7月26日に開幕したパリ五輪。日々アスリートたちの熱い戦いが全世界の人々を魅了し続けていますが、それすら中国にとっては「自国体制の喧伝」の道具に過ぎないようです。今回、台湾出身の評論家・黄文雄さんが主宰するメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では、香港初の金メダリスト誕生を香港支配の正当化に利用する中国政府の「プロパガンダ」を紹介。平和の祭典であるオリンピックを政治利用する同国の品格を疑問視しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:【中国】パリ五輪、政治利用と不満噴出の中国、称賛される日本
「平和の祭典」の理念など関係なし。パリ五輪すら政治利用する中国
● 奧運》江旻憓奪香港首金 中國蹭熱度:碩論與一國兩制優勢有關
( 五輪》江旻憓選手が香港に史上初の金メダルをもたらした:「一国二制度」の優位性について中国で熱い議論)
パリ五輪が開幕し、毎日熱戦が繰り広げられていますが、何でも政治に結びつけるのが中国です。
台湾女優の林志玲(リン・チーリン)に似ていることから「リトル・リン・チーリン」との愛称で知られる香港のフェンシング選手、江旻憓選手が香港初の金メダルを獲得しました。
彼女が修士課程で学んでいる中国人民党委員会宣伝部は、直ちに祝賀を発表するとともに、彼女の卒論指導の講師が、その卒論のテーマが「一国二制度」の利点に関連したものであることを明らかにしました。加えて江選手が「香港特別行政区の発展、祖国の発展により良く貢献する」ことを望んでいると述べました。
要するに、香港選手の優勝を利用して、中国側は香港の一国二制度がうまくいっており、何も問題がないことを強調したわけです。
30歳になる江選手は、香港の国際学校であるシャーティンカレッジを卒業後、2012年にアメリカのスタンフォード大学に留学、国際関係学の学士号を取得した才媛です。
その後、中国人民大学の法学博士過程に入学、2021年9月には香港中文大学の法学博士課程に進みました。
彼女は法律の勉強を通して正義を守ることを望み、法の支配とスポーツマンシップの精神は似ていると主張していたようです。
江選手はかつてインタビューの中で、香港で反中デモが発生したことで、「一国二制度」についてもっと学びたいと思うようになったと語り、近年、香港で「一国二制度」をめぐる論争が起きていることもあり、自分の意見を表明するための十分な知識を得るためには、異なる視点を理解することが必要だと考えている、と語っていました。
中国政府は世界が注目する五輪という場で、彼女を利用するかたちで、世界各国から批判されている中国政府による香港支配を正当化したわけです。
前回の東京オリンピックでは、開会式の際に、入場行進してきた台湾選手に対して、日本のNHKのアナウンサーは「チャイニーズ・タイペイ」ではなく「台湾です」と紹介し、これが大きな話題になりました。
● 五輪開会式でNHKアナの「台湾です!」に感涙 台湾にかかわる人々がこの一言に歓喜した理由
今回も、フランスのテレビ局「フランス2」の司会者は「チャイニーズタイペイ。われわれのよく知る台湾です」と、「台湾」という呼称を使用しました。
● パリ五輪/パリ五輪 仏テレビ局、台湾代表の入場に「われわれの良く知る台湾です」
一方、中国の中央電視台のキャスターは、「中国台北代表団」と紹介したため、ネット上の愛国主義者たちは大喜びしましたが、中国のテレビ局がこう呼ぶのは当然であり、冷めたネットユーザーからは、「自己顕示欲が強すぎる」と批判されたようです。
● 央視稱「中國台北」引小粉紅振奮 對岸網友狠狠打臉:根本自嗨
この記事の著者・黄文雄さんのメルマガ
日本に対して各国から上がるさまざまな称賛の声
中国では、開会式での中国選手の扱いについても、中国ネットユーザーは不満が多かったようです。というのも、選手団はセーヌ川を船に乗って入場しましたが、その際、400人以上の選手団である中国はカナダ、チリと同じ船に乗ることになり、さらに船の後ろ側に「押し込められた」ということで、不満の声が多く上がったようです。
631人の選手団だったアメリカがほぼ船を「貸し切った」かのような状態だったのも、差をつけられたと感じたのです。メンツを潰されたと感じたのでしょうが、それにしても、こういった同じ船に乗る国は他にもあったのにもかかわらず、つまらない点にこだわるのも、さすがメンツの国です。
一方、日本については、各国からさまざまな称賛が上がっています。たとえばメダルラッシュに湧く柔道日本代表については、強さの一方で、選手の礼儀正しさに世界から称賛の声が集まっているそうです。
● 「世界に日本人の礼儀正しさを見せられた」 金メダルの裏で…五輪で発揮される柔道ニッポンの品格に称賛
また、自らを「初老ジャパン」と呼ぶ馬術日本代表は、92年ぶりにメダルを獲得しましたが、授賞式において、表彰を待つあいだ日本チームだけが全員ヘルメットを脱いでいたということで、そのふるまいが「紳士的」だと世界から称賛されています。
● 禮儀之國!日本馬術選手登奧運頒獎台「紳士舉動」獲千萬讚賞
オリンピックはあくまで平和の祭典。選手の政治利用や、分断や憎しみを煽るようなことは、国も国民も控えるべきであり、それができるかどうかが、国の品格を表すのです。
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※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2024年7月31日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込660円)。
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