全世界から注目されているトランプ大統領の新しい政策。その中でも関税政策に関しては二転三転を繰り返しており、世界中のメディアで「この先どうなるのか?」と話題になっています。メルマガ『j-fashion journal』の著者でファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんは、トランプ大統領の関税政策の危うさを指摘。中国と比較したところ、共通点の多さから「本質的な欠陥」が見えるとしています。
新しいトランプ関税の危うさ
1.米国と中国の類似点
トランプの関税政策は、製造業再興を目指して高関税と補助金で企業を動かそうとするが、米国と中国の比較からその本質的な欠陥が浮かぶ。
まず、両者に共通するのは、個性重視とトップダウンの意思決定スタイルだ。トランプは「俺が決める」というリーダーシップで関税を押し進め、中国も習近平の下で中央集権的な政策を展開してきた。米国ではトランプの「米国第一」の号令が全てを支配し、中国では党の指令が産業を動かす。
でも、このトップダウンアプローチは、日本のチームワークやボトムアップの思想とは対極にある。日本の製造業がトヨタやホンダで世界をリードしたのは、現場の改善提案や協働がイノベーションを生んだからだ。トランプの政策には、こうした「下から育てる」視点がなく、製造業の持続的な成長が疑問視される。
2.人材育成発想の欠如
さらに、人材育成の欠如がこの問題を悪化させる。
中国は国家主導でエンジニアを大量育成し、人材供給を確保してきたが、トランプの政策には教育や職業訓練への投資がほぼ見られない。米国の製造業労働者は高齢化し、若手技術者が育たない中、トップダウンで工場を増やしても、それを支える人的基盤がない。
一方、日本は企業内訓練や学校教育で技術者を育て、チームワークで産業を強化してきた。
トランプの「俺が金を出せば解決」という発想は、中国の補助金頼みと似て、人材の質を軽視する危うさがある。
3.中小企業の重要性
中小企業の視点でも同様だ。中国は大企業を支える中小サプライヤーを国策で育てたが、トランプはGMやフォードに偏重し、中小企業支援が手薄だ。米国の製造業では、中小企業がサプライチェーンの6割以上を担う(2025年推計)のに、関税でコストが上がれば彼らが疲弊する。
日本のボトムアップ型製造業は、中小企業が現場で技術を磨き、大企業と連携して柔軟な産業網を築いた。トランプのトップダウンでは、中小企業の声が届かず、産業全体の土台が弱まる。
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