最近、証券口座が乗っ取られ、知らないうちに株の売買がされた結果、多額の負債を負わされるという事件が話題になりました。こうした巧妙なやり口の返金詐欺が多発しているようです。今回のメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』では、著者でジャーナリストの多田文明さんが、これらの事件の詳細と気を付けるべきポイントについて紹介しています。
証券口座のっとり事件の全貌がみえてきた。そしてもう一つ気をつけること
今月に入り、各社の証券口座がのっとられて、多くの人の口座で知らないうちに株の売買がなされて、多額の負債を背負わされる事件が起きています。犯罪グループは、あらかじめ安く買っていた株の値を釣り上げてから売るなどの行為をして利ざやを稼いでいたとみられています。
金融庁の発表では、2025年4月16日現在の約3か月間の不正アクセスは、3312件で、不正に取引されたのは1454件で、売却金額は約506億円、買い付け金額約448億円です。そして中国株や香港株を売買しています。おそらく大手の株ですと、思い通りの株価の操作ができませんので、人々があまり取引をしない株を狙って犯行に及んでいたと思われます。この行為は、3月、4月中旬までに多く行われており、用意周到に準備をして犯行に及んだかがうかがわれます。
日本証券業協会によると、証券会社58社が不正ログインをされないための対策として、多要素認証を必須にするとのことです。
多要素認証とは、知識要素である、ログインパスワードに加えて、SMSでのコード受信や指紋などの生体認証のうち二つ以上の要素を組み合わせることです。
犯罪者を寄せ付けないための大事な取り組みですが、注意しなければならないこともあります。
この事態を犯罪グループは、すでに想定しているということです。
この機に乗じて、次の詐欺をしかけてくる可能性があります。
実際に、この状況に付け込むような、フィッシング詐欺メールが送られてきています。
「昨今、金融サービスを標的とした第三者による不正利用やアクセス試行が多数報告されております。お客様の資産を安全に保つためにも、現在のご利用環境を確認・記録する取り組みを実施しております」
「近年、マルウェアや不正アクセスの増加に伴い、お客様の大切な資産をお守りするため、デバイス認証、およびスマホ認証(FIDO)」の設定をお願いしております」
と証券会社をかたって認証方法の強化をメールで促してきます。
もちろん、この先に待っているのは、偽サイトです。二段階認証を突破する手法はすでに出てきていますので、この機に乗じて、さらなる犯罪行為を講じてくることが考えられますので、充分に警戒をしてください。
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返金詐欺に遭う前段階で、詐欺を見抜くポイント
返金詐欺で被害に遭っている方が多くいます。
返金詐欺の巧みな手口については、ヤフーニュースにしていますので、参照してください。
「いつ届きますか?」と連絡した人がだまされる 巧妙な返金詐欺のワナ だまされないために知っておくこと
被害に遭った50代男性は「返金をしてもらえるのなら」と思い、相手のいうままに応対した結果、逆にお金を振り込んでしまっています。
この手口は還付金詐欺によく似ています。
還付金詐欺は「お金を戻す」といわれてATMに誘導されて、操作方法を携帯電話で指示されながら、相手にいわれた番号を押すことで、逆にお金を振り込まされます。
返金詐欺でも「お金を戻す」といわれて、LINEのビデオ通話で操作方法を指示されて、番号を押して、お金をだまし取られる結果となっています。
還付金詐欺では、ATMの操作になれていない人が被害に遭いますが、返金詐欺ではキャッシュレス決済になれていない人がだまされます。
記事にはしていませんが、50代男性は怪しむ点は「最初にあった」といいます。
通販サイトから5700円で購入商品を注文した時の支払い方が、電子マネーのビットキャッシュでした。
「銀行の振り込みではなく、通常と違っていました。ここで怪しめばよかった」と話していますが、どうやら、支払い方の一択しかなかったようです。
これは詐欺サイトの特徴の一つですので、知っておいて下さい。
様々な偽通販サイトにアクセスしてきましたが、クレジットカード、銀行振り込みなどの支払方法を最初に提示しておきながら、結局、今回のような電子マネーでの購入や銀行振り込みのみといった一択しかない状況が多くみられます。
現在「他の支払い方法は選べません」として、横棒がついて消されていますので、そうしたサイトだった場合、偽通販サイトの可能性が高いので、それ以上は進まないようにしてください。
4月28日、詐欺グループによって不正に利用された疑いのある口座情報を金融機関同士で共有する仕組みを政府が検討すると、報じられました。ようやく詐欺を本気で止めようとする国の取り組みもみえています。
それにしても、なぜここに至るまで、すみやかなる不正対策を取らずにきたのか。なぜ銀行側は、不正口座の共有の取り組みをおざなりにしてきたのか。その辺りの原因もはっきりさせる必要があります。
今後、警察が架空の名義の口座を作り、被害金の流れを追ったり、振り込まれたお金を引き出されないようにして回収する捜査方法も検討していくとのことで、被害を広げさせないための環境が、徐々に構築されていっています。
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