近年やたらと目にする陰謀論。特に人為的な二酸化炭素の排出により地球温暖化を引き起こしているのではないかとする「人為的地球温暖化」の主張などは長年の間拡散されています。なぜ、このような陰謀論を信じてしまう人がいるのでしょうか? メルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』の著者で生物学者、CX系「ホンマでっか!?TV」でおなじみの池田教授は今回、オカルトから科学、そして陰謀論に結び付いてきたのはなぜかという疑問について語っています。
オカルト、科学、陰謀論
オカルト、科学、陰謀論と続けば、何やら怪しい三題噺みたいだが、この三つ、結構繋がりがあるのだ。私はかつて『科学とオカルト』(PHP新書)と題する本を書いたことがある。1999年の初版だから、26年前のことだ。まだこの頃は陰謀論という語は一般的ではなかったので、この本には、オカルトと科学とカルトの関係しか書かれていない。本稿では、オカルトに端を発した科学が近年になって陰謀論に結び付いてきたのはなぜかという話をしてみたい。
『科学とオカルト』にはこの二つの違いについて、「オカルトは公共性を持たない信念体系であり、科学は多少とも公共性を持つ理論である」と書いてある(自分で書いたんだけどね)。オカルトは極端に言えば「一子相伝」の秘術であって、他人には真似ができないところに価値があったわけだ。秘術を公開したところで、特許もなければ報奨制度もない世界では、「門外不出」にしておいた方が得なのだ。
しかし、19世紀後半になって、オカルト的な技術を担っていた特権階級やギルドが崩壊し始めると、技術をどのように伝承するかが喫緊の課題となってきた。技術者養成学校が設立され、技術は、誰も真似のできない秘術から、一定のマニュアルに従えば、誰もが真似のできるものへと変貌した。オカルトは公共性を獲得して科学(技術)となったのである。それは時に莫大な利益をもたらし、それと共に、新しい技術を発明した人や、今まで誰も知らなかった物事を発見した人には、名誉と富が与えられるようになったのである。
そうなると、発明や発見をした人は、そのことを認めてもらうためにそれを公表するようになる。そのために専門のジャーナルが発行され、一番乗りを競うようになる。重要な発明や発見には追試が行われ、再現可能かどうかが確かめられる。公共性とは別言すれば再現可能性のことだ。一時世間を騒がせたSTAP細胞がインチキだということがわかったのは、再現が可能ではなかったからだ。
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