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サラリーマンは健康・人間関係・お金の3大ストレスで瀕死。人生好転の充実シニアライフ構築術とは=酒井利直

サラリーマンには「健康・人間関係・お金」の3大ストレスが大きくのしかかります。どうすればストレスから開放され、定年後に元気で充実したシニアライフを送れるのでしょうか?今回は老後資金の問題を中心に解説します。(『日本相続学会発「円満かつ円滑な相続」』酒井利直)。

サラリーマンの3大ストレス「健康」「人間関係」「ライフマネープラン」

現役のサラリーマンに向けて、定年後に元気で充実したシニアライフを過ごすために、いくつかのアドバイスをご紹介したいと思います。

まず、元気で充実した生活を送るためには、悩みやストレスをできるだけ少なくすることが重要です。

厚生労働省の国民生活基礎調査によると、悩みやストレスがある人の割合は50代前半の55.1%をピークに少しずつ減少し、60代後半では41.4%に低下。70代前半で39.3%まで下がります。70歳~74歳が20歳以降で、一番悩みとストレスが少ない年齢階層なのです。

それでも、4割近い人が何らかの悩みやストレスを感じているわけですから、より良いシニアライフを送るためには、もう少し悩みやストレスを減らすことを考える必要があるでしょう。

シニア層の悩みやストレスの原因で一番多いのは「自分や家族の病気や介護」で、後期高齢者になると6割以上の人がこの悩みを抱えます。

次に多い悩みやストレスの原因は「人間関係」で70代の2割以上の人がこの問題に頭を痛めています。人間関係の悩みは「家族との人間関係」と「家族以外との人間関係」に分かれます。「家族以外との人間関係」に起因する悩みやストレスは、年齢とともに減っていきますが、「家族との人間関係」に起因する悩みやストレスは、それ程減少していきません。

3番目に多い悩みやストレスの原因は「収入・家計・借金等」に関するもので、これは年齢とともに減少する傾向にあります。

以上のことから、悩みやストレスの少ないシニアライフを送るには「健康」「人間関係」「ライフマネープラン」が重要なことがわかります。

どの程度「相続問題」が悩みやストレスの原因になっているか?という統計データを目にしたことはありませんが、相続争いが人間関係の悩みの原因の一部となり、また複雑な相続手続きが「収入・家計・借金等」のストレスを増やしていることは間違いないでしょう。

本稿では相続問題を補助線としながら、サラリーマンOBが自分自身と家族のために、悩みとストレスの少ないシニアライフを送るためのポイントを紹介していきたいと思います。今回は老後資金の問題を取り上げます。

サラリーマンは絶滅危惧種

「サラリーマン」というのは、給与生活者を総称する和製英語です。本稿では給与生活者とは呼ばずに、あえて「サラリーマン」という言葉を使います。

その理由は「サラリーマン」が終身雇用と年功序列型賃金を基本とした特殊な雇用形態で、やがて大幅に減少する絶滅危惧種であると私が考えているからです。

「サラリーマン」の子どもは給与生活者にはなっても、「サラリーマン」にはなれない可能性が高いと思います。つまり生涯の間に数度転職することが一般的になり、雇用はメンバーシップ型からジョブ型に替わり、継続的なチャレンジが求められ、夫婦はお互いフルタイムで働くのが一般的という社会になるでしょう。

このような社会では働く世代による老人介護は困難になってくると、私は考えています。

つまり、これからのシニア層は施設介護など、他人による介護を前提にしたライフマネープランを考える必要があると思います。

介護に関する費用はピンキリですが、公益社団法人生命保険文化センターの生命保険に関する全国実態調査」(平成30年)を元に推定すると平均的には500万円程度になります。

Next: 2,000万円では足りない老後資金、どう捻出する?



老後は3,000万円は必要

2019年6月に金融庁が「公的年金だけでは2,000万円の資金不足になる」と発表して大きな話題になりました。

2,000万円不足というのは、年金生活者の平均的な毎月の家計の不足額を30年間合計すると、1,800万円になるという単純計算です。

なお、介護費用や耐久消費財の買替費用と自宅維持費用まで加えると、安心してシニアライフを送るには3,000万円程度の資金源を確保しておく方が良いと私は考えています。

これは一見大変そうですが、サラリーマン世帯の場合、自分と配偶者が子どもにファイナンス面の負担をかけることなく、人生を送ることができれば良いと考え、ライフマネープランを考えるべきです。

金融資産に加えてやむを得ない場合は、自宅を担保にして資金を調達するなどの方法で捻出することも視野に入れておく必要があるでしょう。

子どもに伝えておくべき3つの老後計画

そのため、子どもには若い時から次のことをはっきりさせておくことが重要です。

1. 親は介護などで子どもに経済的な負担をかけない
2. 子どもは自立して働きだした後は、経済面で親を頼りにしてはいけない
3. 片方の親が死亡した後、残された配偶者はそのまま自宅に住むか、あるいは自宅を処分して老人ホーム等に入居する。したがって、親の自宅をあてにしてはいけない

典型的なサラリーマンの相続で起きる問題は「配偶者が自宅を相続すると相続財産の大部分を配偶者が相続することになるので、子どもの相続分は法定相続割合に届かない」ということでしょう。

親子関係が良好な場合は、残された配偶者がほぼ全部の財産を相続してももめないでしょうが、親子関係が悪い場合や。子どもの中にファイナンス面で自立していない人がいる場合はもめ事が起きる可能性があります。

民法改正により法律は配偶者居住権という権利を創設し、配偶者の保護を図っていますが、それはラストリゾートとして、プロアクティブな解決方法を取るべきです。

遺言書の作成はひとつの解決方法ですが、より重要なことは、子どもが働きだした後は、親子ともファイナンス面では独立性を保つことをはっきりさせておくことです。

余程資金面に余裕がある人の場合や子どもが1人の場合は、子どもの面倒を見ることが可能ですが、そうでない場合、複数の子どもを平等に支援することはなかなか困難です。それならば、はっきりと支援はしないと明言しておく方が良いでしょう。

資金的な余裕があれば、生きている間に贈与する

そのうえで、もし資金的な余裕ができて、子どもに財産を残したいと考えた時には、まず自分が生きている間に贈与することを考えるべきです。

サラリーマンの親が子どもに残すことができる本当の財産は「教育」だけなのです。さらにいうと、変化の激しいこれからの社会では生涯学習が必要になりますから、学び続けることができる資質を残すことができるならば、それが一番の財産でしょう。

Next: 老後でも可処分所得はあまり減らない。コロナ後はインフレに要注意



老後でも可処分所得はあまり減らない

厚生労働省の国民生活基礎調査によると60代前半までほぼ3割以上の人が「収入・家計・借金等」に悩みやストレスを感じていますが、60代後半から悩みは減少し、70代になると悩みを持つ人は2割以下に、80代に入ると1割程度に減少します。

年齢とともにファイナンス面の不安が減るのは、現役時代は年金生活に入ると収入が半減するという不安に襲われていたものの、実際に年金生活に入ると所得税や社会保険料も減るので、可処分所得は思っていた程減らないということがあると思います。

従ってファイナンス面で過度に不安になる必要はありませんが、自分に納得がいく範囲でお金を働かせて資産寿命を延ばすことは必要だろうと私は考えています。

そう考える大きな理由は「コロナ対策の結果インフレが起きる可能性が高い」と考えていることにあります。

アフターコロナ後のインフレのためにお金を適切に動かすことができるか

コロナ対策で世界中の政府や中央銀行は家計にお金をばらまきました。お金が増えるとお金の価値が減ってモノの値段が上がるのは当然の現象で、世界的にはインフレの萌芽が出始めています。

日本ですぐにインフレが始まる可能性は高くはありませんが、世界的に物価が上昇してくると輸入物価高が波及し、日本でも物価上昇が起きる可能性があります。

また物価統計上のインフレは目立たなくても、国民の家計負担は今後確実に増えていきます。その大きな要因は社会保険料等の負担が増加するとともに、公的サービスの利用可能範囲が狭まり、自己負担が増えることです。

これはコロナ対策で支援金をばらまいたツケを払わざるをえないからです。こう考えると今持っているお金の価値は今後かなり下がっていくと私は考えています。お金の価値を維持するためにも、お金を適切に働かせることが必要なのです。

話を分かりやすくするため、資産運用を行いながら少しずつお金を使っていくという例で資産運用効果を説明します。

仮に年平均3.52%で資産を運用することができるとすると、2,000万円の元金を毎月10万円ずつ25年にわたって受け取ることが可能です。つまり、運用元本と運用収益合わせて3,000万円のお金を受け取ることができるわけです。

3.52%で資金を運用することは相当実現性が高いシナリオですが、保証されたものではありません。またしっかりした運用会社を選択すれば、特別な金融知識がなくても達成は可能です。

ただし、資産運用を行う場合は、リスクを取るからリターンが生まれるということをしっかり勉強して、リスクについても腹落ちしていることが必要でしょう。

もし相場が荒れて運用財産の評価額が大きく下がると不安で仕方がないと思う人は、資産運用には向いていません。向かないことはやるべきではありません。

資産運用は目的ではなく、資産寿命を延ばして少しでも充実した人生を送ろうという手段に過ぎません。

シニアライフの設計図の描き方については拙著「マインドマップとエクセル」でライフプランノートを作る」(アマゾンKindle版)で詳しく説明しましたので、興味のある方はご覧ください。

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日本相続学会発「円満かつ円滑な相続」』(2021年5月1日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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