要はないのではないかと思うのです。教育行政然り、臭いものに蓋をし続けて、もはや組織自体が腐敗臭で何が臭いかわからなくなっているのではないか?とも思うのです。
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image by: 湖西市長 影山剛士 - Home | Facebook