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日銀プレー?ブルームバーグ報道を信じて狩られるのは個人投資家=長谷川雅一

先週からの株価上昇の主要因は、「売られすぎの反動」と「日銀の金融政策期待」です。そこに政府の買い支えがともなっての上昇です。つまり本物の上昇ではない。「売られすぎの反動」としての上昇は長く続きませんし、「政策期待」の上昇は、いわば「何か出るんじゃないのか」というギャンブル的な上昇であり、実体が伴いません。(『長谷川雅一のハッピーライフマガジン』長谷川雅一)

プロフィール:長谷川雅一(はせがわまさかず)
1959年、岐阜県生まれ。株式会社プレコオンライン(金融商品取引業)代表取締役社長。2000年より株式投資の研究を始め、日本で初めて「株の自動売買」という言葉を使った著書を出版。株式投資の世界では、「株の自動売買」ブームの火付け役として知られている。現在は、自動売買ソフトの開発、投資教室、メルマガの執筆など、多忙な日々を送っている。

実態を伴わない「政策期待」 ギャンブル的な株価上昇は長続きせず

唐突な「リスクオン」ムード

つい先日まで、「為替は1ドル100円あたりまで円高が進む?」「日経平均は15,000円まで下落か?」といった、リスクオフムードの相場が続いていました。

ところが、先週からリスクオフムードがうすれ、週末の22日(金)に、「日銀が新たな追加緩和策を出すらしい」というニュースが流れたことで、マーケットは一気にリスクオンとなりました。具体的には、「日銀が金融機関への貸し出しにマイナス金利を適用する可能性がある」というウワサが流れたわけです。

【関連】5月末の日経平均は13,000円、為替は108円~春は暴落の季節=長谷川雅一

これを受けて、22日(金)の日経平均株価は上昇。17,572円で引けました。

さらに、日本の株式市場が終了したあと、海外市場で急速な円安が進みました。為替レート(米ドル/円)は1ドル111.80円付近まで上昇。米ドル/円の1日の上昇幅が3円に迫る急騰となる中、日経225先物も上昇しました。

日経225先物の週末の終値は17,735円と、東京市場の終値から、さらに160円ほど上昇し、18,000円の大台に迫る勢いです。

ギャンブル的な上昇

金曜日の動きを見ると、相場の流れが変わったのではないか、と思ってしまいます。ムードは完全に「円安、株高」だ。「ここは買いではないか」と。

確かに、日銀が金融機関への貸し出しにマイナス金利を適用すれば、マイナス金利の導入で苦しくなった銀行の経営が改善する可能性が高く、銀行株を中心に株価が上昇する可能性があります。

しかし、それって「行って来い」ですよね。つまり、基本的に、元の状態に戻るだけではないのか?いっそのこと、マイナス金利を撤回すればいいんじゃないの?と思いませんか。

次の「日銀金融政策決定会合」で出るかもしれないという、この「逆マイナス金利」。

どの程度の利率が、どう適用されるのか、詳細を見てみないと何とも言えませんが、それほど画期的な効果をもたらすとは思えません。日銀が「マイナス金利の副作用を認めた」と受け取られる恐れもあります。

そもそもトレーダーたちは、「逆マイナス金利」が出ると確信しているわけではありません。「何が出るかは、わからない。でも、ここは何か出るに違いない」という「賭け」に出ているわけです。トレーダーはギャンブルが大好きですからね。

Next: 日銀会合で新たな金融緩和策が出ても効果は限定的に



日銀会合で新たな金融緩和策が出ても効果は限定的に

日銀の金融政策決定会合は、4月27日〜28日にかけて行われます。結果が公表されるのは、4月28日(木)のお昼頃です。

ここで日銀が、世界のマーケットが驚くような画期的な金融緩和策を出せば、米ドル/円がさらに2〜3円上昇し、日経平均が20,000円を目指すといった動きがあるかもしれません。

しかし、今の政府がやっている金融緩和策は、日銀が国債を買い取ってしまうといった、副作用をともなうものです。しかも、この「やぶれかぶれ的」な金融緩和を、2013年4月から、もう丸3年も続けているにもかかわらず、効果は限定的です。

今年の1月には、「マイナス金利導入」という荒療治を行いましたが、結果はごらんの通り。政府の狙いとは逆に、マーケットは「円高、株安」に動きました。政府は、もうすでに「やれることは全部やってしまった」のです。おそらく「最後の手段」であろうと思われる「マイナス金利」もダメでした。

ここまでやっても、まだ効果が出ない。だから、さらに何か、やらなければならないという状況です。それを「評価して」あるいは「期待して」、株価が上昇している?冷静に考えたら「バカじゃなかろか」って話です。むしろ、「政府は金融政策の失敗を認めろ。安倍内閣は総辞職しろ。根本からやり直せ」と言うべき段階です。

今週、28日(木)に新たな金融緩和策が出ても、それが画期的な効果を発揮する可能性は低いとしか思えません。

アメリカは「ドル安」を望んでいる

日本の金融緩和で、為替レート(米ドル/円)は、93円付近から125円付近まで、30円あまりも上昇しました。

このドル高で、アメリカ経済は多大な不利益を被りました。それでもアメリカは文句を言わず、黙っていました。自らの「利上げ政策」も影響してのドル高でしたからね。しかし、やはりドル高は、アメリカ経済にとって不利です。そんな状況を、あの狡猾なアメリカが長く容認するハズがありません。

現在、アメリカは、ハッキリと「ドル安誘導姿勢」をとっています。「ドル高はもう嫌だ。これからはドル安にする」という姿勢が鮮明です。先日、ルー財務長官が、「円高で困ってます」と泣きつこうとした日本に、「為替の動きは秩序的である」と意に介さない姿勢を示しました。これを見ても、アメリカのドル安志向は明らかです。

加えて、アメリカは大統領選挙のまっただ中。次期大統領が決まらない中、積極的な投資が難しい状況です。「もしかしたらサンダースが次期大統領になるかも」という、不確実な状況下でドルを買うのは難しい。積極的にドルを買えない状況は、次期大統領が決まる、今年の11月まで続きます。

ちなみに、クリントンには「メール問題」がありますので、サンダースが大統領になる可能性もゼロではありません。

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騙されるな!「円高、株安」のトレンドは変わらない

為替も、株も、人間と同じように「呼吸」します。我々が息を吸ったり、吐いたりするかのごとく、金融商品の価格は、上昇と下落を繰り返すのです。吸ってばかり、吐いてばかりというわけにはいかない。ですから、下がり過ぎれば上がりますし、上がり過ぎれば下がります。

しかし、上昇や下落を繰り返しながらも、上か下、どちらかの方向に「トレンド」が決まります。いったんできたトレンドは、簡単には変わりません。そのトレンドは、今「円高、株安」の方向に向いています。

今回の上昇も、ここまでの下落の反動で、一時的に上昇したに過ぎない可能性が高く、目の前のムードがよくなったからと言って、トレンドが変わるわけではない。積極的に買える相場ではないと思います。

28日(木)後場からは売り優勢になる可能性

先週からの株価上昇の主要因は、「売られすぎの反動」と「日銀の金融政策期待」です。そこに政府の買い支えがともなっての上昇です。つまり本物の上昇ではない。「売られすぎの反動」としての上昇は長く続きませんし、「政策期待」の上昇は、いわば「何か出るんじゃないのか」というギャンブル的な上昇であり、実体がともないません。

25日(月)からの相場も、週の前半は、もう少し上値を取りに行く可能性がありますが、28日(木)に、よほど画期的な金融緩和策が出ない限り、28日(木)の後場からは売り優勢になる可能性が高いと思います。

思い切った金融緩和策が出た場合、マーケットが驚いて、いったん「円安、株高」に進むかもしれませんが、その効果は長続きしないと思われます。

なぜなら、そもそも、現政府は「パフォーマンス型」の経済政策しかやらないからです。パフォーマンス(演出)で、経済が根本からよくなることはありません。総理大臣が、株価上昇を、自分の手柄のように自慢している時点でアウトです。

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マーケットから駆逐されつつある個人投資家

最近は相場の上下変動が荒いため、その動きに翻弄されやすく、「何をやっても勝てない」と嘆く個人投資家さんも多いのではないでしょうか。

急騰(急落) → もみあい → 急落(急騰)

という動きが繰り返される今の相場では、安心感のあるトレードができません。こんな中、個人投資家の市場参加が難しくなっています。

政府は、なりふりかまわず、ただ「円安、株高」に誘導したいだけの「小手先の金融緩和」を行う。それにより相場は逆に不安定になって、個人投資家が投資しづらくなる。相場の急変に翻弄された個人投資家が大損する。

結局、1000分の1秒のトレードを行う、HFT(高速取引)だけが機械的に行われ、一般投資家が排除された取引所で、取引システム(コンピュータ)どうしが戦っているだけ、というおかしなマーケットになりつつあります。

安倍政権の金融政策によって、個人投資家は、市場から追い出されつつあるのかもしれません。

材料やムードに翻弄されないことが大切

では、個人投資家は、どうしたらいいのか。こういう相場では、まず、材料や相場のムードに翻弄されないことが大切だと思います。

少し前までは、「もっと下がる」という悲観論が台頭していました。しかし、底堅い動きを見せたあと、反発上昇しました。現在は、「もっと上がるのでは」といった楽観論が優勢になりつつあります。

しかし、テクニカル的に見て、かなり高くなっていますので、ここからは「売り」のチャンスを狙うタイミングだと思います。材料や、相場のムードに従って売買してしまうと、「ことごとく逆」ということになりかねませんので、注意が必要です。

材料や、相場のムードに関係なく、高くなったら売り、安くなったら買うという、単純な売買を繰り返す。これがベストではないか、と思っています。

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長谷川雅一のハッピーライフマガジン』2016/4/24号より一部抜粋
※記事タイトル・太字はMONEY VOICE編集部による

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