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老後2000万円問題で不安を煽ったのは誰か?“普通”の人なら老後資金は何とかなる=塚崎公義

年金だけでは老後資金が足りない…と警告された「老後2,000万円問題」が話題になるなど、漠然とした不安を抱えている方は少なくないでしょう。ところが、自分がいくら年金を受け取れるのか、また老後の生活費はいくら必要なのかをしっかりと調べれば、普通の人の老後資金は何とかなることがわかります。よく調べずに不安を感じたり、また不安を煽るマスコミの情報を鵜呑みにする人が多いのです。

プロフィール:塚崎公義(つかさき きみよし)
経済評論家、元大学教授。東京大学法学部卒。日本興業銀行(現みずほ銀行)、久留米大学商学部教授を経て2022年に定年退職。現在は経済評論家として執筆活動を行う。著書に『よくわかる日本経済入門』『大学の常識は、世間の非常識』『老後破産しないためのお金の教科書』など。

自分の状況を冷静に分析し、必要なら対策をとる

自分の老後資金が不安だ、という人は多いようです。世の中には「年金だけでは老後資金が2,000万円不足する」「若い人は将来年金が受け取れない」といった不安を煽るような情報が溢れているので、仕方ありませんね。

しかし、不安を感じている人は、しっかりと調べて考えて、それでも不安だと感じている人ばかりではないでしょう。しっかり調べることも考えることもせず、世の中に出回っている記事のタイトルだけを見て不安に思っている人も多いのではないでしょうか。

そもそも、自分は老後に何円くらい公的年金が受け取れるのか、まったく知らずに不安に感じているとしたら、まずは公的年金について調べてみましょう。

将来大病をして巨額の医療費がかかったらどうしよう、と不安に感じているとしたら、まずは自分が加入していう健康保険について調べてみましょう。

今は便利な世の中で、ちょっと調べれば上記のような情報は簡単に手に入ります。それを入手して、自分の頭でいろいろ考えてみましょう。人間は、知らないことには不安を感じるものですから、それだけで不安がかなり和らぐかも知れませんよ。

漠然とした不安が消えても、具体的な不安は残るかも知れません。そうなったら、その不安に対する対策を考えれば良いのです。

普通の人の老後資金は何とかなる

まず、考えてみましょう。今の高齢者の多くは、何とかなっています。彼らも現役の頃は不安だったはずなのに、何とかなっているのです。

それならば、自分も何とかなるような気がしませんか。

標準的なサラリーマン(男女を問わず、公務員等を含む、以下同様)と専業主婦(専業主夫を含む、以下同様)の夫婦は、老後に毎月22万円程度の年金が受け取れます。贅沢はできませんが、暮らしていくだけなら何とかなりそうですね。

自営業者は、年金は少ないのですが、定年が無いので元気な間は現役として稼ぎ続けることができます。長く働いて「老後を短くする」ことで乗り切れる人も多いでしょう。働いている間に受け取った年金を蓄えておけば、短い老後を乗り切ることができそうですね。

非正規労働者として生計を立てている人は、老後は苦しいかも知れません。もっとも、非正規労働者同士で結婚して片方が厚生年金に加入する、といった対策が可能かも知れません。いろいろな選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。

そうしたことは、筆者も折に触れて書いていますし、それ以外にもさまざまな人がいろいろ書いていますので、調べてみてください。

Next: 「老後2,000万円」問題は杞憂に終わる?世の中には不安を煽る人が多い



世の中には不安を煽る人が多い

人々が不安に感じている一因は「知らないから不安だ」ということかも知れませんが、もう1つ、「世の中には不安を煽る人が多い」ということも理由だと思います。

評論家は、「大丈夫です」と言うより「〇〇という問題と××というリスクがあって、心配です」という方が客の関心を惹きやすいので、不安を煽る傾向にあります。マスコミも同様です。

「大災害の可能性は小さい」と言うより、「大災害のリスクがあり、その場合には甚大な被害が……」などと言うほうが受けると思うからそう言っている、という人も多いのです。

筆者もマスコミの取材を受けることがありますが、「大丈夫です」とコメントすると「1つでも不安なことがあれば、ぜひ教えてください」と頼まれたりするので(笑)。

これは評論家やマスコミが悪いというよりも、そうした情報の方に反応しやすい受け手の問題なのだと思いますが、いずれにしても情報の受け手としては「世の中に流れている情報は、世の中の実際よりも悲観的だ。バイアスがかかっているのだ」ということをしっかり理解して、割り引いて考える習慣をつける必要があるわけです。

政府批判は人々を不安にする

野党は、政府を批判することも仕事の1つなので、懸命に政府を批判します。その際には現状の問題点や政府の対策不足等を列挙するので、聞いた人は不安になるかも知れません。

与党支持者は野党の発言を割り引いて聞くのでしょうが、野党支持者の中には、年金等に関する野党の政府批判を聞いて、不安になる人が多いかも知れませんね。野党は政府に都合の良い情報にはあえて触れずに政府に都合の悪い情報を強調しているのでしょうから、割り引いて聞いてもらえば良いのですが。

野党の発言よりもさらに問題なのは、マスコミの中には政府を批判することが目的だと思っている所がありそうだ、ということです。マスコミの仕事は政府の監視であって批判ではないと思うのですが、筆者と異なる理解をしているマスコミがあるとすれば、聞き手が割り引かずに聞いてしまうかも知れず、不安を感じる人も多いかも知れません。

不安を煽って商品を売りつける輩に注意

なかには、人々の不安を煽って商品を売りつけようとする輩もいるので、要注意です。

怪しげな物品を売りつけようとする団体も問題ですが、金融商品を売りつけようとしている金融機関にも要注意です。

「年金だけでは老後資金が足りないので、我が社の金融商品を買って儲けましょう。そうすれば老後の不安から解放されますよ」などと言われたら、とりあえず即答せず、老後資金がどれくらい足りないのかを調べたり考えたりすることに加えて、「虎穴に入らずんば虎子を得ず」という言葉を思い出してみましょう。

儲けるためにはリスクを覚悟する必要があり、失敗したら足りない老後資金が一層足りなくなるかも知れない、ということも考えてみましょう。

「我が社の投資商品は必ず儲かりますから、ご心配なく」などと言われたら、それは必ず損する詐欺商品だ、と理解しましょうね。

本稿は以上ですが、資産運用等々は自己責任でお願いします。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。

image by:maroke / Shutterstock.com

本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2023年3月8日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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