選択肢3:「日本を準英語圏にして、英語話者の移民を受け入れる」パターン
そこで、3つ目の考え方として、「ビジネス言語を中心に日本全体を準英語圏入りさせて、移民も英語話者を優先し、そのうえで日本文化と日本語の習得も義務付ける」という方法があります。
つまり英語圏の国として、英語で高等教育を完了した人は日本に入れる、ただし日本語と日本文化の理解は必修とする――という制度設計です。
別に欧米圏からの移民でなくても構いません。アジアからでもいいので、とにかく英語話者を入れ、英語話者が活躍することで、日本経済もよりグローバル経済にアクセスできるようにするのです。
こうすると何よりも、教育水準と生産性で一人当たり先進国レベルの「稼ぎ」を持ち込んでくれることから、ダイレクトに日本経済への寄与が期待できます。
具体的には、金融、法務、コンピュータソフト、中の上の製造業管理監督などの人材です。場合によっては、特に日本に近い英語圏の諸国とは、相互に労働許可の開放をしても良いかもしれません。
このパターンでは、移民の増加によって各国語のバラバラなエスニックのコミュニティができたり、治安維持に協力しない層が生まれるなどの壊滅的な現象は起きにくいと思います。
ということで、「人が少くなるぶんを徹底して機械が担う、という壮大な社会実験を行う」のか、それとも先進国経済を維持するため、「先進国レベルの生産性を持っている英語話者を大量に迎え入れる」のか、日本が現実的に取り得る選択肢はこの2択になるのではと思います。
なし崩し的に、人が足りないからということで「建前は日本語だけの社会」を維持しつつ、実際は「英語圏に向かわない(向かえない)層の移民」をジャンジャン入れるというのは、国家百年の大計として最も避けなければならない大悪手だと考えるのですが、いかがでしょうか?
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