6月8日に上場予定のANYCOLOR株式会社について解説します。VTuberグループ「にじさんじ」を運営しており、直近でデビューしたVTuber・壱百満天原サロメさんが急速にチャンネル登録者数と再生数を稼いだことで業界内外からも大注目を浴びました。上場直前の好材料となりましたが、同社の快進撃は今後も続くでしょうか。(『決算が読めるようになるノート』シバタナオキ)
(※筆者注:この記事は沼幹太さんとの共同制作です。)
※本記事は有料メルマガ『決算が読めるようになるノート』2022年06月02日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
AppGrooves / SearchMan共同創業者。東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻 博士課程修了(工学博士)。元・楽天株式会社執行役員(当時最年少)、元・東京大学工学系研究科助教、元・スタンフォード大学客員研究員。
Q. 新規上場のVTuber事務所「ANYCOLOR」、UUUMと比較してわかるVTuber事業ならではの強みとは?
VTuber事業ならではの強みとして、
1. 利益率の高い●●が売上・利益率を向上させている
2. ●●を極力抑え、利益率を向上させている
今回は2022年6月8日上場予定のANYCOLOR株式会社について解説します。ANYCOLORはVTuberグループ「にじさんじ」を運営する企業で、海外にもVTuberビジネスの展開を始めており好評です。
VTuber市場は急拡大中で、株式会社ユーザーローカルの調査によると、2021年10月19日時点でVTuberは16,000名を突破したそうです。
※参考:バーチャルYouTuber、本日1万6千人を突破(ユーザーローカル調べ)|株式会社ユーザーローカル(2021年10月19日配信)
VTuber市場の拡大を牽引しているのがANYCOLORです。所属するVTuberは100名を超え、合計チャンネル登録者数は約4,000万人に昇ります。UUUM株式会社がYouTuberプロデュース事業で急成長しましたが、ANYCOLORはVTuber版UUUMと言える企業です。
今日はANYCOLORについて、UUUMと比較しながら考察しました。
ANYCOLORの会社概要
ANYCOLORは2017年5月に設立されました。2018年1月にその後大人気となる「にじさんじ」の始動を発表し、翌月に活動を開始しました。
創業時はいちから株式会社という名前で、2021年5月にANYCOLOR株式会社へ社名変更をしています。
事業概要や業績はこの後詳しくまとめますが、にじさんじのプロダクト販売やIPを活用しての事業や、中国、韓国、英語圏への海外展開を含めて、さまざまな事業展開を行い、2022年4月28日に上場承認がなされました。
Next: 4つの領域で事業展開。快進撃は今後も続くか?
事業概要
ANYCOLORは主に4つの領域で事業を展開しています。
<1. ライブストリーミング領域>
主力事業であるVTuberグループ「にじさんじ」の運営を中心に、VTuberとの双方向のコミュニケーションを通じてファンコミュニティを創出しています。新たなVTuberの容姿やキャラクター設定を行った上で、オーディションを開催してライバーを選出しています。「にじさんじ」のライバーもオーディションで選ばれています。
ライバーは、配信に必要なもの(アバター、配信ツール、配信用アカウントなど)をANYCOLORから借りる形で活動をしています。主な活動はYouTubeのライブ配信となっています。
ビジネスモデルはSuper Chat(YouTubeの機能でユーザーが課金を行うことでコメントを固定表示できるもの)、YouTubeメンバーシップ(月額課金のファンクラブのようなもの)、Google AdSense収益の3つで構成されています。
<2. コマース領域(コンテンツ・イベント)>
ライブストリーミング領域で培ったファンコミュニティ向けに、VTuberのグッズや音声などのデジタル商品の販売を行っています。
またコンテンツの販売だけでなく、イベントの主催もしています。ファンがVTuberとともに一体感を感じられる大型イベントの開催実績は多く、オフラインイベントはもちろんのこと、コロナ禍においてはオンラインイベントでAR技術を活用した演出なども行っています。
<3. プロモーション領域>
VTuberが顧客企業の企業の宣伝を動画等で行うタイアップ広告、VTuberのIPの使用許諾を企業に与えるIPライセンス、企業のテレビや雑誌等に出演するメディア出演の3つがあります。
<4. 海外VTuberビジネス領域>
英語圏と中国を中心に、海外でもVTuberビジネスを行っています。前述1〜3の国内で行っている同様の展開をしています。
つまりライブストリーミング領域で育んだVTuberを軸にさまざまな事業展開をしており、芸能事務所のVTuber版ということができます。
業績
上図はANYCOLORの売上と成長率の推移です。2017年の創業以来、急成長していることは一目瞭然です。
FY22はQ3(2021年11月-2022年1月)までの実績ですが創業4年目のFY21もYoY+120%と依然高い成長率で、76.3億円の売上を誇っています。創業5年目であるFY22はQ3までの合計額で既に売上100億円を突破しており、通期実績も期待できます。
注目すべきは黒字化を早期に達成している点です。これだけの売上成長率を実現するには、一般的に多くの広告宣伝を行うなどコストをかけることが多いですが、FY19から黒字化を実現しています。
FY22 Q3(2021年11月-2022年1月)時点で累計20億円超の当期純利益を出しています。昨今の株式市場の不況下において、創業5年目でIPOを実現できたのは、この利益の実績が大きいでしょう。
Next: 人気Vtuberが売上を牽引。同事業を営むUUUMとの違いは?
セグメント別の売上
下図はセグメント別の売上です。
・コマース(コンテンツ)領域:約33.6億円(YoY+120.8%)
・コマース(イベント)領域:約6.0億円(YoY+46.8%)
・プロモーション領域:約10.4億円(YoY+294.6%)
・その他領域(海外VTuber事業等):約2.4億円(YoY+411.3%)
全てのセグメントにおいて高成長を実現しています。中でもコマース領域の中のコンテンツに関わる売上が最大であることが確認できます。
ライブストリーミング事業で育んだVTuberの知名度が上がり、それを活用してコマース領域、プロモーション領域での成長が著しいです。引き続き、人気VTuberの成長を実現するとともに、新たな人気VTuberを世の中に生み出すことがポイントになりそうです。
ここまで、ANYCOLORの会社概要、事業概要、業績を見てきました。
記事の後半では、YouTuber領域で同事業を営むUUUMと比較をしながら、VTuber領域ならではのANYCOLORの強みを考察します。
この記事は、VTuber事業に関心のある方、ANYCOLORに関心のある方に最適な内容になっています。
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・ANYCOLORとUUUMを比較
・#考察1:利益率の高い●●が売上・利益率の向上を牽引
・#考察2:●●を極力なくし、●●を抑えている
・まとめ
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