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イランの核開発を加速させた可能性も。トランプ「14発のバンカーバスター弾」は“イランの夢”を本当に打ち砕いたのか

武力応酬の泥沼化が懸念されていた状況が一転、各国メディアが「電撃的」と報じたイランとイスラエルによる停戦合意。トランプ大統領は米軍によるイラン核施設への攻撃が戦争を終結させたと強調していますが、果たして中東地域に和平は訪れるのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、イランが停戦を受け入れた背景を考察。さらにその裏に渦巻く中ロ等の「思惑」を分析・解説しています。

※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:世界に和平は訪れるのか?-渦巻く各国の思惑と狙いが生み出す闇

「参ったふり」に「良い人ヅラ」。渦巻く各国の思惑がまた遠ざける世界の和平

「われわれは中東の姿を変える」

これは2023年10月7日のハマスによるイスラエルへの奇襲攻撃と人質事件が起きた2日後の10月9日に、イスラエルのネタニエフ首相が宣言した内容の一部です。

地域における圧倒的な軍事力と諜報能力を誇るイスラエルは、ガザ地区への苛烈な報復攻撃とハマス壊滅作戦、人質奪還作戦を皮切りに、閣内の極右勢力の要求に応えてヨルダン川西岸地区のユダヤ人入植地の拡大にも勤しんでパレスチナとの完全なる対立を選びました。

その後、イスラエル国家と国民に対する長年の恐怖と脅威を排除するためとヒズボラ掃討作戦も実行し、アサド政権の崩壊の隙を狙ってシリアにも手を伸ばしました。

そしてついに中東における非常にデリケートなパワーバランスを保ってきた宿敵イランに対して攻撃を加え、アメリカによるバンカーバスター投下という軍事的な支援も得て、イランに圧倒的な軍事力の差を見せつけ、まさに中東におけるイスラエル一強状態を確立させました。

しかしこれはまた同時に、周辺国からの不信と警戒感を高め、今後、アラブ諸国によるイスラエルに対する対応に大きな変化が生まれる可能性が強まってきています。

アメリカのトランプ大統領からの“説得と要請”に応える形でイスラエル政府はイランとの停戦に合意し、イランも仲介者であるカタール政府を通じて受け入れる旨、通告したことで一応“停戦”は継続していますが、その停戦内容については明かされておらず、停戦合意がいつまで遵守されるのかは不透明です(イランを慕うフーシー派は先日アメリカとの相互攻撃の停止を約束していますが、対イスラエルについてはそのような合意はなく、もしフーシー派がイスラエルを攻撃したとして、それがイランの影響を受けたものとイスラエルやアメリカが非難するようなトリガーが引かれ、イスラエルがイランを攻撃するということは大いに考えうるシナリオです)。

中東地域の混乱は収まるどころか、イスラエルとイランのパワーバランスの差が歴然とし、かつ経済活動への集中を是とするサウジアラビア王国やアラブ首長国連邦、カタールなどとしてはイスラエルの影響力の助長は好ましいことではなく、今後どのような働きかけをイスラエルに対して行うのかは要注目です。

ただ6月24日に「イスラエルは歴史的な偉業を成し遂げ、世界の並み居る超大国と肩を並べる地位に自身を引き上げた」という発言がネタニエフ首相にとって行われましたが、これは中東アラブ諸国にとっては限りなくレッドラインに近い警戒レベルの発言と捉えられ、今後のイスラエルの振る舞いによっては新たな戦端が開かれることも考えられます。

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核保有ドミノ一歩手前まで来てしまった国際情勢の緊迫度

そうならないための最後の砦が、イランが重ね重ね検討している【NPT(核不拡散条約)からの脱退の脅し】がただのブラフで終わることです。

IAEAに対する協力を停止することを先日イラン政府は公式に通達していますが(査察など)、NPTの枠組みについては、その加盟国として振舞うことが欧州からの支援の条件であったことと、さらには中国が仲介して実現したイランとサウジアラビア王国などとの関係改善と外交関係の樹立のバックボーンこそが、イランがNPTの枠組みの中で活動すること、つまり原子力の平和利用の枠内にとどまり核兵器の開発には踏み出さないという共通認識の存在です。

もしイランがNPT脱退を決断した場合、この条件が崩れ、それはかつてのように周辺国による核武装という核軍拡の道を一気に転げ落ちることになりかねません。

恐らく豊富な資金を持つサウジアラビア王国は自国で開発せず、核保有国から(例えばロシアや中国)購入して即配備することが可能でしょうし、アラブ首長国連邦も同じ道を辿る可能性があります。

以前と唯一違うのは、対イラン警戒に加えて、対イスラエル警戒のための核保有という理由の存在でしょう。

このような核開発・核保有ドミノが起きないことを切に祈りますが、実は私たちが直面している国際情勢の緊迫度はその一歩手前のところまで来てしまっています。

そしてその命運を決めるのが【本当にアメリカがイランに投下した14発のバンカーバスターはイランの核開発の夢を打ち砕いたのか?】という“戦果”ですが、完全なる破壊を成果として訴えるトランプ大統領と政権幹部の主張とは違い、米国国防情報局(Defense Intelligence Agency)の分析ではファルドゥのウラン濃縮施設の遠心分離機はほぼ無傷で、かつ60%程度まで濃縮済みのウランはアメリカによる攻撃前に運び出され、その行方・在処は掴めていないのが現状とのことで、そうなった場合、immediate term (近日中)の核保有は遠のいたかもしれませんが、イランの核開発を狙いとは逆に加速させた可能性があります。

かつてアメリカのブッシュ政権から悪の枢軸呼ばわりされた国のうち、アメリカによる攻撃に晒されたのはイラクとイランで、すでに核兵器を保有する北朝鮮に対する米軍による攻撃が行われていないという“偶然”をもとに、イラン国内で核保有を求める声が高まる可能性は否定できないのではないかという分析がまた出始めています。

「アメリカによる攻撃はイランの核開発の可能性の芽を摘めてはいない」という分析結果が信頼できるものなのだとしたら、イランが行うだろうと考えられる戦略は【イスラエルとの停戦を受け入れる】こと以外に、参ったふりをして【アメリカとの核協議に応じて、核開発能力の回復に向けて時間稼ぎする】という、北朝鮮がこれまでに取ってきた戦略に沿った対応を取ることではないかと考えます。

イランにとって重要なのは、ウラン濃縮に関する知見と技術を維持・向上し、NPTの枠内で平和的利用のための原子力の運用を継続する姿勢を保つことですが、ここで注意しているのは、“平和利用”である限りは、どこにもウラン濃縮を禁じる条項はなく、イランは、オバマ政権下のアメリカと当時の欧州各国と合意したイラン核合意内で濃縮を低レベルに保つことにコミットしたものの、その合意はトランプ大統領によって破壊されたため、イラン政府側のロジックからすると【何一つ、イランのウラン濃縮に対する成約は存在せず、これは主権国家としての権利である】という正当化が可能になるということです。

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中東の混乱に乗じて一気に攻勢をかけたプーチンの魂胆

イラン核合意の一角を担うフランス政府は、かつてブッシュ政権下のアメリカがイラクに対する攻撃を加えた際に安保理で立ちはだかったドミニック・ド・ヴィルパン仏外相の態度と同じく、マクロン大統領が「通告も行わず、かつ国連安保理による決議もない中で行われたアメリカ軍によるイラン攻撃は明らかな国際法違反であり、決して支持できない」と発言し、“法の支配”の遵守を謳うことで、何とかイランに核開発の加速を思いとどまらせようとしているように見えますが、残念ながら肝心のイラン政府の目はフランスではなく、交渉相手のアメリカと、イランの後ろ盾である中ロに向けられ、米・イスラエルによる攻撃で多大な被害を受けたにもかかわらず、混乱の国際情勢における台風の目としての存在感を増しているように、私には見えてきます。

イスラエルとイランが合いまみれた中東情勢の混乱に乗じて、一気に攻勢をかけたのがプーチン大統領のロシアです。

イランに対するプレゼンスを高めるためにアメリカ軍はウクライナ対応の部隊を中東に移動させたため、ウクライナ対応にあたるアメリカのプレゼンスが低下し、欧州軍は実質何も動かないことが分かっているため(ちょうどNATO首脳会議の準備もあり、アメリカをいかにNATO側に留めるかに気を遣っていたため、対ロ・ウクライナの集中力が必然的に落ちていた)、一気に苛烈な攻撃をウクライナの首都キーウに浴びせかけ、そのような中でもキーウをあけてオランダに向かったゼレンスキー大統領に対するウクライナ国民の不快感を煽る作戦を実行しました。

多くの被害と死者を出しウクライナの継戦意欲を削ぐ狙いがありますが、同時に内部からウクライナを崩壊させる機会を捉えた作戦という観点もあります。

オランダで開催されたNATO首脳会談の場でゼレンスキー大統領と会ったトランプ大統領は「パトリオット・ミサイルを含むさらなる軍備の提供の可能性」に言及し、プーチン大統領に対する圧力をかけていますが、当のプーチン大統領は全く気にしておらず、逆に「アメリカは国際法違反であることが明確な対イラン攻撃を強行したことをどう説明するつもりか」と揶揄してみたのですが、これ、聞いているとおかしくありませんか?「そもそも明らかな国際法違反を侵してウクライナに侵攻したのは誰だったのか」という点を完全にスルーしていますよね?

残念ながら米ロ間で行われているのは、完全な政治上の茶番劇で、それぞれが自国の実力をひけらかし、また力による外交を推し進めています。

以前、トランプ大統領とプーチン大統領が電話会談した際に、トランプ大統領がロシアにイラン核問題での協力を依頼する代わりに、ロシアによるウクライナへの攻勢については、しばしアメリカは静観する旨、合意されたようですが、今週行われた対イラン攻撃については、どうもロシア側は動きを掴んでいた様子で、対米非難の文言をかなり入念に丁寧に準備していたと思われます。

ロシアはイスラエルがイランを攻撃しても、アメリカがウラン濃縮施設を攻撃しても、直接的に介入できなかったとよく報じられていますが、ファルドゥの地下核施設に貯蔵されていた濃縮ウランがアメリカの攻撃前に運び出されていたと思われる中、その行き先の一つがロシアの息のかかった場所である可能性が高いとされています。

イランが濃縮に成功しているウランについては守り、かつアメリカの出先を挫くために、メドベージェフ氏に「必要とあればロシアはイランに核を提供することも可能」というあり得ない話までさせて緊張を高めています。

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「良い人ヅラ」をして着々と超大国化の道を進む中国

イスラエルとイランの戦争が本格化し、せっかく築いてきた中東および東アフリカでのロシア権益が損害を受けることは避けたいという基本的な一線は守りつつも、国際社会の目を中東に惹きつけるためにいろいろな工作を行っていると思われます。

その一つが新生シリアにおける暫定政権による国内キリスト教徒への迫害という事件です。実はこの実行犯が誰なのかはまだはっきりしていませんが、これにより、欧米、少なくとも欧州各国の目がそちらに向けられ、対ウクライナの支援に対する注意が削がれる事態が実際におきました。

新生シリアの現政権は、アサドを追い出したロシアにとっての敵であり、イスラム過激派の顔を持つ現政権をシリアから追い出すための口実と材料を作っているように見えます。

同様の狙いは中国政府にも通じるかと思われます。今回、イランの核施設を破壊するために14基のバンカーバスターを搭載したB2戦略爆撃機群が大西洋を18時間かけて飛行したのと時を同じくして、表向きはカモフラージュと言われた別のB2戦略爆撃機群が太平洋を横断してグアムに配備され、中国と北朝鮮の睨みに用いられているようです。

「何か怪しい動きをしたら、今回のイランへの攻撃と同じく、いつでも狙いに行くよ」というメッセージを北朝鮮と中国に送っているものと考えますが、アメリカとしては、かつてクリントン政権以降スタートし、オバマ政権で決定的になった“複数紛争への対応態勢の放棄”ゆえに複数の紛争をフルに対応することが出来なくなっているため、今、中東とウクライナにかかっている中、中国対応に手が回らないのが実情ですから、少なくともB2戦略爆撃機群を見せておくことで抑止力として用いているのではないかと考えます。

これは翻ると、中国へのフル対応はできていないのが現状で、来年には太平洋地域における軍事力がアメリカのそれを超えると言われている予測を実現し、絶対的な中国の覇権をアジアに築き上げるためには、アメリカの注意がウクライナやイスラエル・イランに惹きつけられていることがとても大事で好都合であることが分かります。

それもあり、国連安保理の緊急会合をよく呼びかけ、アメリカやイスラエルの蛮行を論って国際社会の目をそちらに向け、中国が進める影響力の拡大から目をそらす外交戦略に勤しんでいます。

北朝鮮にロシアの影響力が拡大していることには不安と危機感を抱いているようですが、ロシアに対してウクライナ戦での外交的・経済的、そして間接的な軍事支援の供与という餌をぶら下げて、ロシアがあまり北朝鮮に入り込み、北朝鮮が中国をスルーする事態をさけるための策は打ってあるようです。

そして何よりも、核戦力となった北朝鮮を中ロの陣営に組み込み、ロシアが北朝鮮軍をウクライナ戦の前線で実践訓練を積ませるアレンジを行い、戦力・戦術的なキャパシティを高めることで、有事の際に中ロと北朝鮮のトライアングルでアメリカとその仲間たちによる“台湾有事”に対応するための体制づくりを着々と進めているみたいです。

これを成功させるには、まだ欧米の注意力が中国に向けられては困るわけで、ゆえに中国は安保理のP5の一角という立場も上手に利用して、“いいひと”面をして着々と超大国化しようと目論んでいます。

中国はここ最近、仲介業を積極的に営み、イランとサウジアラビア王国などとの間を取り持ったり、パレスチナにおける諸勢力を結集させてUnited Palestineをつくったりしていますが、それぞれを見て分かるのは、中東地域における対イスラエル・対アメリカ・対欧州の勢力に対する対抗軸を形成して、中東地域における影響力の拡大を行っています。

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「第2の建国の父」の名誉を残すというネタニヤフの野望

ちなみに、皆さんもご存じの通り“中東地域(Middle East)”のもう一つの呼び名はWestern Asiaであり、ここもまた“アジア”の一部というのが、中国外交における共通認識となっているため、ここは“当たり前に”アジアとして中国の影響圏になくてはならないと考え、武力ではなく、経済力と技術力によって一大勢力圏を形成し、中東地域には、欧州にもアフリカにも繋がる大事な“アジアの西端”の役割を果たしてもらおうと考えているようです。

そこに楔を打ちたい、いや、ちゃんと見ているぞというメッセージを伝えたかったのが、今回のアメリカによるイラン初爆撃の別の顔という分析もできるかもしれません。

イランの核開発を数週間または数か月ほど遅らせる効果はあったかと思いますが、実際にはアメリカの爆撃はイランのあくなき核への欲望、言い換えると自国の体制保持に対する欲望を挫けさせることはなく、宿敵イスラエルが頻繁に使う正当化の理由である“自国の安全保障確保”と“イランとイラン人の生存の確保”のためには、イスラエルとの緊張関係はイランにとっては必須条件で、それを際立たせるためにはアメリカによる攻撃を受け入れることも一案と考える、こちらもまた、国民を犠牲にした(盾にした)危険な政治ゲームと言えるかもしれません。

トランプ大統領によると近日中にアメリカとイランの核問題に対する協議が開催されるようですが、どのような話し合いが行われ、イランがどのような対応を取るのかが見ものです。

一応、アメリカの攻撃とイスラエルとの停戦を受けて、アラグチ外相はしおらしい感じで話を聞くことに徹するでしょうが、あまり爆撃前とポジションは変わっておらず、主眼はいかに時間を稼ぐかに注がれているように考えます。

それはイランの核への飽くなき探求をたすけるだけでなく、同時に中ロの狙いにも貢献するという事態を作り出すのではないかと見ています。

そして恐らくトランプ大統領もそのことは薄々分かっており、国内外での成果づくりのためにイランとの緊張関係が必要で、かつ“核兵器”という世界的な危機に立ち向かうリーダーというイメージを長くキープするにはうってつけの題材と見ているように、周辺の言動をベースに判断すると、考えられます。

そしてイスラエルのネタニエフ首相は、イランとの緊張と融和を繰り返し、そこには常に危機があるというイメージづくりをし、同時に周辺国に対して軍事的な圧力をかけ、支配地域をじわりじわりと拡げることでユダヤ人国家としてのイスラエルのリーダーとしてのイメージも強め、そして自身に振りかかる一切の疑惑や訴追の危機を跳ねのけつつ、本当に中東地域における一強状態を確立して、後世に“第2の建国の父”という名誉を残こすという野望が見え隠れしてきます。

今回、イランとの停戦合意はトランプ大統領の顔を立てるための暫しの協力に過ぎず、何かしら偶発的な出来事を見つけ出して、宿敵イランのせいにしたうえで、誰も非難しない状況下で一気にイラン攻撃を強める魂胆が見えています。

次は恐らくハメネイ師の暗殺計画の実行かもしれませんが、これまでの革命防衛隊の幹部に対する攻撃とは違い、国家元首に手を出すことはイランのレッドラインを越えることに繋がりかねず、場合によっては一気に本格的なイスラエルとイランの戦争に発展し、この時、まだイランがNPT脱退というアラブのレッドラインを越えていなければ、イランにアラブ諸国が加わり、背後から中ロが絡む激しい戦いが中東地域・西アジアを襲うことになりそうです。

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問題の根本解決のためわずかながら見えてきたアプローチ先

今、その地獄が起こらないための微妙なバランスと落としどころを米中ロそして時々欧州が、アラブ諸国やイスラエルの考えなども取り入れつつ練っているようです。

一度は距離を置いたカタール政府は、今回のイスラエルとイランの仲介を“成功”させたことで、イスラエルとのより密接な対話チャンネルと雰囲気が築かれたと判断し、ガザ問題についてのイスラエルとハマスの間の仲介・調停に復帰しましたが、ドーハを舞台にしたどろどろとした国際政治劇の変容を間近にして複雑な心境と、国際的な調停のハブになるという夢の実現のためにギアをあげているようです。

トルコはカタールや少し重心を再びイスラエル絡みの案件に移したことを受け、カタールが行ってきたロシアとウクライナの仲介役を引き受け、イスタンブールプロセスを再稼働し、ロシアとウクライナの当事者間での直接的な話し合いができる環境を提供していますが、その背景には【トルコを再び世界の中心に戻す】という政治的な狙いのほかに、【すべての現在進行形の紛争がトルコを境にまだ繋がっておらず、紛争の連鎖を防ぐことが出来、かつ防がないといけないのはトルコ】というイメージを調停コミュニティ内で広め始めています。

正直アメリカがイランのウラン濃縮施設をバンカーバスターで爆撃するとは考えていませんでしたが、それ以後、いろいろと協議し、分析を突き合わせる中で、これまでお話ししてきたような内容が浮かび上がってきました。

「またさらに世界は複雑になったなあ」と感じていますが、“根本”解決のためにどこにアプローチすればいいのかが少し見えてきたような気がしています。

それが何なのかは今、明かすことはできませんが、ちょうど紛争調停案件に携わることになるため、そのアイデアを試してみたいと思っています。

以上、今週の国際情勢の裏側のコラムでした。

(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2025年6月27日号より一部抜粋。全文をお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録下さい)

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世界各地の紛争地で調停官として数々の紛争を収め、いつしか「最後の調停官」と呼ばれるようになった島田久仁彦が、相手の心をつかみ、納得へと導く交渉・コミュニケーション術を伝授。今日からすぐに使える技の解説をはじめ、現在起こっている国際情勢・時事問題の”本当の話”(裏側)についても、ぎりぎりのところまで語ります。もちろん、読者の方々が抱くコミュニケーション上の悩みや問題などについてのご質問にもお答えします。

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