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なんで電話を家で待つ?Z世代が『ふぞろいの林檎たち』を「戦前の話?」と言い放った背景

ビジネスシーンであれプレイベートの場であれ、かつては対面以外のコミュニケーションツールとして「一択」の存在であった電話。しかし現在、その地位は急落し、存続までもが危ぶまれるのが現状となっています。日本の高度経済成長を支えてきた一翼でもある電話は、ごく近い将来にその役割を終えてしまうのでしょうか。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者の河合薫さんが、若者のみならず中高年にまで広がる「電話不要論」について考察しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:電話は不要か?消えるのか?

プロフィール河合薫かわいかおる
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

若者だけでなく中高年も口にする「不要論」。電話に未来はあるか

異常な暑さとお盆休みが近づいているせいか、私も含めた日本中のビジネスパーソンの労働意欲が低下しているので、今回は少々ラフなネタをお届けします。タイトルは「電話の未来」です。

数年前から「最近の若者は電話に出たがらない」「営業なのに電話が鳴るとしらっと席をはなれる」といったにわかに信じがたい話を、たびたびフィールドインタビューで耳にしました。

しかし、どうやらこの傾向は日本だけでなく、海を越えた海外でも深刻な問題になっているようなのです。

英国の調査会社ユーガブが2024年に実施した調査によると、18歳から24歳の英国人の実に40%が「何も言わずに電話に出ても問題ない」と考えていることが明らかになりました。

この割合は年齢とともに低下し、25歳から34歳では27%に、45歳を超えると14%まで急減します。

この数字は、若い世代とそれ以上の世代で、電話に対する意識に大きな隔たりがあることを示していることは明らかなのですが、若者の中には「電話で自分からあいさつすると、その声が録音されて悪用される恐れがある」「下手に自分から話かけると音声をAI編集されてなりすましに使われるかもしれない」と心配するケースもあるとか。気持ちがわからないわけではありませんが、そんなに怖がらなくても大丈夫よ!と伝えたいです。

いずれにせよ「電話怖い」はデジタルネイティブのZ世代の特徴でもあります。

彼らは物心ついた時からテキストメッセージやSNSが当たり前に存在する環境で育ったため、リアルタイムでの会話や、相手の顔が見えない状況でのやり取りに慣れていません。

テキストメッセージやメールであれば、一度に複数の人とやり取りしたり、履歴を残したりすることが容易です。しかし電話は一対一。時間も拘束されるため、効率が悪いと感じる若者も少なくありません。

また、電話はいつかかってくるか分からず、事前に話す内容を整理する時間がないので、電話に強いプレッシャーを感じたり。相手の表情や身振り手振りが分からないため、「何を話したらいいかわからない」「失礼な受け答えをしていないか」といった不安を感じやすいのです。

デジタルネイティブ世代の電話に対する意識の変化は、現代のコミュニケーション文化そのものの変化を象徴しているのかもしれません。

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ある意味「奇襲」。中高年が電話不要論を唱える理由

興味深いのは日本ではアナログ世代の中高年の間でも「電話不要論」なるものが出ている点です。大人たちの電話不要論の理由は「相手の時間を奪う」です。

電話をかける方は「話した方が早い」とか、「電話でちゃんと伝えた方がいい」と考えるわけですが、電話を受けた側はいったん手をとめ、相手の話を強制的に聞かなくてはなりません。

特にたくさんの仕事を同時進行でやっている人にとって緊急性が低い電話は奇襲のようなもの。メールやチャットであれば、相手の都合の良いタイミングで確認・返信ができるため、相手への配慮が欠けていると指摘しているのです。

若者の「電話が怖い」という感情的な理由と、中高年の「電話は不合理」という合理的な理由。アプローチは違いますが、どちらも現代のコミュニケーションにおいて、電話が必ずしも最善のツールではないという共通認識を示している点は共通しています。

そういえば私の知人の大学1年生の息子さんは、再放送されている1980年代のドラマ『ふぞろいの林檎たち』を見て、「これって戦前の話?何で電話くれないとかどうだとか家でじっと待ってるんだよ。待つって何なんだ?面倒くせ~」と言っていたそうです。

好きな人からの電話を待つ間に、「もう、仕事終わったかなぁ。電車に乗って満員電車に揺られているのかな」と想像し、「もう家に着いたころだからそろそろ電話くれるかな」と期待に胸を膨らますも、なかなかかかってこない電話に「何かあったのかな?いつもだったら帰っている時間なのに……」と心配になる。

何度も何度も受話器を見つめ、鳴ったときに近くにいないと出られないから、トイレに行くのも気が気じゃない――。そんな感情の揺れも、今は消え、あの頃がなんだかとても愛おしい。

しかし、携帯やメールで瞬時にダイレクトにコミュニケーションできる時代を生きる息子さんには「ただの無駄」でしかないのです。

おかげで昭和おじさん・おばさんは、日々若者とのコミュニケーションに神経をすり減らし、「なぜ、伝わらない?なぜ、理解できない?」という小さな怒りはジェネレーションギャップという言葉に置きかわりました。

昭和おじさん・おばさんが多用する「ジェネレーションギャップ」という言葉は「もう勘弁してください」という悲鳴なのです。

さて、あなたは電話についてどう思いますか?いらないですか?出るのが怖いくらいだったら、音声AIに任せればいいと思いますか?

みなさんのご意見、お聞かせください。

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