選択肢2:「日本語は維持しつつ、移民を大量に受け入れる」パターン
2つ目の選択肢は、「とにかく日本語は維持するが、移民は劇的に導入する」というものです。
移民は人口の20%ぐらいまで入れる、その代わりに日本語の能力試験を行って失格になると在留期間が切れてしまうなどの規制をかける。そのようにして、日本語圏を守る――という施策です。この選択肢を取った場合、わが国はどうなるでしょうか?
何も考えないで、なし崩しに進めた場合、上記に加えて「日本語の徹底は大甘」になってしまうと思いますが、いずれにしても、この「日本語維持+移民多め」という選択肢は、わが国にとって悪手になりそうです。
まず、全世界に移民予備軍がいるとします。具体的には自国を出て、より多くの収入を得たいというグループです。その多くは、英語を学んで英語圏を目指します。例えば、目指す先としては、北米、EU、東南アジア、南アジアといった地域があります。中東もその中に入ろうとしています。
仮に日本が「日本語維持の移民政策」を取った場合には、移民予備軍の中の「英語圏を目指さないグループ」が母集団になります。その集団には「日本のカルチャーなどに魅せられて、日本が特に好き」という人もいるかもしれませんが、もとが「生活のためにどうしても移民したい」というグループですから、「英語圏を目指さない、または目指せない」けれども「日本文化は好き」という人は非常に少なくなると思います。
そうなると、とにかく「英語圏には行かないし、行けない」グループが移民の母集団になるわけです。さらに今後、日本円がどんどん価値を下げていって、日本の人件費が劇的には上がらない場合には、教育水準や職業技能などの面で劣るグループだけが日本を目指すことになります。
そうなるとこの移民は、いったん入国したとしても、日本語の能力審査は辛うじてパスするだけで、日本文化への関心は薄く、スキルも薄いので低賃金の仕事を担う――という形での社会参加になります。
結果的に、彼らは母国語と母国の文化を強く維持し、自分たちのコミュニティを形成するので、日本社会の分断が進むことになります。これが一定程度以上進むと、社会の安全維持コストなどが上昇するとともに、日本人による移民排斥運動なども起きて、社会不安が生じる事態ともなりかねません。(次ページに続く)