中露と欧州は“崩壊の危機”に直面。なぜトランプが「大失敗」しても日本の安全保障は保たれるのか?

 

無秩序で力がすべてものを言う状況に戻りかねない国際社会

トランプ大統領は、自らの保身と終身権力の座に留まりたいという欲から、矢継ぎ早にいろいろな政策を打ち出し、国内外に大きな混乱をもたらすことになるでしょうが、2年後の中間選挙でもし上下院どちらか(または両院)で共和党が過半数を失うような事態になれば、一気にレームダック化し、政策・方針は悉く停滞し、何もさせてもらえないまま、4年後の大統領選で共和党の候補が負け、そして自身が訴追されるという悪夢を生むことになりかねません。

それを避けるために、ロシア・ウクライナ戦争の停戦も、中東における戦闘の停止も急ぐことになりますし(たとえ中身が全くないものであったとしても)、関税という諸刃の剣を使ってでも、中国に圧力をかけて、一見アメリカに有利になったような合意をさせて成果をアピールすることになると思われますが、その際、「果たして中国がそのアメリカとの面と向かっての衝突」を耐えきれるかどうかは懸念されるところです。

その危険性に自ら気づいているからこそ、中国はその場しのぎと言われても周辺国との関係修復に乗り出し、アメリカと対立構造が強まった際に、そのショックを和らげたいと尽力しているように見えます。

運よくすべてがトランプ大統領の思惑通りに進み、ロシアとウクライナの停戦が成立し、中東にしばらくの安定が訪れ、中国も他国もアメリカ第一主義に貢献し、そしてアメリカ経済が上向くような奇跡が起これば、トランプ氏が就任式で宣言したレガシーが生まれることになり、そしてアメリカ中心の新国際秩序が出来上がって、諸方面で安定が復活することになりますが、果たしてそんなにうまくいくでしょうか?

どこかで大失敗を喫した場合、世界は再び第2次世界大戦勃発時のように無秩序な状況に戻り、力がすべてものをいうような世界になるかもしれません。

その場合、周囲を海に囲まれ、煽っても反抗できないカナダとメキシコという経済圏を持ち、カナダ、メキシコ、アメリカだけでエネルギーも食料も自給できてしまい、かつそれぞれの産業もすべてまかなえてしまうGreat Americaは間違いなく存続し、それと連結するアジア太平洋地域(そして広域アジアとしての中東)も、海上の秩序がそのアメリカによって保障される限りは大丈夫だと思われますが、欧州、中国、そしてロシアは崩壊の危険に直面することになるかもしれません(もしかしたら、欧州、中国、ロシアとその周辺が新たな勢力圏を構築するようなウルトラCがあるかもしれませんが)。

ここまではっきりと分裂する世界がすぐに生まれるとは考えませんが、そのような予測不可能な世界が生まれた場合、どのように立ち振る舞い、生き残っていくのか。

妄想だと批判されるかもしれませんが、今からいろいろなシナリオを考え、具体的な対応策を練っておく必要があると考えます。

何かまとまりのない感じになってしまったような気がしますが、以上、今週の国際情勢の裏側のコラムでした。

(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2025年1月31日号より一部抜粋。全文をお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録ください)

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