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今、あなたは幸せですか? 中韓に生まれた不幸、日本に生まれた幸福=子貢

仮に今、あなたは幸せですかと世論調査等で問われたら、日本の若年層の多くは否と答えるでしょうし、或いは10年前と今とでは、全体でも否定的な回答が増えていると推察されます。

年代的に言えば若年層より高齢者を、分野別では民間よりも公務員を、企業では非正規雇用より正社員を、そして他人よりも縁者を優遇する傾向が強まっていることは否めません。

様々な分野で進歩が認められているにもかかわらず、「将来に希望が持てない」「社会の閉塞感が強まっている」というのが若年層を中心とした民意であるとするならば、残念な話と言わせざるを得ません。

では、日本国民がどれだけ「不幸せ」なのか、今回は海外と比べながら、検証してみたいと思います。(子貢)

プロフィール:子貢(しこう)
1960年、大阪府生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。一部上場化学企業にて約15年間にわたり、国内外の営業部門に在籍、その後は外資系金融機関と個人契約を結び、レポート等の翻訳業務に従事。投資サークル「千里眼の会」の発起人として主宰、現在に至る。

日本国民の幸福度をロシア・ブラジル・韓国・中国と比較する

「幸福」の最大公約数的な基準

幸福の基準は人それぞれですし、国や地域によっても異なります。

例えば、宗教観や思想信条等を優先する世界的風潮を鑑みれば、拝金主義が世界を席巻しているという誤解は、改めざるを得ません。

それでも、最大公約数的な部分を拾いますと、以下の項目に収斂されると思われます。

「富の再分配が機能しているか」
「公的秩序に従うことが国民の利益と合致するか」
「国家が国民に正直か」
「楽して暮らせると考える輩を少しでも減らせるか」
「生活が維持できるか」

これらを踏まえながら、各国の現状を分析していきますが、まず分かり易いところから、ロシアとブラジル(中南米)から取り上げたいと思います。

「生涯、何とか食わせてくれ」ロシアの場合

ロシア国民の幸福の基準は、日本などより遥かに低く、雇用(=収入)と年金を保障してくれということ、「生涯、何とか食わせてくれ」というのが、国民の切なる願いです。

旧ソ連崩壊後、ゴルバチョフ氏に代わってロシア共和国の全権を掌握したのがエリツィン大統領(当時)でした。

そのエリツィン氏が国民にもたらしたもの、それは国家経済の崩壊でした。

その過程で、給料の遅配や年金の支給停止は日常茶飯事となり、ロシア国民は好むと好まざるにかかわらず、裏経済に手を染めることになりました。

因みに、賃金が何か月も未払いと言ったニュースを見かけますが、それでも労働者が生きていられるのは、副業に精を出しているからです。

そして裏経済に身を沈めることを余儀なくされた点では、旧ソ連で諜報機関に籍を置いていた連中も同様、ここに一般国民と元諜報員との接点が生まれました。

他方、エリツィン大統領は、国民の生活向上や福利厚生と言ったものには眼中になく、唯一の関心は、旧ソ連の国有資産を手下に無料同然で払い下げること、結果として生まれたのが「新興財閥(オリガルヒ)」です。

資産を廉価で受け渡しして貰えるのなら、儲からない方が嘘ですから、オリガルヒとその関係者は、ロシアの経済危機もどこ吹く風、給料も年金も手に入らない国民を尻目に、我が世の春を謳歌しました。

対して、エリツィン氏の後継者プーチン大統領は諜報機関出身、そして立場上、反「新興財閥」であると共に、国民重視の政治を志向することになります。

賃金の支払いと年金給付は万難を排してやり遂げる一方、失業に繋がる工場閉鎖や人員整理は極端に嫌うのも、この辺りに理由があります。

ですから、オリガルヒが人員削減策を打ち出すようなら、怒鳴りつけてでも撤回させることになります。

プーチン政権が外圧にも強靭なのは、生活を保障することで国民の支持を取り付ける一方、諜報機関出身者を起用して「新興財閥」に睨みを聞かせているからで、加えてクリミア半島を「失地回復」した以上、政権崩壊は有り得ないと断言しても差し支えありません。

Next: 「その日暮らしもままならぬ」ブラジルの場合/「ヘル朝鮮」韓国の場合



「その日暮らしもままならぬ」ブラジルの場合

一方、インフレと失業、それに不況に見舞われているにもかかわらず、大統領を筆頭に政府要人が汚職に勤しんでいるのがブラジル、これでは国民の不満も爆発して大統領弾劾に至ったのは致し方ありません。

一部の特権階級を除き、国民の大多数にとって、その日暮らしすらままならないのですから、ブラジルはロシアより、状況は数段悪化している、政権転覆はおろかデフォルト(債務不履行宣言)すら有り得ると言わざるを得ません。

余談ながら、借金踏み倒しの常習犯で、ブラジルの隣国アルゼンチンでは、左翼政権が倒れ中道右派政権が樹立された直後、国際金融市場から国債の大規模起債が認められました。

国際金融資本に刃向うか従順かで、その国の命運が分かれることを教えてくれる、格好の例と言えます。

以上より、ロシアが最低限の国民の要望を満たしているのに対し、ブラジルはその点で落第生なことが判明しましたが、それでは日本とその周辺国は、どの様な状況に置かれているのでしょうか。

「ヘル朝鮮」韓国の場合

「ヘル朝鮮」なる言葉をご存知でしょうか。

「ヘル」は地獄の意、地獄図の様相を呈している北朝鮮を指しているのではなく、韓国の現状を若年層が嘆く時に使います。

面白いのは、韓国人は「朝鮮」を用いるのを極端に嫌い、朝鮮半島という日本の呼称にも言いがかりをつけ、韓半島に改称しろと抗議する一方で、この場合だけ「ヘル韓国」とか「ヘル大韓」と名付けないのは、都合の悪いことは「朝鮮」に押し付けろとの考えが、無意識に作動しているからです。

意訳すれば「生き地獄」となる「ヘル朝鮮」、韓国の若者は何故、ここまで絶望しているかと言えば、まず大学の価値が低下した点にあります。

韓国の大学進学率は70%、「徴兵逃れのためにも大学進学は必須」というお国柄ですから、教育費が馬鹿にならず、受験勉強代や授業料も学生が背負うことになりますが、進学率が高すぎるため、「大学進学がエリート街道に直結しない」事態が出現しました。

次に学生が取得したのが資格、同国では「スペック」と呼ばれるそうですが、これも皆が習得しては差別化が図れず、結局は更に借金を重ねた挙句に、「団栗の背比べ」に留まっています。

ですから決め手は、学歴でも資格でもなく縁故(コネ)、目指すは財閥系企業への就職ですから、財閥とその周辺への伝手を求めて奔走することになります。

しかも運良く職を得たとしても、早ければ30歳台で肩叩きが始まりますから、入社後も息が抜けないのです。

韓国は財閥が官僚や公企業(天下り公的機関)を従えて、富を独占している国家であり、富の再分配が機能しない社会と言わざるを得ず、経済格差は当たり前、持たざる者が負債を抱えて社会の第一歩を踏み出すのとは、雲泥の差です。

そして、財閥支配がもたらす最大の悪影響が「競争原理の否定」、全てを財閥が仕切っていますので、特に政府の入札は談合にすらなりません。

その結果が、韓国海軍が誇る「魚群探知機搭載救助艦」で、最新鋭ソナーと言いながら現実には魚群探知機を積んでいました。

それでは韓国民は、財閥を解体して富の再分配を実現する意志があるのかと言えば、残念ながら「財閥の一員になりたい」というのが本音、つまり「楽して一生暮らしたい」というのが国民の総意ですから、結局のところ財閥支配を肯定し、現状維持を選択してしまいます、たとえ「ヘル」であっても。

Next: 「党政官癒着で競争原理が働かない」中国の場合



「党政官癒着で競争原理が働かない」中国の場合

中国も似たり寄ったり、中国共産党員が「支配階級」で、それ以外は「被支配階級」、但し、実状はもっと複雑です。

中国には戸籍が二種類あり、「農民工」と「非農民工」に分かれます。

都市住民に与えられるのは後者、農民は都市に出稼ぎに行っても、農民工ということで一切の恩恵を受けることができません。

戸籍を一本化する試みは、胡錦濤政権で始まっていますが、習近平政権になってから停滞しがちです。

それから、共産党員と言っても格差があります。

俗に「太子党」と呼ばれる「世襲」党員と、地方支部で入党が認められる「生え抜き」、それに功績を理由に入党が許される「叩き上げ」に分類されます。

因みに、習近平国家主席と王岐山政治局常務委員を「竹馬の友」の様に表現する報道を時に見受けますが、これは真っ赤な嘘、習国家主席は21才で入党、対して王常務委員は35才、要は習近平主席が「親の七光り」なのに対し、王氏は「叩き上げ」、親友なら自分が入党する時に口利きしている筈です。

韓国が「財政官癒着」なら、中国は「党政官癒着」、いずれにせよ競争原理が働きませんから、色々なことをやらかします。

先日、国産ステルス戦闘機X-2の試験飛行が成功し話題になりましたが、日経によればステルス戦闘機を量産化しているのは、米ロ中の三ヵ国とのことですが、厳密には誤りです。

中国がロシアから輸入しているのは事実で、国産化にも成功したと自慢していますが、実は飛べるのはロシア製だけ、輸入した戦闘機を解体しても、それを自前の技術として消化できませんでした。

ですから、外見だけステルスに見える戦闘機を並べることになりますが、当然ながら離発着しません。

帳尻合わせだけすれば良く、そのために予算を注ぎ込んでも良いというのであれば、税金は幾ら徴収しても足りません。

Next: 「まだ救いがある」我が国、日本の未来



「まだ救いがある」我が国、日本の未来

さて、話を日本に戻しますと、バブル崩壊後に国家経済が瓦解する寸前まで日本は追い込まれました。

三洋証券の破綻を契機に世界規模で「日本売り」が始まり、底なし沼に沈んでいく感覚の時代もありました。

現状も、本来ならば危機的状況である筈です。

GDP(国内総生産)の2倍に相当する1,000兆円以上の国債発行残高を抱えながら、安穏としていられる国は他にありません。

では、一部の識者の見解に従って、財政赤字削減に本腰を入れるべきかと言えば、その場合はそれこそ世界中から袋叩きに会います。

理由は簡単、米国債と肩を並べる安全資産が、日本国債だからです。

アベノミクスのお蔭で、大雑把に言って1ドル=80円から120円まで円安に振れましたが、裏を返せば、ドル換算で資産価値は3分の2に減価したことになります。

ならば国債を初め日本国内の金融資産は売る一手と思いきや、外資は手持ちの国債を売却することなく、それどころか買い増しを続け、2015年末時点で国債発行残高の10%を海外勢が占めるに至りました。

つまり金融危機が発生した時に備えて、日本国債を確保しておこうというのが、外資の総意なのです。

1997年の段階で経済が沈没していたら、現在の日本は有り得ませんし、今でもデフォルトに追い込まれたら、革命が起こります。

その意味で幸せですし、更に早晩、中韓経済が立ち行かなくなります。

両国だけでほぼ全ての製造業分野で、余剰生産能力を抱え込んでいますから、中韓の経済活動が麻痺すれば、世界的にみて需給関係が改善しますし、それは製造立国日本にも好影響をもたらすことになります。

「富の再分配が機能しているか」「楽して暮らせると考える輩を少しでも減らせるか」という点は、今後の課題であることは間違いなく、ですから行財政改革が必要との結論になります。

ですが、「公的秩序に従うことが国民の利益と合致する」と考えている限り、財閥を初めとする私的な「閥」が跳梁跋扈するのを防ぐことができますし、一度も国勢調査したこともない中国(従って正確な人口は今だ不明)や、失業率を操作する韓国と比較して「国家が国民に正直」な日本には救いがあります。

問題は「生活が維持できるか」、それは「税負担軽減が可能」かどうかにかかっています。

幸運に恵まれている内に、策を講じるに限ります。

追記:下記ブログも併せてお読み頂ければ幸いです。
近現代中国考
真・現代の超克

(了)

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