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威嚇か、それとも故障か?水深の浅い台湾海峡で中国海軍が潜水艦を浮上させた「意図」

先日掲載の記事では中国が元軍人をモーターボートで台湾に送り込むという「嫌がらせ疑惑」をお伝えしましたが、その事案から9日後の6月18日にまたも中国は、台湾海峡に潜水艦を浮上させるという「威嚇」に出たようです。今回、台湾出身の評論家・黄文雄さんが主宰するメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では、この出来事を伝えるニュースと自己防衛力の強化を掲げた台湾サイドの反応を紹介。その上で、複雑さを増す東アジアにおいて自衛力を上げる必要があるのは台湾だけなのかという問題提起を行っています。

【関連】止まらぬ中国の嫌がらせ。軍事威嚇では飽き足らず元軍人をモーターボートに乗せ台湾に送り込む習近平政権の姑息

※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:【台湾】中国の嫌がらせに自己防衛力強化を訴える新総統

「台湾の安全強化は世界の安定につながる」止まらない中国の嫌がらせに屈せぬ新総統

台湾の離島沖に中国の潜水艦 国防部「把握している」

中国からの嫌がらせが止まりません。今度は潜水艦での威嚇です。まずはどのようなことがあったのか、以下、報道を引用します。

台湾の一部メディアは18日、台湾海峡の離島、澎湖の漁業従事者が同日早朝、同海峡の暗黙のライン「中間線」付近で操業中、中国の潜水艦が海面に浮上したのを目撃したと報じた。顧立雄(こりつゆう)国防部長(国防相)は同日、事実だと認めた上で、国防部(国防省)は関連の監視・偵察手段を利用して状況を把握していると語った。

報道によると、潜水艦は中国軍艦1隻が支援に来た後、中国方面に航行していったという。交流サイトに投稿された写真には、096型原子力潜水艦とみられる潜水艦が写っていた。

立法院(国会)出席前に報道陣の取材に応じた顧部長は、中国は台湾に対して絶えず軍事的な嫌がらせや敵が武力攻撃と判断しにくい手法で圧力を加える「グレーゾーン作戦」、認知戦を仕掛けてくるとし、警戒意識を十分に持つべきだとの認識を示した。

また中国が台湾に対してたくらむ一方的な現状変更のやり方を常に理解する必要があるとし「怖がらず、慣れてしまってもいけない」と強調。政府は冷静かつ理性的に適切な態度で台湾海峡情勢に対処するとし、中国に対してトラブルメーカーにならないよう呼びかけた。

台湾の離島沖に中国の潜水艦 国防部「把握している」

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国内では媚中派政治家からの「いちゃもん」も

この報道内にある、「中国に対してトラブルメーカーにならないよう呼びかけた」という文言については、この報道が出る前日に起こった出来事に関係があります。それについては以下、報道を引用しましょう。

頼清徳(らいせいとく)総統が16日に行われた陸軍の関係行事で「開戦後すぐに終戦する『投降主義』は受け入れられない」と発言したのを受け、野党・国民党の馬英九(ばえいきゅう)元総統が董事長(会長)を務める馬英九基金会は同日、頼氏の演説は戦争を求める傾向を示していると批判した。顧立雄(こりつゆう)国防部長(国防相)は17日、中国こそがトラブルメーカーであり、台湾が戦争を望んだことはこれまでにないと反論した。

頼氏は16日、陸軍軍官(士官)学校の創立100周年を記念する式典に出席。あいさつで国家主権の防衛に言及した際「主権があってこそ国家があり、台湾があってこそ中華民国がある」などとした上で、「開戦後すぐに終戦する投降主義は受け入れられない」と語った。

馬英九基金会の蕭旭岑執行長(CEO)は報道資料を通じ、人々が求めているのは戦争を回避する総統であり、戦争を引き起こす総統ではないと反発した。

顧氏は立法院(国会)外交・国防委員会出席前に報道陣の取材に応じ、頼氏の発言における意図は「投降主義を受け入れられない」ということだと説明。台湾は敵の侵攻に対して防御する「守勢作戦」を取っており、目標は非対称作戦で多重な抑止力を構築することなどにあるからだとした。その上で、中国は軍事力を拡張し続け、台湾海峡でさまざまな脅しや軍事的なかく乱行為を通じて現状を変更しようと絶えず試みているとし、中国こそが地域におけるトラブルメーカーであることを人々ははっきりと認識するべきだと強調した。

国防相「中国こそがトラブルメーカー」 頼総統の発言に対する批判受け反論/台湾

馬英九の媚中的発言に対して、顧立雄国防部長(国防相)が牽制した感じですね。そして翌日、原子力潜水艦が現れたことに対して、「中国こそがトラブルメーカーだ」と言ったわけです。この発言は、かなり馬英九を意識してのものでしょう。

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自衛力を上げなければならないのは台湾だけなのか

台湾メディアもこのことについては詳細に報じており、台湾海峡は浅いのになぜ潜水艦がいるのかという点について、原子力潜水艦をわざわざ見せつけることで台湾を威嚇しているのではないかや、故障してしまったので浮いてしまったのではないか、などの憶測を呼んでいます。

そして、原子力潜水艦が目撃された翌日、頼総統は就任1カ月の記者会見を開き、以下のようなことを述べました。以下、報道を一部引用します。

頼清徳(らいせいとく)総統は19日、就任から1カ月の記者会見を開き、「全社会防衛強靭(きょうじん)性委員会」を設立すると発表した。社会全体の強靭性を強化し、国家が緊急事態や自然災害に直面した際に政府と社会が通常の働きを維持できるようにするのが狙い。「社会全体が強靭な自己防衛の意思を持ち、自身を固く信じる心を持ってこそ、各種の災害やリスクに対応でき、台湾を引き続き強くさせられる」と述べた。

5月20日に総統に就任した頼氏。世界は台湾が自分を守る上でいかにして強大な強靭性を示し、地域の平和と安定を破壊しようとする野心を抑止できるかに注目していると言及。台湾社会全体の強靭性を強化することは、台湾の安全性を高めることにつながり、台湾の安全強化は全世界の安全と繁栄の強化につながると強調した。

国防、民生、防災、民主主義の四つの分野で強靭性を強化する。全方位での点検を行い、対策や解決策を提示していくとした。委員会は頼氏が自ら召集し、蕭美琴(しょうびきん)副総統や潘孟安(はんもうあん)総統府秘書長、呉釗燮(ごしょうしょう)国家安全会議秘書長が副召集人(副座長)を務める。

台湾社会全体の防衛・防災の強靭性強化へ 頼総統、委員会設立を発表/台湾

はっきりとは言っていませんが、台湾はもっと自己防衛力を上げて中国からの威嚇には屈しないと宣言していますね。北朝鮮、ロシア、中国という独裁3国家が関係をより強固にしている中において、自衛力を上げなければならないのは台湾だけではないはずです。

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