イーロン・マスク氏が率いる米テスラ社のFSD(Full-Self Driving、完全自動運転)の中国展開に暗雲が垂れ込めているようです。日刊で中国の自動車業界情報を配信するメルマガ『CHINA CASE』は、中国の自動車業界で何が起きているのか、詳しく解説するとともに、テスラFSDの中国展開の「不透明な状況」の先を読んでいます。
テスラFSDの中国展開が暗礁、中国勢は自社の有利を強調するが
米テスラのFSD(Full-Self Driving)の中国展開が暗礁に乗り上げているようだ。
2024年10月18日に関係者は、現在も中国政府による審査中であり、評価している最中であり、完了時期は未定だという。
同社のイーロン・マスクCEOは2024年7月、欧州と中国でのFSDが間もなく許可され、2024年中にも展開予定だ、とした。
その際、中国勢は一気に身を引き締め、戦う準備をしていたが、2024年中の展開も不透明な状況だ。
Xpengトップの見解
中国新興メーカー小鵬(Xpeng)の何小鵬董事長兼CEOは2024年9月に、米国西海岸に行って、実際にテスラFSDを試乗してきたことを明らかにした。
「テスラFSDが中国展開すると、中国市場には大きな影響が生じることになる。業界の競争はますます激しくなり、淘汰が進むだろう」との見解を示した。
一方、「テスラFSDがそこまで優れているとは感じなかった」ともしている。
ファーウェイ幹部の見解
ファーウェイの自動車事業トップ余承東氏も2024年10月、「テスラはすでに多くの車両とデータを備えており、そのFSDのパフォーマンスは秀でたものがある」と指摘。
「我々も米国やカナダで、自車とテスラFSDの比較実証実験を展開している」とし、「結果、我々の方がやや優れている」と評価した。
その理由として、「我々にはレーザーレーダーがあるが、テスラにはない。感知能力不足を補完するためにもレーザーレーダーは必須だ。我々のシステムの方が優れている」とした。
レーザーレーダーの有無
レーザーレーダーについては、そもそもテスラがこれを放棄、その後中国勢もそれに従った。
その後テスラは改めてレーザーレーダー採用の可能性を検討、その動きを察知した中国勢はこぞってレーザーレーダーを採用し始めた。
ファーウェイもその代表の一つだが、レーザーレーダーの急普及によって、特に中国においてはコストダウンが著しく、OEMにとっても採用しやすい環境となっている。
FSDも価格低下傾向
しかし、高額とされたFSDもすでに二度、値下げが行われ、米国では中国で発表されている定価の半額にまで落ち込んでいる。
この水準が中国でも適用されれば、すでにファーウェイのADASと価格として大差なくなる。
いくらコストダウンしたとしても、レーザーレーダーを搭載しているファーウェイ車では、搭載していないテスラ車と比べ、利益率は大きく異なってくる。
ブランドイメージの差
また、この分野でもしかり、性能うんぬんよりはブランドイメージの方が消費者には響く。
性能は確かにテスラよりも中国勢の方が上なのかもしれないが、それでもテスラより優位性がある、というと疑問。
中国勢のBEVは性能においてすでにはるかにテスラを凌駕しているが、販売において今でもテスラにはるかに及んでいない。
中国展開されていないが、中国でも認知度が高いテスラFSDが仮に中国にも導入されれば、大きな話題になることは間違いない。
出典: https://mp.weixin.qq.com/s/oDFZbQD7W7imJvfmZEwHOw
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