日本車も無視できない?中国の自動車業界で使われ始めた「得房率」が世界で新たな表現方法になる日

Berlin,,Germany,-,August,20,,2022:,Car,Detail,Xpang,Motors
 

中国の新興EVメーカー・小鵬(Xpeng)が新型EV「G7」で掲げた「得房率」という言葉。日刊で中国の自動車業界情報を配信するメルマガ『CHINA CASE』では、なぜ日本では聞き慣れない「得房率(キャビン<車室空間>占有率)」という言葉を使うのかという基本的なところから、未来の車づくりにこの指標が及ぼす影響についても語っています。

改めて得房率(キャビン占有率)を考察、日本では不使用も中国で多用される訳は?

中国新興メーカー小鵬(Xpeng)が新型EV「G7」を発表した際に、改めて使用した得房率(キャビン占有率)。

得房率については、以前までに触れているが、今回、まず第一に、G7の公称88%が少し考えづらいこと、第二に、そういえば日本などで類似の指標はあるのか、と疑問になって調べてみた。

そうすると、得房率を軸に、日中の車室空間に対する現状のとらえ方の違い、中国では車室空間をどうとらえているのか、よりはっきりと見えて興味深いものになった。

そもそも得房率とは?

「得房率」という言葉は、もともと中国の不動産業界で使われていた概念で、建物の延べ床面積に対する“実際に居住・利用できる室内空間”の比率を示すものだ。

たとえば、あるマンションが100平米の延べ床面積を持ち、そのうち住居空間として有効活用できる面積が80平米であれば、得房率は80%となる。

この概念が、近年中国の自動車マーケティングでも頻繁に登場するようになってきた。ただし、計算方法に業界基準はなく、言葉だけが独り歩きしている状態ではある。

得房率の多用化

その背景にあるのは、車を単なる「移動手段」ではなく「生活空間」として捉える価値観の変化である。

特に理想(Lixiang)をはじめとする新興EVメーカーは、三列SUVやMPVを「走る家」と見なし、車室空間の広さと快適性を訴求する。

その際、「得房率」=車体サイズ(全長・全幅・全高)に対する実際の居住空間(主に1~3列座席エリアの立体空間)を数値で可視化し、高得点を得たモデルを「空間効率のよい良車」と位置づける。

88%は考えづらいが

実際、G7の得房率は88%と宣伝され、競合車(通常60~70%)との差別化ポイントとして強調されている。

この数値の根拠は不明だが、これは単に“広い”という曖昧な表現ではなく、明確な数値で「この車はムダが少なく、空間価値が高い」と説明する、中国らしいロジカルかつ実用主義的なアプローチである。

日本ではどうなっている?

一方で、日本ではこの「得房率」に相当する概念は、存在しないわけではないが、あくまで設計者や評論家の語る“パッケージングの妙”という技術的・設計的評価にとどまる。

言い換えれば、ユーザーに向けて定量的に示されることはほとんどない。

国産車では「室内長×室内幅×室内高」が一応の指標として使われているが、それが「車体寸法に対してどれほど効率的か」を明示することは稀である。

車に対する文化的な期待値の違い

この違いは、車に対する文化的な期待値の違いにも由来している。

日本では、車は「運転して楽しい」「静かで快適」「仕立てが丁寧」といった“感覚的価値”を重視し、空間の広さはあくまで相対的な印象として語られる。

家族で使う車であっても「何人乗れるか」より「どう座ると快適か」が強調され、数値で空間効率を訴える発想にはあまり至らない。

一方の中国では、都市化の中で空間の希少性が高まるにつれ、車においても「空間をどう使い切るか」が重要な評価軸となり、その効率性を“住宅用語”で測ろうという動きが自然と生まれた。

とくにMPVやSUVといったファミリーユースの車においては、後席やラゲッジの実用性、フルフラット性、乗降性などが「空間活用力」として数値化され、住宅の「間取り」と同様に比較されるようになっている。

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