人為的地球温暖化論は科学理論としてはいかがわしいと明確に述べた人は1996年当時の日本にはあまりいなかったと思うが、それでもこの時点では、インチキだと書いていないので、もしかしたら、本当かもしれないと思っていたのだ。次の年の1997年に出版した『生物学者』(実業之日本社)には、人為的温暖化は、ほぼ正しいというスタンスの記述がある。
2002年に社会学者の薬師院仁志が『地球温暖化論への挑戦』(八千代出版)を出版する。この本は日本で初めての本格的な人為的温暖化懐疑論の論考で、私もこれを読んでから様々なデータを調べはじめ、人為的温暖化は真っ赤な嘘だと確信したわけだ。それで、2006年に『環境問題のウソ』(ちくまプリマ─新書)を書いた。現在のところ、人為的温暖化論への懐疑論者として日本で最も信頼できる渡辺正(東大名誉教授)も「地球温暖化論に違和感を覚えつつ当時はまだ本質が見抜けていなかった私自身、同書(註:薬師院の前記の本)から教わったものは多い」(『「地球温暖化」狂騒曲』丸善出版2018)と述べているので、多くの日本人に人為的地球温暖化に関する蒙を啓いた薬師院の功績は多大である。
人為的地球温暖化論がインチキであるのは、自分でエビデンスを調べればすぐにわかると思うが、多くの日本人は、人為的温暖化論は正しいという20世紀掉尾から始まったマスコミの宣伝のおかげで、自分で全く調べもせずにこの理論を信じている。一度信じた(洗脳された)ことをひっくり返すのはとても難しい。多くの人は自分の信じたことに都合がいい言説だけを受け入れ、反対の言説を無視する傾向がある。エビデンスもヘチマもあったものではない。これは「確証バイアス」と呼ばれ、人間の性でもある。不幸なことに人為的温暖化を支持する意見(ウソの意見)は巷に溢れているので、多くの人々は深く考えることを放棄して、人為的温暖化論を支持する言説を素直に受け入れているーーー(『池田清彦のやせ我慢日記』2025年5月9日号より一部抜粋。続きはご登録の上お楽しみください、初月無料です)
この記事の著者・池田清彦さんのメルマガ
image by: Shutterstock.com