衰退が確実となる欧州と持続不可能な状況に陥る中国
そこから取り残されるのが、欧州と中国です。
欧州については、トランプ政権がもし宣言通りにNATOへのコミットメントを著しく下げ、「欧州の安全は欧州各国が自分で守るべき」という態度で臨むことになれば、たちまちウクライナの今後を欧州が背負う羽目になり、かつロシアからの直接的な脅威に晒されることで、安全保障面ではもちろん、経済的にも大きな危機に直面することになります。
欧州独自の安全保障は、フランスのマクロン大統領が提唱する考えではありますが、すでにマクロン大統領はフランスでの求心力を失い、国内の経済運営に大失敗をしたことで、極右勢力の台頭を許し、実質的に創造的な政策を実施できない立場に追い込まれています。
またフランスの盟友(であり永遠のライバル)のドイツも、ショルツ首相の大失態から2月に総選挙という負け戦を強いられ、極右でかつウクライナ支援に非常に否定的なAfD(ドイツのための選択)が大きく票を伸ばすような土台を作ってしまったことで、今後、“自由主義的な国際秩序”の一翼を担うことを誓って生まれ変わったドイツの国内制度が立ち行かなくなる危険性に瀕しているため、どこまで欧州のために踏ん張ることができるかは不透明です。
欧州全体の傾向として、人口の減少と低成長の固定化、膨らみ続ける域内での債務問題の深刻化などに直面し、もしかしたら近々、EUが崩壊する可能性を秘めているように見えます。
そうなると、ドイツは個として生き残る経済を保てるかもしれませんが、あとの国々は深刻な問題に各国内で直面することになりかねません。
ゆえに、国際秩序の担い手にはなり得ない運命が待っており、確実に欧州の衰退が現実になります。
そして状況がさらに深刻なのが、中国です。経済成長は続けているものの、かつての高成長の中国は見る影もなく、底の見えない不動産業界の衰退とそれに引きずられる金融部門の危機、人口の著しい高齢化傾向、そして政治における個人崇拝の異常なまでの高まりという複合的な危機により、国家の運営がままならない危機に陥っているのではないかと思われます。
そのような中でも急ピッチで軍拡、特に核戦力の拡大は進められ、台湾併合という宿願に向けた軍事力の拡大と政策の転換、そしてYESマンを集める極端な人事と粛清の脅しなどの強化などは、すでに中国をグローバル経済から切り離し、孤立を深めさせる方向に押しやっているように思います。
トランプ政権からの厳しい対応と対米対立を見込んで、微笑みの外交で日本や東南アジア諸国、永遠のライバルであるインドなどに接近し、蜜月関係をアピールして、何とか独自の勢力圏を保ち、拡大して、来るアメリカとの対立に備える体制を築こうとしていますが、グローバルサウスの台頭と、周辺国による中国包囲網の形成に阻まれ、今後、高すぎる食糧とエネルギーの対外依存および工業製品の輸出依存型の経済成長モデルが崩壊し、下手するとトランプの4年間さえ国がもたない可能性さえ囁かれる事態です。
ペンタゴンや米軍が「中国は遅くとも2026年には台湾に攻撃を仕掛け、さらにはアメリカの軍事力と肩を並べるようになる」という、防衛予算増額目的の“脅威”を表明したこともありますが、実際にはその中国さえ、このままだと持続不可能な状況に比較的短いタイムスパンで陥る可能性が懸念される状況になってきています。
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