今回は「若年から老年まで『ひきこもり』が全国に146万人。放置すれば一家心中や家族間殺人の続発……どうするニッポン!」というテーマでえぐっていきたいと思います。少子高齢化という人口減少下で、生産年齢人口もどんどん減っていく中、働かずに自宅にこもる人が増えてきているのは由々しき問題でしょう。しかし、何で、こんなことになってしまっているのでしょうか。(『 神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる! 神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる! 』)
※本記事は有料メルマガ『神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる!』2023年10月30日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
投資コンサルタント&マネーアナリスト。富裕層向けに「海外投資懇話会」を主宰し、金融・為替・不動産投資情報を提供。著書に『眠れなくなるほど面白い 図解 経済の話』 『面白いほどよくわかる最新経済のしくみ』(日本文芸社)、『経済のカラクリ』 (祥伝社)、『見るだけでわかるピケティ超図解――21世紀の資本完全マスター』 (フォレスト出版)、『知らないとソンする! 価格と儲けのカラクリ』(高橋書店)など著書多数。
「50人に1人」がひきこもり
内閣府が2022年11月に行った無作為抽出アンケートによれば、15~39歳で2.05%、40~64歳で2.02%が現在「ひきこもり」状態にあります(アンケートには15~39歳の約7,000人、40歳~64歳の4,300人が回答)。
ここから全国推計に換算すると、15~39歳が62万人、40~64歳が84万人となり、合計すると146万人もの人が、現在の日本で「ひきこもり状態」にある――ということなのです。
わずか4年前の2019年の推計が115万人ですから、コロナ禍があったといえ、たった3年で31万人も増えたことになります。
これは、労働の中核といえる「生産年齢人口(15~64歳)」約7,470万人のうち、ほぼ2%を占めますから、現在この年代の「50人に1人」がひきこもり状態にあるといえるのです。
少子高齢化という人口減少下で、生産年齢人口もどんどん減っていく中、働かずに自宅にこもる人が増えてきているのは由々しき問題でしょう。
しかし、何で、こんなことになってしまっているのでしょうか。
なぜ「ひきこもり」に?
「ひきこもり」になった原因は、仕事や就職に関係するものが多いといわれます。
「職場になじめず退職した」
「病気になった」
「就職活動がうまくいかなかった」
「不登校になった(小.中.高校)」
「人間関係がうまくいかなかった」
「大学になじめなかった」
「受験に失敗した」
……こうしたことがキッカケとなり、「ひきこもり」になったとされています。年齢、性別、職業などに関わりなく、さまざまな要因でこうした状況に陥ります。
とりわけ、近年懸念される問題に「8050問題」があります。
これは、収入のない50代の「ひきこもり」当事者を支える80代の親の高齢化の問題です。親が亡くなれば、年金収入もなくなり、たちまち生活に困窮してしまうからです。
あるいは、ひきこもって家族に暴力をふるっていた息子を、父親が刺し殺すといった事件も起きています(息子が親を殺す逆のケースもある)。
こうした「ひきこもり」は、そもそも学校生活での「不登校」との関連も大きいといわれます。大人の「ひきこもり」の人に学校時代の「不登校経験」が多く見られるからなのです。
今年10月4日に文科省が発表したデータでは、2022年度の不登校の小.中学生が過去最高の29万9,000人に達した――といいます。
ほぼ30万人です。
小.中学生の人口は約630万人ですから、約4.7%に及びます。およそ小.中学生21人に1人が不登校で、この数字はなんと10年前の2.6倍にものぼるのです。
こうした不登校のうち、「病気」による不登校(長期欠席)は7万6,000人(約25%)で、10年前の1.9倍です。
増加の大部分が、「うつ病」などの精神疾患というのですから、ことは深刻です。
困ったことに、同時に教師の精神疾患による離職や休職者数も年々増加中なのです(小中?の公立学校教師の精神疾患による休職者数は2022年末で公立学校の全教職員数の0.64%の5,897人)。
Next: 「衰退ニッポン」の状況悪化とともに、ひきこもりも増加している……
「衰退ニッポン」の状況悪化とともに、ひきこもりも増加している
あらゆる方面で、「衰退ニッポン」が進行中なのですが、子ども世代の教育環境そのものから、何かが大きく崩れ落ちていることは間違いないでしょう。
つまり、こうした学校教育の生徒や教師の置かれた現場から、息苦しい状況が垣間見えてくるのです。
子どもの不登校が増えていることは、そのまま将来の「ひきこもり予備軍」の増加ととらえることもできるのですから、本当に由々しき問題です。
ちなみに、「ひきこもり」の定義は、以下の通りです。
1. 趣味の用事の時だけ外出する
2. 近所のコンビニなどには出かける
3. 自室からは出るが、家からは出ない
4. 自室からほとんど出ない
以前は、こうした状態が6カ月以上続いた場合とされましたが、現在はあまり期間は重視されていません。
厚労省のガイドラインによれば「引きこもり」の定義を「様々な要因により、就学・就労・交遊などの社会的活動に参加せず、原則的に6ヵ月以上にわたり概ね家庭にとどまっている状態」としています。
こうした「ひきこもり」が増えている原因は、日本経済の社会の衰退ともほぼ連動しているといってよいでしょう。
ひとつの会社の中に、労働者派遣法によって「正規雇用」と「非正規雇用」といった階層差別を導入し、賃金を極限まで抑え、大手企業は内部留保を貯め込む構図とともに、労働者の働く環境はどんどん厳しい状況ヘと追いやられてきたからです。
貧困は子どものいる家庭にも及びます。2022年の「子どもの相対的貧困率」は数値がやや改善したものの11.5%です。
ただし、国民全体の相対的貧困率は15.4%で米国や韓国よりも悪く、先進国では最多になっています。
また、一人親の半分は相対的貧困状態にあります。
相対的貧困率の上昇を見ても、「衰退ニッポン」では、子どもから大人まで、ギスギスとした人間関係の社会が増幅していることが窺えるのです。
学校現場では「イジメ」や「不登校」、職場においては雇用関係の劣化(イジメ、リストラ、賃金カット、ノルマ追求、追い出し部屋、ブラック企業.etc.)などなど、世の中の息苦しい環境への変化が、「ひきこもり」発生の背景理由としてあるのは、間違いないのです。
Next: 家族が「ひきこもり」になったらどうする?病気ではないが…
「ひきこもり」は病気ではないが、無関係ともいえない
「ひきこもり」そのものは社会参加をしない「状態」を指す言葉です。病気ではないので、必ずしも治療を必要としません。
しかし、当事者にとって「ひきこもり」は、抜け出せない苦しみを抱え、家族にとっても経済的、精神的負担は尋常ではなくなる状況です。
けっして放置してよい問題ではないのです。
「ひきこもり」は「状態」であって、「病気」ではない――というものの、「ひきこもり」が長期化してくると、二次的な精神症状や問題行動が生じかねないのが実情です。
抑うつ、不眠、強迫性障害、対人恐怖、統合失調症、双極性気分障害、パニック障害、パーソナリティ障害、家庭内暴力、摂食障害などが含まれる場合もあるからです。
こうした病気が疑われる場合は、適切な治療が必要になります。ゆえに、専門の医師やカウンセラーによる治療が必要になることもあるわけです。
また、「ひきこもり」の理由を「働きたくない怠け者」だの「世の中への反抗」と決めつける向きもありますが、もちろんこれも間違いです。
働きたくても働けない、苦しい状況にあるのが「ひきこもり」なのです。つまり、内心に深い葛藤を抱えています。
そして、「ひきこもり」の状態は、本人にとっては「危険から身を守る唯一無二の生存手段」ともいえるのです。
このことを誤解すると、接し方を誤ってしまいます。
家族が「ひきこもり」になった時にどうすればよいのか?
「ひきこもり」になる人は真面目な人が多いと言います。ゆえに、将来に対して、真面目な「不安」を抱えています。
「自分のせいで周囲に迷惑をかけている」(自責感)
「あいつらのせいで自分はこうなった」(他責感)
「あんなつらい思いはもう味わいたくない」(拒否感)
「何をやってもダメな気がする」(諦観)
「自分はダメ人間だ」(自己否定)
「他人の目が怖い」(不安.羞恥心)
「思い通りに動けない」(無力感)
「何もやる気がしない」(無気力)
「自分の将来がどうなるのか不安」(閉塞感)
「生きている意味が感じられない」(絶望感)
こうした思いが、ぐるぐる渦巻いているのが「ひきこもり」に陥った人の心です。少しでも早く救出してあげる必要があるでしょう。
「ひきこもり」の人に対して、家族に必要なのは「受容的態度」をとることができるかどうかです。これなくしては、「ひきこもり」の人への支援は始まらないからです。
「安心して引きこもれる場」を提供してあげなければいけないのです。ただし、金銭的要求や暴力に対しては、この限りでないのは、言うまでもないことです。
家族だけで悩みを抱えるのでなく、ひきこもりの「親の会」で悩みを共有したり、カウンセラーなどの専門家の知見を頼るのも大事なことなのです。
これらを通して、「ひきこもり」の人に「生きるエネルギー」や「生きる意欲」の灯をともしていくことが重要といわれます。
けっして、家族だけで、悩みを抱えないことなのです。
特定非営利活動法人の「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」が編纂し、東京都が発行している「ひきこもり家族」のためのパンフレットによれば、「ひきこもり」を回復させる過程は、次のような段階を経ていくことが教示されています。
1. 混乱期….「家族だけで抱えず、話を聴いてもらえる場をもちましょう」
2. 充電見守り期..「家庭を安全基地に。本人の生きるエネルギーを取り戻す環境づくりを」
3. 俯瞰期….「自分を見つめる段階へ。現状を変えないとダメだという危機感」
4. 挑戦期….「支援者や仲間との新たな信頼関係づくりへ(自己選択.自己決定)」
このように焦ることなく、段階的に時間をかけて、「ひきこもり」からの自己解放を援助することの大切さが解説されています。
Next: 許せない「ひきこもりビジネス」の存在
「ひきこもり」を食い物にする「悪徳精神病院」や「悪徳引き出し屋」の存在を許すな
「ひきこもり」の人を家族がもつ場合で、注意しなければいけないのは、「ひきこもり」の悩みを食い物にする悪徳業者の存在があることです。
「99%ひきこもりを解消します」「ひきこもり問題を早急に解決しましょう!」などとアピールして、高額な費用を請求する悪徳業者がゴロゴロあるのです。
過去に死亡者まで出したスパルタ教育で有名な「戸塚ヨットスクール事件」というのがありましたが、学校や寮といった教育施設的な体裁をとって、集団的に「ひきこもり」を矯正する――と称する悪徳業者が後を絶たずに出没しているのです。
なにしろ儲かるからです。
それだけではありません。人里離れたところにある「悪徳精神病院」も同じ穴のムジナです。「治療や医療」といった言葉に騙されてはいけません(悪徳精神病院の実体については、本メルマガの《第56回.2023年7月24日号「世界一ベッド数が多い日本の精神病棟で何が起きているのか?病床スタッフによる患者への暴行.虐待.窃盗.殺人までがやりたい放題――という人権侵害の深い闇!」》というバックナンバーで詳しく紹介しています)。
こうした悪徳業者は、さまざまな輩で構成されています。
「全寮制のフリースクール」などを名乗り、「ひきこもり」や「ニート」「不登校児童」をターゲットに言葉巧みに近づいてきます。やることは、「拉致・監禁」です。
親を不在にさせて(子どもへの暴行現場を見せないため)、予告なく、いきなり当事者の家に数名で押し掛け、当事者を暴力的に拉致してクルマで連れ去ります。
ヤクザや土建業者などの荒っぽいグループや、カルト教団、右翼団体といった輩が、こうしたビジネスに乗り出し、当事者を半年間預かって500万円、1,000万円などといった高額料金を請求するのです。
もちろん、こんなことで、当事者が回復し、健全に立ち返ることなどありえません。かえって恐怖心を植え付けられて逆効果になるだけです。
また、悪徳精神病院も手口は一緒です。ただし、こちらは「合法」という鎧をまとっています。精神疾患という病名を無理やりの診断でつけ、強制入院を行えるからです。
手足を縛るような身体拘束の他に、「医療保護入院」、「措置入院」といった強制的な対応を指示できるのは、最終的権限を有する、精神保健福祉法に基づく、「精神保健指定医」だけだからです。
精神保健指定医は、厚労省の医道審議会が認定する国家資格となっています。特定の医師に非常に強い権限が与えられているのです。
こうした精神病院は、入院患者数をできるだけ多く保てば、とにかく儲かる――からに他なりません。
こんなところに入院させたりしたら、当事者は薬漬けで、数か月後には廃人同様の姿にさせられてしまいます。絶対に、こうした精神病院には近寄らないことです。
Next: 「ひきこもり」根絶に向けて支援推進の「根拠法」をつくれ!
「ひきこもり」根絶に向けて支援推進の「根拠法」をつくれ!
「ひきこもり」に対処する自治体もありますが、全国1,741団体中、「ひきこもり支援推進事業」を掲げている自治体は、たったの1割程度しかありません。
「ひきこもり」の支援は、NPOなどのボランティアに頼っているのが実情なのです。財政的支援すら行われていません。
まずは、「ひきこもりを支援する必要がある」という認識で、政府が「根拠法」を作らなければ、自治体も動けないからなのです。
日本で「引きこもり」をこのまま放置するのは、非常に危険です。家族間の暴力や殺人、心中事件にもつながりかねないからです。
日本を衰退させ、ギスギスした社会を構築してきた自公政権は、その償いの意味でも、責任をもって、一刻も早く「ひきこもり解消」への手立てを設けるべきでしょう。
それには、国会で「根拠」となる法律を作るしかないのです。 次回をどうぞ、ご期待くださいませ。 ※本記事は、神樹兵輔氏のメルマガ『神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる!』2023年10月30日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読を ※初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込880円)。
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神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる!
』(2023年10月30日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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1990年のバブル崩壊から続く「失われた30年」を経て、ニッポン国の衰退ぶりは鮮明です。デフレ下でGDPは伸びず、賃金は上がらず、少子高齢化で人口は減り、貧富の格差も広がりました。いったいどうしてこんなことになったのでしょう。政治、経済、社会、マネーや投資に瑕疵があったのは否めません。本メルマガは、そうした諸分野に潜む「闇」を炙り出しグイグイえぐっていこうとするものです。