一般常識を持つ人間からしてみれば、荒唐無稽と思わざるを得ない主張を次々と展開するトランプ氏。それでも有権者の半数以がその言を信じ込むという理解に苦しむ状況が続く米国ですが、またも彼らの目の前に「特大のエサ」が投じられたといいます。今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、トランプ信奉者である下院議員がニュース番組で口にした、「海軍提督から聞いた」という仰天情報を紹介。かような言説をトランプ信者がなんの疑いもなく受け入れる背景を考察しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:トランプ支持者という残念な人たち
もはや一種の宗教。トランプを支持する残念な人たち
アメリカ大統領に返り咲いた「世界のジャイアン」ことドナルド・トランプは、現地時間1月20日の就任会見の場からトンデモ大統領令を連発し、その後も数々のトンデモ発言を絶賛連発中です。そのため、まだ就任から2週間しか経っていないのに、すでに世界は大混乱です。
徳光和夫さんは、ニッポン放送『とくモリ!歌謡サタデー』のエンディングで、毎週、自作の川柳を披露するのですが、先日の放送では、こんな作品を発表しました。
トランプの常識 世界の非常識 徳光和夫
「句またがり」という高等テクニックで川柳を詠むなんて、サスガは徳光さんですね。競馬は当たらないけど(笑)…なんてのも折り込みつつ、トランプのトンデモ発言を1つ1つ取り上げているとキリがありませんが、あたしが何よりも恐ろしいと感じているのは、どこからどう見てもデマであることが明白なトンデモ発言であっても、トランプ支持者はそれを鵜呑みにして信じてしまっているという点です。
完全にカネヅルにされているのに、いくら家族や友人が「お前は騙されてる。あの女だけはやめたほうがいい」と忠告しても聞く耳を持たず、全財産を巻き上げられた上に闇金にまで手を出した果てに捨てられたバカ男。悪質なカルト宗教に騙されて二束三文の壺を法外な値段で買わされているのに、いくら家族や友人が「お前は騙されてる。あれは悪質な霊感商法と同じだ」と説得しても聞く耳を持たず、全財産を失った上に自民党議員の選挙運動まで手伝わされた洗脳信者。
トランプ支持者は、こうした「バカ男」や「洗脳信者」と同類で、もれなく聞く耳を持っていません。昨年の大統領選挙で、実際にトランプの集会を取材したニューヨーク在住のジャーナリスト、津山恵子氏は、次のように報告しました。
トランプの集会に行って驚いたのは、彼が「移民は犯罪者だ!」と言うと、集まった人たちが皆、その言葉をそのまま信じていたことです。トランプには、自分が流す嘘のニュースや偽の情報を信じさせる強さがあり、私はそれがとても恐ろしと感じました。彼の集会の参加者に質問しても、誰もが彼の流す嘘のニュースや偽の情報を信じ込んでいるので、もう言葉が通じない、会話が成り立たないのです。トランプの流す嘘の情報を信じ込んでいる支持者たちは、アメリカ人同士でもコミュニケーションが取れず、アメリカは今、真っ二つに分断しています。
トランプ支持者たちが未だに信じ込んでいる「教祖」のデマ
昨年の大統領選で、トランプは数えきれないほどのデマを垂れ流しました。その中で、いかにもトランプらしいのが「オハイオ州スプリングフィールドに流入して来たハイチ系の移民たちが、そこに住んでいるアメリカ人たちのペットの犬や猫を盗んで殺して食っている」という、とんでもないデマです。
ちなみに、トランプは「流入して来た」という表現で、いかにもハイチ系移民が「不法入国者」であるかのような印象操作を行ないましたが、スプリングフィールドで生活しているハイチ系の外国人は、米政府の許可を得て合法的に滞在している移民です。トランプの隣りにいるイーロン・マスクと同じく、米政府の許可を得て合法的に他国から入国して来た移民であって、決して犯罪者ではないのです。
このトランプのトンデモ発言は波紋を広げ、オハイオ州の市庁舎に爆破予告が届くという事態にまで発展しました。市の担当者は「トランプ氏が言ったような事実はない」と否定し、市警も「ペットが盗まれたり食べられたりしたという報告はない」と述べ、マスコミ各社は「トランプ氏の発言は事実無根」と報じました。
それなのに、嗚呼それなのに、それなのに…と、このコーナーでも五七五で嘆いてしまいますが、トランプ支持者たちは未だに「スプリングフィールドのハイチ系外国人は不法入国者であり、ペットの犬や猫を殺して食っている」と信じ込んでいるのです。日本にも、未だに「関東大震災の時に朝鮮人が井戸に毒を入れた」というデマを信じ込んでいる人もいれば、「在日特権」というデマを信じ込んでいる人もいますが、これと同じです。
あたしは当初、こうした人たちって、単にリテラシーが欠落しているだけだと思っていました。でも、目の前に「それは事実無根のデマである」という確たる証拠を突き付けても頑として受け入れず、そのデマを信じ続けるのですから、もはやリテラシーうんぬんではなく、一種の宗教のようなものだと理解しました。
また、あたしは、中にはデマだと知りつつも信じたふりをしている人たちが、一定数はいると思っています。「無理が通れば道理が引っ込む」ということわざがありますが、何らかの目的のために、自分の「無理」を押し通すことで、強引に「道理」を引っ込めさせようとしている人たち。たとえば、自分の排外主義を正当化するために、自分でもデマだと知っている「在日特権」をあたかも事実であるかのように連呼して、世の中の「道理」を引っ込めさせようとする人たちです。
トランプ支持者の場合は、カネ儲けのためにトランプに擦り寄る恥知らずな大企業のトップなどもいますが、大多数はトランプのデマを鵜呑みにしている脳みそがピュアすぎる人たちだと思います。トランプが「地球温暖化など嘘だ!」と叫べば「ウォー!」と拳を挙げ、トランプが「石油を掘って掘って掘りまくるぞ!」と叫べば「ウォー!」と拳を挙げるトランプ支持者たち。
こんな人たちには、いくら地球温暖化について科学的に説明しても、パリ協定の重要性について段階的に説明しても、1ミリも理解されないでしょう。それどころか、これは宗教と同じなので、教祖トランプの発言を否定する文言に対して、トランプ支持者たちは最初から聞く耳など持たないのです。
トランプ支持者たちの前に投げ込まれた「特大のエサ」
トランプの垂れ流すデマというエサに、次々と飛びつく「お腹を空かせた魚」のようなトランプ支持者たちですが、そんな彼らの前に、さっそく特大のエサが投げ込まれました。トランプ信奉者の1人である共和党の下院議員、ティム・バーチェットが、トランプの就任式の2日後の1月22日、右派系テレビ「ワン・アメリカ・ニュース」の番組に出演し、こんなことを述べたのです。
ある海軍提督から聞いたのだが、サッカースタジアムほどの大きさの何かが海中を時速数百マイルという高速で移動していることが確認され、文書化されたという。私は異星人の宇宙船だと思っている。彼らは地球の海底に基地を持っているのだ。神が造りたもうた偉大なる宇宙の大きさを考えれば、どんなことが起こっても不思議ではない。
しかし、私は彼らから危害を加えられる心配などしていない。彼らにそんな能力があったとしたら、われわれ人類はとっくの昔にバーベキューにされているだろう。
もはや『月刊ムー』や『東スポ』の世界ですが、ここで「バーベキュー」というワードを折り込むとこなどは『週刊文春』のフレーバーまで醸し出しています。しかし、ティム・バーチェットは『東スポ』のようにネタでやっているわけではなく、至って真剣なのです。テネシー州選出のティム・バーチェットは、これまでずっと「政府はUFOに関する情報を隠蔽している」と批判し続けて来た議員であり、UFOを含む「UAP(未確認空中現象)」に関する公聴会も開催して来ました。
2023年7月に開催された米下院のUFO公聴会では「フットボール場ほどの大きさの赤く四角いUFO」の目撃証言なども出ているので、今回の「サッカースタジアムほどの大きさ」という発言を知って、あたしは「アメリカ人らしいな~」と思いました。でも、今回は「海中」ですから、これまでの「UFOと言えば空中」という大前提を覆したところが斬新です。ちなみにあたしは「空も飛べるし海中もイケるならガメラみたいじゃん」と思ってしまいました(笑)。
で、極めて真剣にUFO問題に取り組んでいるティム・バーチェットですが、去年の大統領選挙では「トランプ氏が大統領になれば、これまで政府が隠蔽して来たUFOに関する情報をすべて開示してくれる」と述べて、トランプを応援していました。今回、トランプの就任式の2日後に、右派系テレビの番組で発言したのは、当然、トランプ支持者に向けてのアピールであり、トランプへの「早く情報開示してね♪」というメッセージだったと思います。
トランプの垂れ流す数々のデマを鵜呑みにし、科学的な反論など一切受け付けないトランプ支持者の皆さんが、この「サッカースタジアム大の海中UFO」や「宇宙人の海底基地」という特大のエサに食いつき、大騒ぎを始めるのも時間の問題かもしれません。しかし、2週間が経った今も特に騒ぎが起こっていないのは、まだトランプ自身がこの問題に言及していないからです。
トランプ支持者にとって「絶対」の存在である教祖トランプの口から「サッカースタジアム大の海中UFO」や「宇宙人の海底基地」という言葉が発せられた時、それは神の言葉となり、全米の半分の人たちが真実だと思い込むのです。
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一切の常識など通用しないトランプ支持者
そもそもの話として、大谷翔平の球速からも分かるように「時速100マイル」は「時速160キロ」ですから、「時速数百マイル」ということは、少なくとも「時速320キロ以上」ということになります。サッカースタジアムほどの巨大なUFOが海中をそんな速度で移動したら、その海域は嵐のように大荒れになり、気象用の衛星からも簡単に確認されますし、周辺の船舶は大きな被害を受けます。
こんなこと子どもでも分かるはずですが、トランプ支持者という残念な人たちには常識など通用しません。何故なら、教祖であるトランプ自身が非常識の極みだからです。徳光和夫さんの川柳が示しているように。
(『きっこのメルマガ』2025年2月5日号より一部抜粋・文中敬称略)
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