9月3日に天安門広場で開催された「抗日戦争勝利80年」記念パレード。習近平国家主席、プーチン大統領、金正恩総書記が楼上で「揃い踏み」する様子を世界中のメディアが大々的に報じましたが、この式典に中国政府は台湾にも参加の要請を行っていたことをご存知でしょうか。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では、そもそもこの「抗日戦争勝利80年」を中国共産党が祝うこと自体に無理がある根拠と、台湾政府に参加を呼びかけざるを得ない裏事情を解説。さらに身内からの反対を押し切ってまで参加した鳩山由紀夫元首相の「言い分」を紹介しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:【中国】嘘だらけの「抗日戦争勝利80年」
勝ってもないのに大威張り。嘘だらけの中国「抗日戦争勝利80年」
● 台湾総統「侵略は必然的に失敗する」、中国軍事パレード控え
中国で3日に行われた「抗日戦争勝利80年」記念パレードが話題となっています。中国は、ロシアや北朝鮮のほか、内乱の激化を受け不参加を表明したインドネシアのプラボウォ大統領にも強く参加を要請し、無理やり参加させています。
● インドネシア大統領、一転参列 中国軍事パレード、「強い要請」受け
他国に事情があっても自国の都合を押し付けるやり方は、さすが中華思想の国です。
とはいえ、中華人民共和国および中国共産党は、実際には日本と戦争はしていません。そもそも中華人民共和国の成立は1949年で終戦後です。
日中戦争時には国共合作が行われてはいましたが、中国共産党は極力日本軍との戦闘を避け、国民党軍を矢面に立たせていました。
そのため、1964年に社会党の佐々木更三委員長が訪中し、毛沢東との会談で日中戦争のことについて謝罪したところ、毛沢東は「謝ることはない、あなたたちのおかげで、われわれは政権を取ることができたのだから」と言ったわけです。
要するに、日本軍が国民党軍と戦い、国民党の戦力を削いだおかげで、その後の国共内戦で中国共産党が政権を取れたと、毛沢東は日本にむしろ感謝すらしていたのです。
ところが、1989年の天安門事件以降、中国は人民の不満を日本へと向かわせるために反日教育に乗り出し、そして現在ではいつのまにか中国共産党が抗日戦争を戦い、これに勝利したかのようなプロパガンダをばら撒くようになりました。
とはいえ、米英中の3カ国によって開催されたカイロ会議には、蒋介石が出席し、対日戦争について協議したという「歴史の事実」がありますから、さすがに中国共産党だけで日本に勝利したというストーリーは無理があります。
そこで、国共合作によって日本に勝利したということにするため、台湾にも抗日戦争勝利80年記念式典への参加要請をしています。
しかし、冒頭の報道のように台湾政府はこれを断固拒否し、国家の要職にある人、またはその経験者が参加した場合は、処罰するとまで宣言しました。
この記事の著者・黄文雄さんのメルマガ
インドも「日本を傷つける意図はない」と参加を拒否
詳しくは以下、報道を一部引用します。
大陸委は書面を通じ、中国共産党が関連イベントを利用して台湾への統一戦線工作を行うのを防ぐため、政府は中央政府や地方政府の職員が3日の記念式典や政府主導の関連イベントに出席することを禁じていると説明。
政党や法人、市民団体、個人が同式典に参加し、中国側と協力する何らかの行為に関与した場合、主務機関は台湾地区・大陸地区人民関係条例(両岸条例)などの法律に基づき処罰するとした。
外交部(外務省)の蕭光偉報道官は2日の定例記者会見で、中華民国台湾を支持し守る全ての人々は国際社会に台湾の民主主義政治と主権の立場を誤解されないよう、誤ったメッセージの発信を控えなければならないとし、中国側のイベントに出席した場合、それは台湾の主流の民意に背くだけでなく、台湾と全体の人々の立場を代表することはできないと述べた。
● 元国民党主席が中国の抗日戦勝記念式典に出席へ 大陸委、不参加を呼びかけ/台湾
台湾は来週行われる中国の軍事パレードに出席しないよう人々に呼びかけており、防衛、情報、外交分野の現職や元高官が出席した場合、年金停止などの処分を科すと警告している。
● 中国、台湾を非難 抗日戦争での共産党の役割否定は「冒涜」
とはいえ、国民党は絶対に参加する意思を表明しており、今回参加するのは台湾の最大野党、中国国民党の洪秀柱元主席(党首)です。洪氏は「元国民党主席として抗戦精神を継続する責任がある」と主張していますが、あくまでも個人としての参加のようです。洪氏の言い分は以下、報道を一部引用します。
洪氏は2日、式典出席について、抗日戦争は中華民族の生死を懸けた国家存亡の戦いだとし、皆の共通の歴史であり、省籍や政党の違いに関わらないと言及。「歴史は忘れ去られてはならず、歪められてもならない」との考えを訴えた。その上で、国民党は清朝を倒し、中華民国を創建した政党であり、元党首として、抗日戦の歴史を引き継ぐ責任があると述べ、訪中の目的は歴史の真相を伝承し、英霊に敬意を表することだけにあると説明した。
● 元国民党主席が中国の抗日戦勝記念式典に出席へ 大陸委、不参加を呼びかけ/台湾
台湾は、「台湾政府は中国当局の記念行事について『国家の主権と尊厳を守らなければならない』として市民に参加しないよう呼び掛け、公務員のほか『国防や外交、大陸(中国)に関する業務を行った経歴』がある人物の参加は処罰するとしていた」と、一般の人も参加しないようにと、政府の立場をはっきりとさせています。
● 台湾の洪秀柱元国民党主席、中国の戦勝パレード出席へ 台湾当局は市民には不参加呼びかけ
インド政府も、「パレードは『中国が対日戦勝を祝う行事』と認識していると指摘。『インドには日本を傷つける意図はない』と説明した。来日を終えた直後に訪中し、中国・天津で上海協力機構(SCO)首脳会議に出席したモディ首相も参列しない」との立場を明確に表明しています。
● インド代表団は参列せず 「日本傷つける意図なし」 中国軍事パレード
それぞれの国がそれほど相手を信用していない中ロ朝
では、日本はどうなのかというと、この人の登場です。以下、報道を一部引用します。
中国政府が9月3日に北京で行う抗日戦争勝利80年記念行事に招待された鳩山由紀夫元首相は28日、産経新聞の取材に応じ、出席する意向を示した。「日本がかつて侵略したことは事実だ。中国が勝ったということだが、それを乗り越え、日中関係をどう良くするかを考えないといけない」と語った。
呉江浩駐日大使から「是非出席してほしい」と依頼されたといい、鳩山氏は日中関係について「険悪になることは望ましくない。お互い信頼関係を持つことはアジアの平和のためにもなる」と強調した。一方、首相経験者による式典出席は中国政府によるプロパガンダ(政治宣伝)に利用される懸念がある。当日は記念行事として軍事パレードも行われる。
鳩山氏は、「どういう式典になるかは分からないが、式典開催を通じて結果として日中関係が一方的に流されるのではなく、(日本側からも)メッセージを出さないといけない」と語った。
● 鳩山由紀夫氏、抗日戦争80年行事出席意向「信頼はアジア平和に」プロパガンダ利用懸念も
鳩山氏によれば、日本からは十数人が式典に参加するようだとのことです。これに対して、鳩山由紀夫氏とは志を異にする息子の鳩山紀一郎衆院議員(国民民主党所属)は、参加を取りやめるように進言したということです。以下、報道を一部引用します。
父親の出席に関する報道を引用した上で「父には出席の取りやめを要請しました。日本国民にとって最も大切なことは、戦争の悲劇を二度と繰り返さないために、歴史から学ぶべきことはしっかり学びつつ、抑止を中心に、常に最大限の戦略的な準備を行うことです。その観点で、日本の元首相が中国政府の戦勝記念行事に出席する必要はありません」とポストしていた。
● 鳩山元首相に訪中中止要請の長男に「正しい認識」国民・玉木代表「諫言、心苦しかったと思う」
軍事パレードの式典前には、習近平主席を中心に、プーチン大統領と金正恩総書記が両脇に立っての記念撮影が行われました。
● 中国 軍事パレードにプーチン大統領やキム総書記 各国の狙いは
中朝露の緊密さを演出したのでしょうが、歴史上、中国とロシアは国境紛争などで争いと和睦を何度も重ねてきましたし、北朝鮮は金日成の時代から、政権内の中国閥を粛清してきました。金日成は延安派を粛清し、金正恩は中国派で叔父の張成沢を処刑するのみならず、中国に庇護されていた金正男を暗殺した疑いを持たれています。
つまり、それぞれの国が、それほど相手を信用していないのです。
アメリカのトランプ大統領が中国包囲網を作っているとか、習近平がアメリカに対抗するために社会主義国家を団結させているとか、様々な報道や憶測が流れているように、今の世界情勢は非常に混沌としています。
その状況を利用して、世界を自国に有利に動かそうとする国々がチャンスを虎視眈々と狙っています。今回の「抗日戦争勝利80年」記念パレードも、中国によって作り出されたひとつのチャンスです。
ロシアが武力による制圧に出たことで、武力という選択肢もありだと世界に知らしめました。世界が混沌としている今、再び武力という手段で自国に有利な状況をもたらそうとする国が続出しないことを願います。
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image by: 朝鮮労働党機関紙『労働新聞』公式サイト
※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2025年9月3日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込660円)。
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