「村田製作所は投資対象としてこの先どうなの?」という質問がよく寄せられています。また、村田製作所がどんな会社なのか知りたい人も多いようです。そこで今回はつばめ投資顧問が、長期投資の観点からみた今後の村田製作所について解説します。他にも、村田製作所がどんなものを製造、販売しているのかや業界での立ち位置についても紹介します。村田製作所の株を買うべきなのか悩んでいる方や、すでに株を保有している方はぜひ読んでみてください。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)
プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
村田製作所はどんな会社?
村田製作所は、幅広い電子部品を製造している会社です。
そのなかでもメインの商品となるのが、積層セラミックコンデンサという小さな電子部品です。
積層セラミックコンデンサはスマホやPCなど様々な電子デバイスに使われていますが、村田製作所が製造しているコンデンサの世界シェアは40%となっています。
電子デバイスに必要なコンデンサの世界シェアを40%占めているということは、村田製作所なくしてスマホなどの電子製品は成り立たなくなっているともいえます。
村田製作所は、半導体業界にとってそれほど重要な会社です。
製造している積層セラミックコンデンサって何?
ここでは、村田製作所が製造している積層セラミックコンデンサについて深掘りしてみます。
村田製作所への投資を検討するなら、必ず知っておきたい知識となるのでここで理解しておきましょう。
<積層セラミックコンデンサとは>
積層セラミックコンデンサとは、電気を蓄えたり放出したりする電子部品です。
電気の流れを整えるような役割を果たしています。
素材がセラミックなので、セラミックコンデンサと呼ばれています。
ちなみに、セラミックとは金属ではなく陶器でも使われるような素材です。
コンデンサは電子機器の音量やパソコンの画面の明るさ、冷蔵庫の温度の制御なども行っています。
他にも目に見えるところだけではなく裏では大量に動いていて、高度な製品になるほど多くのコンデンサが稼働しています。
<コンデンサが組み込まれている量>
コンデンサが使用される量は、製品によって様々です。
スマホには1,000個のコンデンサが組み込まれています。
また自動車は電動化が進んでいて、5,000〜8,000個のコンデンサが使用されています。
今後EV化が進むと、コンデンサの需要もさらに増えてくるでしょう。
PCは800個に対してスマホは1,000個と、PCよりもスマホの方がコンデンサの使用量が多いです。
スマホはサイズに対して高度な制御が必要なので、より小さくて高性能なコンデンサが必要なことから大量に使われています。
コンデンサは用途別売上を見てもわかるとおり、通信向け(特にスマホ)が40%と一番多いです。
そのため、村田製作所の売上はスマホの需要に大きく関係します。
次にモビリティ、コンピューターと並んでいます。
Next: 村田製作所の株は買うべきか?投資家が注視すべき強みと弱み
村田製作所の株は買うべきか?
村田製作所は、長期的にみると投資対象としてよさそうです。
なぜなら、今後もさらに積層セラミックコンデンサの市場は伸びていくと考えられるからです。
グレーの部分が村田製作所の主力製品であるセラミックコンデンサを指しています。
画像のとおり、25年 26年 27年 28年になるにつれて市場は大きくなる予測が立っています。
市場が拡大する背景としては、自動車の電装化が進んでいくことやDX化によって産業機器や通信機器の需要が増加すると考えられるからです。
また生成AIブームに伴うAI搭載PCや、AIスマホなどの需要が増えていくことで市場自体は拡大していくと見られています。
ですが、スマホや車載向けの半導体市場が盛り上がってこないと村田製作所の評価自体もあまり上がらない印象があります。
そのため、短期的には苦しい状況があるかもしれないことを頭の片隅に思っておく必要がありそうです。
村田製作所の強みと弱み
村田製作所の今後の株価がどうなるのかを考える際に、会社自体の強みと弱みを知っておく必要があります。
ここでは、村田製作所の強みと弱みについて紹介します。
<村田製作所の強み>
村田製作所の強みとして、以下のものが挙げられます。
- 品質
- 生産効率
- グローバル規模での安定供給力
- 主力製品の高シェア
村田製作所は、セラミックを内製化しているので生産効率を上げつつ高品質な製品を製造可能です。
また海外売上比率が93%を占めていて、グローバル規模で長年安定供給を続けた実績があるので顧客との強い信頼関係があります。
結果的に、積層セラミックコンデンサの高シェアを獲得しています。
<村田製作所の弱み>
村田製作所の弱みとしては、2つあります。
1つは、業績変動が大きな企業体質であることです。
業界ナンバーワンの企業ではありますが、業績の変動が大きな体質の会社であるため株価の乱高下が起こりやすいです。
もう1つの弱みとしては、価格交渉力が少し弱い点が挙げられます。
半導体はあくまでも部品ですので、パワーバランス的にみると最終製品を製造する顧客側の立場が上になってしまいます。
そのため、価格交渉力がそこまで強くありません。
ですが、弱みに関してはどの競合にもいえることで、高シェアを獲得している村田製作所は競合に比べて優位な立場にあるといえます。
Next: なぜ利益率が低下中?業績の推移を分析
村田製作所の業績
村田製作所はスマホブームと同時に、大きく業績を伸ばしてきました。
ここでは、これまでの村田製作所の業績の推移についてみていきます。
<村田製作所の業績推移>
業績推移をみていきましょう。
業績は、右肩上がりで順調に伸びてきています。
営業利益に波がありますが、売上は着実に成長しています。
iPhoneが日本に上陸したのが2008年でした。
そして13、14、15年が一時スマホブームだったので、その追い風を受けて右肩上がりに上昇してきたことがわかります。
2022年3月期に大きく伸びていますが、これは新型コロナウイルスの影響で一時的に需要が急増したことから売上、営業利益ともに大きく成長しました。
<直近の利益率が落ちてきている理由>
直近でいうと、2024年3月期にかけて営業利益が落ちています。
これは一時期のピーク時と比べるとスマホ需要が落ちてきたことや、自動車業界が低迷していることが原因で下落傾向にあります。
他にも、この先半導体市場が伸びていくことを見越して設備投資を加速させていることも考えられるでしょう。
ちなみに村田製作所は、最終製品を組み立てる前の部品を製造している会社です。
そのため、最終製品の販売動向よりも少し前にピークが来るようです。
半導体業界全体が悪くなったのは2019年ですが、村田製作所に関しては2018年の営業利益が近年では底になっていることからもわかります。
村田製作所の競合は?
村田製作所の世界シェアは40%超であることは先ほど紹介しましたが、今後もシェアを維持できるのか気になりますよね。
そのためには、どのような競合がいるのかを知っておく必要があります。
そこで、村田製作所の競合についてみていきます。
<村田製作所の競合>
村田製作所のライバル企業として、以下の会社が挙げられます。
- サムスン
- TDK
- 太陽誘電
この3社が競合他社でシェアを獲得していて、積層セラミックコンデンサの市場は村田製作所を合わせた4社の寡占市場です。
ちなみにサムスンは韓国の企業で、TDKと太陽誘電は日本の企業です。
積層セラミックコンデンサに関しては、7割を日本で製造していることから日本が牽引している市場だといえます。
<積層セラミックコンデンサ市場で日本企業が強い理由>
高度経済成長期に日本の電気機器メーカーが強かったことが、理由の1つとしてあります。
たとえば松下電器や東芝、ソニーなどの日本企業が生活家電で世界を席巻していました。
家電類でもコンデンサが必要だった流れから、日本の半導体企業が家電市場の成長とともに伸びてきた背景があります。
家電に関しては中国勢や韓国勢が強くなってきましたが、部品の分野に関してはシェアを塗り替えられるような事態にはなっていません。
その理由は、積層セラミックコンデンサのセラミックにあります。
セラミックは材質をどう扱うかによってコンデンサの性能が決まるので、積層セラミックコンデンサの製造には高い技術力が必要です。
そのため、簡単には真似できる技術ではなかったことが理由としてあります。
Next: 長期投資家は買いか?村田製作所の株価推移を分析
村田製作所の株価
村田製作所<6981> 月足(SBI証券提供)
2020年の時に需要が急増して、株価は大きく上がりました。
ですが2020年をピークに2年間下げ続けたところ、2024年では大きく上げました。
2024年に株価が回復した理由は、2つあります。
1つは2024年末に発売されたiPhoneの期待によって、売上増加が予想されたことです。
もう1つは村田製作所の競合である太陽誘電が、個人投資家で有名な井村俊哉さんから注目されて話題になったことが挙げられます。
直近は大きく下落していますが、足元の業績やiPhoneの売れ行きがあまりよくないことから期待値が剥落してしまったことが原因だと考えられます。
村田製作所の直近の決算
第3四半期の業績を見ると、営業利益 759億円です。
青枠の前期と前年同期で比べてもほぼ変わらず横ばいとなっていて、大底を脱したような印象があります。
PERは2025年2月現在約20倍で過去平均程度となっていて、割高でもなく割安でもない妥当な水準です。
長期投資として村田製作所を見ている人にとって、慌てるような展開ではないといえます。
ですが四半期ごとの業績でみると利益の変動が激しいので、村田製作所の将来性に確信を持っていないと株を保有し続けるのは難しいかもしれません。
ただ、半導体市場は今後も成長することが予測されているので持っていれば市場の拡大に伴って伸びることが期待できそうです。
2025年2月現在は、配当利回りも2%ぐらいあるので配当を受けながら将来の株価に期待しつつ保有しておくのもいいですね。
まとめ
村田製作所は積層セラミックコンデンサを製造していて、iPhoneの需要が伸びると同時に大きく成長してきた会社です。
村田製作所は業績の変動が激しいため、保有しておくのが精神的にきつくなる場面もあると思います。
ですが、主力製品である積層セラミックコンデンサの需要はこの先も大きくなっていくことが予想されています。
そのため、長期投資としても可能性のある銘柄だといえるでしょう。
(※編注:今回の記事は動画でも解説されています。ご興味をお持ちの方は、ぜひチャンネル登録してほかの解説動画もご視聴ください。)
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『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2025年2月16日号)より※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。