中露と欧州は“崩壊の危機”に直面。なぜトランプが「大失敗」しても日本の安全保障は保たれるのか?

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想定の範囲内とは言え、大統領への返り咲きからの2週間で早くも国際社会を大きく翻弄するトランプ氏。あくまでアメリカ第一主義を押し通す「トランプ2.0外交」は今後、世界をどのような状況に導くのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、トランプ劇場の裏で進みつつある「グローバルな絆の崩壊」について詳しく解説。その上で、今後の国際情勢が第2次世界大戦勃発時のような無秩序な状態に置かれかねないという懸念を記しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:トランプ劇場の裏で起きているグローバルな絆の崩壊

進む「グローバルな絆の崩壊」。トランプ劇場の裏で何が起きているか

「私が最も誇りに思うレガシーとは、平和をもたらし、人々を一つにまとめる存在となることだ。それが私の望む姿だ」

トランプ大統領が就任式で宣言した“自身が目指すもの”の内容です。世界中の誰もが彼にそうあってほしいと強く望むことですが、果たして実際にはどうでしょうか?

新しいトランプ政権の陣容を見る限り、国際政治や安全保障についての見解や志向は一枚岩とは言えません。

あるグループは「アメリカが国際政治の中心として世界の諸問題に関わるべきだ」と主張して提案し、別のグループは「地域によって外交政策に優先順位をつけるべきで、今後は欧州やウクライナではなく、アジアや中国政策に軸足を置くべき」だと主張して提案をし、そして3つ目のグループは「終わりの見えない戦争をさっさと終わらせて、アメリカは一切その後に起こることから手を退くべき」と主張して、政策提言をするグループと、大きく分けて3つのグループが政権の中枢に存在すると分析します。

どのような政策提言が上がってきても、最終的にトランプ大統領がそれらをバランスよく吟味し、方針を明確に打ち出せるのであればよいのですが、どちらかというと場当たり的で、発言によって国内外の注意を惹くことに重点を置くトランプ大統領に、一本筋が通った、誰もが納得するような外交・安全保障政策を実施し、国内外を一つにまとめるような策があるとは思えません。

ただ、この外交方針が異なる3つのグループがすべて納得できるテーマが存在します。それこそがトランプ大統領が事あるごとに打ち出し、口にする【貿易・関税・移民に関する政策と方針】で、国際政治および協調体制にとっては不幸で、かつグローバル経済体制を根本から崩壊させかねないものですが、今後、トランプ外交の主軸に据えられ続けることは、恐らく間違いないだろうと考えます。

関税政策であっても、移民政策であっても、標的にされた国がアメリカに対して報復措置を取る場合、実は関税の悪影響を被るのは、相手国の国民や経済ではなく、価格に関税分が添加されてさらなるインフレに直面する米国民とアメリカ経済になるため、確実に冷え切った国際経済の協調体制が崩壊し、大きな経済危機と様々な安全保障上の危機が頻発する可能性が高まります。

政権発足後、最初の“関税措置の脅し”は、移民の強制送還の受け入れを拒んだコロンビアに対して用いられ、一時は相互に報復関税をかけあうような事態になりましたが、コロンビア側が矛を収め、相互に取り消される事案が発生しました。

今後、同様に関税措置を脅しに用いた外交が頻発するものと思われますが、政権発足前から「メキシコとカナダには25%、中国には最高で60%の関税を課す」という宣言が実行に移され、対象国との間でチキンレースが繰り広げられるような事態になれば、世界経済に対する大きな混乱は避けられないものになると考えられます。

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