エヌビディアがどこまで伸びるのか注目されています。確かに、生成AIの発達によってエヌビディアの力が大きくなっていますが、果たして今の株価を正当化するほどの楽観をして良いのかと疑問を抱いている人もいるかもしれません。今回は私から一つの見方を提示したいと思います。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
絶好調エヌビディア
エヌビディアの株価は過去1年で3.5倍にもなっています。
OpenAIのChatGPTがリリースされたのが1年ほど前ですが、そこからほぼ落ちることなく上がってきました。
これは業績にも裏付けされていて、売上では四半期ベースで3~4倍、利益は5倍くらいに伸びています。
今後の業績の見通しも非常に良いと示されていて、投資家の期待もどんどん大きくなっています。
過去12ヶ月の利益に対するPERは65倍でかなり高く見えますが、今年の利益が上がるのであれば予想利益に対するPERはもっと下がることになります。
例えば、実績値より利益が倍になるのであれば、PERは半分の32倍くらいに落ち着きます。
一部ではPER28倍くらいになるという予想もあります。
株価は上がってきましたが、業績の増加を加味すると必ずしも割高ではないという見方が広がっています。
ただこれには、「利益が2倍、3倍に伸びる」「利益が継続する」という前提があります。
そう簡単に上手くいくのでしょうか。
好調のワケ
そもそもなぜエヌビディアはこのように利益が何倍にもなるほどの業績を出せているのでしょうか。
<生成AIで使われまくっている>
生成AIの裏では膨大な情報の処理を行っています。
これまではパソコンなどにも使われているCPUでロジックを組み立てていましたが、元々は画像処理に使われていたGPUが、同時に並行して処理を行うAIに適していたのです。
このGPUを作っているのがエヌビディアです。
<シェア100%で生成AIブームの利益を独占>
GPUはAMDやインテルなども作っていますが、生成AIで使われるような高度なGPUに関してはエヌビディアのシェアが100%という状況です。
さらに、AIを動かすためのソフトウエアであるCUDAというプラットフォームもエヌビディアが有していて、AI関連の半導体市場を独占しています。
<価格が高騰>
ChatGPTができて以来、エヌビディアのGPUの需要が増大し、価格が高騰しています。
これは縦軸が価格、横軸が量の需給曲線で、需要曲線と供給曲線が交わったところで価格が決まり、価格×量(長方形の面積)が売上となります。
エヌビディアのGPUの供給曲線が赤線のようになっていて、元々の需要曲線は青の破線のところでした。
しかし、需要が一気に増え、需要曲線が青の実線のところまで右にずれて価格も上がりました。
供給をすぐに増やすことはできないので、実際には上図よりも価格は上がっている状況です。
このような価格の高騰で今エヌビディアは儲けていると言えます。
四半期別の売上高を見ると、1年前の四半期と比べて供給量は2倍くらいになっていて、それに対して売上高が4倍くらいになっているので、価格は2倍以上になっていると思われます。
価格が上がった分に関してはそのまま利益となり、しかもシェア100%ということで、今のエヌビディアは濡れ手に粟の状態となっています。
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