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中国の景気回復基調が鮮明に~当面ハードランディングの懸念なし=田代尚機

中国の不動産投資が回復している。本土マスコミでは、一線級都市を中心に春節前後から不動産販売が好調であると伝えているが、それがしっかりと数字でも確認できるようになった。(『中国株投資レッスン』田代尚機)

少なくとも今年前半は、中国経済にハードランディング懸念なし

中国景気、回復が鮮明に

4月15日、市場関係者が大いに注目する中国の経済統計が発表された。

日本のマスコミは1~3月の実質経済成長率が前四半期と比べ、0.1ポイント低い6.7%にとどまったことばかりを強調しているが、ポイントはそこではない。3月の月次統計の改善の方が重要である。

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まず、3月の鉱工業生産を見ると6.8%増で、1、2月合計の5.4%増と比べ1.4ポイント改善、市場コンセンサスの5.9%増と比べ0.9ポイント上振れした。

3月のセメント生産量は1、2月合計の8.2%減から24.0%増へと急増している。非鉄金属は4.3%減から4.4%増、鋼材は2.1%減から3.3%増、発電量は0.3%増から4.0%増へと増えている。1、2月合計では5.3%増まで鈍化した自動車生産であるが、3月は8.9%増に回復している。

需要面では何が回復したのか?

素材の生産状況から推測できようが、不動産投資が回復している。3月累計の全国不動産開発投資は6.2%増で、2月累計の3.0%増と比べ3.2ポイント上振れした。

商品不動産の販売面積では、2月累計で28.2%増であったが、3月累計は33.1%増まで拡大している。本土マスコミでは、一線級都市を中心に春節前後から不動産販売が好調であると伝えているが、それがしっかりと数字でも確認できるようになった。

固定資産投資の回復も顕著である。3月累計の固定資産投資は10.7%増で、2月累計の10.2%増と比べ0.5ポイント改善、市場コンセンサスの10.4%増と比べ0.3ポイント上振れした。

供給側改革が加速していることから、製造業は6.4%増にとどまり、2月累計の7.5%増と比べ1.1ポイント鈍化している。

一方、公共投資関連が大きく伸びている。水利、環境、公共施設などは30.5%増で、2月累計の26.6%増と比べ3.9ポイント高く、交通運輸、倉庫、郵政事業は7.9%増で2月累計の4.8%増と比べ3.1ポイント高い。

景気安定化策が効果を現している。消費も3月は堅調である。3月の小売売上高は10.5%増で1、2月合計の10.2%増と比べ0.3ポイント高い。

物価も戻り始めている。消費者物価指数(CPI)は2.3%上昇で、前月と同じ。市場コンセンサスと比べ、0.2ポイント低かった。しかし、工業品出荷価格指数(PPI)は4.3%下落で、前月と比べ0.6ポイント回復、市場コンセンサスと比べ、0.3ポイント高かった。

川上製品の価格が回復しているが、これは企業の購買意欲が高まっていることを示している。もちろん、原油価格が戻していることも影響があるだろうが、それを織り込んでエコノミストたちは予想をたてており、その予想を超える回復をみせている以上、需要の高まりを意識せざるを得ない。

そのほか、貿易面では、3月の輸出は11.5%増で、2月の25.4%減と比べ36.9ポイント改善、市場コンセンサスである2.5%増と比べ、9ポイント上振れした。輸入は7.6%減で、2月の13.8%減と比べ6.2ポイント改善、市場コンセンサスである10.2%減と比べ、2.6ポイント上振れした。

貿易統計を見る限りでは、予想以上に内需、外需の戻りは速いようだ。

Next: 足元の景気指標は明らかに好転、第2四半期以降の見通しは?



足元の景気指標は明らかに好転、第2四半期以降の見通しは?

前々週紹介したように、3月の官製・製造業PMIは予想外の50越えとなった。2月(累計)の一定規模以上工業企業利益は15年5月(累計)以来の増益に転じている。足元の景気指標は明らかに好転を示している。

第2四半期以降はどうなるだろうか?

1線級都市を中心に不動産価格の回復が著しい。また、国務院は不動産在庫削減を政策目標としており、借入コストや融資条件の緩和などが予想される。不動産開発投資意欲は高まるだろう。

一方製造業の設備投資は二極化しそうである。

素材などの重厚長大産業の投資は供給側改革の加速によって、大きく制限されるだろうが、第13次五カ年計画の開始によって、省エネ・環境、新エネルギー、通信、ハイテク産業などでは、新たに始動するプロジェクトが急増するだろう。全体としてみれば、製造業の設備投資はこれ以上鈍化しないであろう。

失業率は安定しており、所得も安定成長している。今後も、消費は堅調さを保つだろう。
心配なのは外需であるが、輸入との差である純輸出の経済全体に占めるウエートは小さい。輸出が回復しなかったとしても、経済全体に与える影響は小さいだろう。

中国は社会主義国であり、計画経済が今も生きている。第13次五カ年計画の初年度は各部門が成果を競うことで、今年は投資が拡大し易い年となるだろう。

生産適齢期人口が減少し、大量消費社会という面での先進国へのキャッチアップがほぼ終了した現在、中国の成長率は段階的に低くなるのは避けられない。しかし、第2四半期、第3四半期に限れば第1四半期並みの成長率は確保できそうだ。

少なくとも今年前半は、中国経済ハードランディング懸念の再燃はなさそうだ。
(4月16日作成、有料メルマガから一部抜粋)

【関連】中国が極秘裏に描く「世界金融戦争の終盤戦略」~金買い増しと資金流出のウラ

中国株投資レッスン』(2016年4月21日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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TS・チャイナ・リサーチの田代尚機がお届けします。中国経済や中国株投資に関するエッセイを中心に、タイムリーな投資情報、投資戦略などをお伝えします。中国株投資で資産を大きく増やしたいと考える方はもちろん、ただ中国が好きだという方も大歓迎です。

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