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韓国の老人貧困率が52%の衝撃。高齢者が幸せになるための「3つの条件」とは?

日本でも社会問題となっている、高齢者たちの働き口や住居。無料メルマガ『キムチパワー』の著者で韓国在住歴30年を超え教育関係の仕事に従事している日本人著者が、韓国でも現在起きているその大問題を取り上げるとともに、老人が幸せに暮らすことのできる世の中になるための条件について語っています。

「老人が幸せな世の中」の3つの条件

低い丘と裏山が一望できる忠清南道洪城郡(チュンチョンナムド・ホンソングン)のある田舎町。ここには引退後、農夫になった7人の老人が暮らしている。94歳の最古参から73歳の末っ子まで一緒に食べて、働きながらおしゃべりをする。事業家や自営業者、サラリーマンとして一生を熾烈に仕事をした彼らは、引退後に直面する経済的困難とひどい寂しさを避けるべく、おのずからここを訪ねてきた。

村の名前は「引退農場の人々」。引退した老人たちが一緒に暮らし、農業をして収益を分け合う農場だ。入居者は毎月105万ウォンを払えば、トイレとベッド付きのワンルームを割り当てられ、1日3食の食事も解決できる。体調が悪くなると農場のオーナーであるキム・ヨンチョル代表が病院まで連れて行く。キム代表と社員が約5,000坪の露地および施設ハウスで唐辛子、長ネギ、ワケギ、キャベツなどを栽培し、高齢者は販売用包装袋に収穫した農作物を入れて1個当り250ウォンを受け取る。

今月7日に村を訪れた時は、1歳違いのペク某さん(86)と金某さん(87)がセリを包装していた。ペクさんはここで7年間居住中だ。彼は若い頃、ソウルや仁川(インチョン)、大田(テジョン)など、全国各地を回りながら、事業や商売をしていた。アパートの警備の仕事も何度もした。しかし、年を取るほどペクさんを使ってくれるところはなくなっていった。家族とも離れて暮らすようになった。一人暮らしの時はすることがなくて一日がとても長かった。食事も頻繁に抜いて、体の具合が悪い時はお金の心配で病院を探すのも難しかった。

ペク氏は「ここでは友人たちと対話もたくさんして小遣い稼ぎもあってとても良い」とし、「誰も知らないうちに一人で死ぬ心配も消えた」と話した。

入居して6か月になった金さんは先月、農作物の包装の仕事で100万ウォン以上を稼いだ。彼は「お金を貸してくれた人たちに借りを返し、おいしい食べ物も買って食べたい」と喜んでいた。

しかし、キム氏とペク氏のように寂しくなく仕事もある老人たちは多くはない。大多数の韓国人にとって「老人が幸せな世の中」は遠い国の話だ。

経済協力開発機構(OECD)「一目で見る年金2023」報告書によれば、2020年基準で75歳以上の老人貧困率は52%に達する。専門家たちは未来を見通して、1.働き口、2.住居不安、3.医療疎外問題を急いで解決しなければならないと口をそろえる。

1.働き口

高齢者の貧困問題を解決するための最も緊急な課題は、雇用創出と定年延長だ。現在、法的定年は60歳だが、韓国では平均45歳を前後に核心働き口から押し出されるのが現実だ。こうなれば十分な資産を貯められないままその後の20~30年間を何らかの雑用で生計を立てるしかない。

崇実(スンシル)大学社会福祉学部のホ・ジュンス教授は「来年から超高齢社会(高齢者比率20%以上)への進入を控えているだけに、少なくとも65歳まで定年を延ばす案を直ちに議論しなければならない」と話した。現在、フランスは62歳、ドイツとスペインは65歳が定年だ。

高齢者の雇用創出のためには、身体能力と適性を考慮し、求職高齢者と雇用をつなぐシステムを構築することが必要だ。食品企業プルムウォンのキムチ博物館「ミュージアムキムチカン」で働く「シニアドーセント」クォン・ソンギョンさん(60)は引退後、適性に合う新しい職業を見つけることができたケース。クォン氏は10年間、保育園の教師として働いていたが、今年2月に定年退職した。引退はしたが、子供たちが経済的に自立するまで働き続けたいと思った。だが、クォン氏が求めることができる働き口は清掃と食堂仕事など今までしたことのない仕事が大部分だった。

クォン氏は1か月間あれこれ悩んでいたが、ソウル市の高齢者就職支援センターを通じてシニアドーセント採用公告に接することになった。保育園の教師をするほど子供たちに接することが好きだったクォン氏にはぴったりの仕事だった。シニアドーセントになったクォンさんは現在、外国人と学生たちを対象にキムチの歴史と文化、効能について説明している。クォン氏は「周辺の友人たちも引退後、適当な働き口を見つけられず苦労している」とし、「適性に合った働き口を連結してくれるプログラムが多くなれば役に立つだろう」と語る。

2.住居問題

高齢者住宅の普及も貧困問題の解決のために拡大されなければならない。韓国土地住宅公社(LH)のような公共機関では、低所得高齢者のために低価格で住宅を供給している。体の不自由な高齢者のために敷居を下げたり、安全バーを設置するなど、高齢者にやさしいのが特徴だ。高齢者住宅は現在3万世帯水準で、全体500万高齢世帯の1%にもならない。

様々な人とコミュニケーションできる住居空間を作ることも重要だ。高齢者が家に閉じ込められていると、いくら良い家を建てても社会的孤立を避けられない。洪城の引退農場の人々も単なる住居空間ではなく、老人たちが経済活動と余暇活動を共にしながら疎通する空間だ。

高齢者の孤立を防ぐためには「世代混合型」居住地も必要だ。例えばマンションを新しく建てるときに老人住宅を別の団地に分離してはいけないということもある。建国大学不動産学科のユ・ソンジョン教授は「老人と新婚夫婦、青年が一つの空間で交わることができるように住宅関連法を整備しなければならない」として「老人たちが住居地で子供たちの安全を世話するなどそれなりの役割も探すことができる」と説明した。

3.医療問題

医療システムも高齢者に合わせたものに変える必要がある。高齢者のほとんどは5、6個の病気を複合的に持っている。しかし、低所得層の高齢者は経済的負担と身体的機能の低下で、まともに病院を利用することが難しい。

ソウル中渓洞(チュンゲドン)で会った基礎生活受給者のイ・ヨンマンさん(78)は、「歯も痛くて消化機能も良くないのに、体の具合が悪く、病院を行き来すること自体が大変だ」とし、「特にインプラント4個をやらないといけないのだが、政府では2個まで支援し、残りの費用200万ウォンがとても負担になる」と話した。

医療専門家たちは、1.高齢者オーダーメード型健康診断導入、2.訪問診療拡大、3.大型病院高齢者疾病センター設置などを代案として提示している。

高齢者に合わせた健康診断は、高齢者の疾患を事前に予防し、医療費の支出を下げることが目的だ。65歳以上の高齢者が受ける国家健康診断項目に記憶力減退、認知能力喪失、関節機能退行など老人性疾患項目を追加するのが骨子だ。

訪問診療は、体の不自由な高齢者の家を医師が直接訪ねて診療する方式だ。2010年代初めから在宅診療が活性化された日本では、医師が月2回程度訪問して検診をしてくれる。

老人疾病センターは、高危険産婦を集中管理する高危険産婦新生児統合センターのように、老人患者を専門的に治療する特化された医療機関だ。高齢者がセンターに入院すると、外科、内科、胸部外科など分野別の専門医療陣がセンターを訪れ、検査して診断する。体の不自由な高齢者はワンストップ検査を受けることができ、医療スタッフは患者の状態を総合的に調べることができ、管理が楽だ。[韓国日報参照]

image by: Shutterstock.com

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韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

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【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

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