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「影の支配者」D・ロックフェラーの死にほくそ笑むゴールドマンの戦略=斎藤満

先日101歳で亡くなったデイヴィッド・ロックフェラー氏は、表の世界で大富豪として活躍しただけでなく、実際には「影の支配者」と言われるほど、世界の政治経済に大きな影響力を持つ人物でした。今後、相対的にロックフェラーよりもロスチャイルドの影響力が高まると、さまざまな面で均衡が崩れ、変化が生じる可能性があります。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)

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プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

デイヴィッド・ロックフェラー氏の死去で世界はどう変わるのか?

ロックフェラー家当主、101歳の大往生

世界の大富豪で、時に世界の影の支配者とも言われたデイヴィッド・ロックフェラー氏が3月20日、ニューヨークの自宅で亡くなったと報じられました。101歳でした。彼の死は世界に大きな衝撃を与えています。それだけ世界に大きな影響を持つ人物でした。

ロックフェラー家と言えば、ロンドンなど欧州拠点のロスチャイルド家と並んで、世界に大きな影響力を持つ家系です。

もともとはロスチャイルド家の大番頭をしていたといわれるロックフェラー家ですが、ジョン・ロックフェラー1世が石油を発掘し、スタンダード・オイル社を設立し、弟のウィリアムがナショナル・シティ銀行を設立してからロックフェラーが力を増し、いつしかロスチャイルド家と肩を並べる存在となりました。

亡くなったテイビッド・ロックフェラー氏は、このジョン・ロックフェラー1世の、ただひとりの生き残ったお孫さんで、ジョン・ロックフェラー2世の1女5男の兄弟の5男にあたります。この家系、長男がジョン・ロックフェラーを名乗り、テイビッドの長兄がジョン・ロックフェラー3世ですでに亡くなっており、その長男がジョン・ロックフェラー4世で、デイヴィッドの甥にあたります。

テイビッドの2番目のお兄さんにあたるネルソン・ロックフェラーはフォード大統領の下で副大統領を務め、すぐ上のお兄さん、ウインスロップ・ロックフェラーはアーカンソーの州知事をつとめ、甥のジョン・ロックフェラー4世(通称ジェイ)上院議員を務めるなど、政界でも活躍しています。

経済界にも多大な影響力、ロックフェラー関連企業

また、それ以上にビジネス界での影響力が大きいのも特徴で、ロスチャイルドモルガンとともに、世界3大財閥とも言われます。

先に挙げた石油のスタンダード・オイル社は今のエクソン・モービルなど、ナショナル・シティ銀行は今のシティ・グループにあたります。デイヴィッドはチェース・マンハッタン銀行の頭取を務めました。

シティやチェースなどの銀行の他、ボーイング、GMやクライスラー、GE、カーギルやモンサント、NBCテレビ、S&Pなどがロックフェラー関連の企業と言われています。

「影の支配」は陰謀論ではない

さて、今回101歳で亡くなったデイヴィッド・ロックフェラー氏は、表の世界で大富豪として活躍しただけでなく、実際には「世界の影の支配者」と言われるほど、世界の政治経済に大きな影響力を持つ人物でした。

一例をあげると、表に出ない影の組織として「ビルダーバーグ会議」というのがあります。これは戦後早い時期に、オランダのビルダーバーグで開催された秘密会議で、その後毎年秘密裏に会議が開催され、世界の政治経済にわたる重要事項が密かに決められていたと言います。

主要国の大統領、首相人事から、中国の人民元切り上げまで、この会議で決められていたとされますが、この会議に創設当初から参加していたのがデイヴィッド・ロックフェラーでした。他に欧州の王侯貴族、ロスチャイルドなどユダヤ系金融資本も参加し、影響力を行使していたようです。

そして近年は、デイヴィッド・ロックフェラーがこの会議の主役と目されていました。

ヒラリー・クリントン敗北の裏で

この秘密組織としてのビルダーバーグ会議、すなわちデイヴィッド・ロックフェラーは、米国の大統領選挙にも大きな力を発揮し、過去にはビル・クリントンジョージ・ブッシュバラク・オバマ大統領誕生にも、裏で大きな力を発揮したと言われます。

そのビルダーバーグ会議が、去年の大統領選挙ではヒラリー・クリントン候補を推していたと言われただけに、メディアもクリントン氏有利と見ていたのです。

ところがどっこい、実際には僅差ながら、トランプ氏が大統領に選出されたことから、影の支配勢力に何かがあったのではないか、との思惑も見られました。

ビルダーバーグ会議自体が2~3年前にメディアに嗅ぎつけられ、ロックフェラー氏が会見するなど、秘密のヴェールがはがされてしまったこともありますが、デイヴィッド・ロックフェラー氏も少し前から車椅子姿を見せるようになっていたので、氏の影響力が落ちるような何かが起きたのでは、との思惑も広がっていたのです。

ロスチャイルドとともに、世界に最も大きな力を及ぼす「影の支配者」と見られていただけに、デイヴィッド・ロックフェラー亡き後の世界がどうなるのか、後継ぎが誰になるのか、一部では大きな関心事になっていました。

そこへデイヴィッドの死が報じられたので、いよいよその問題がクローズアップされてきました。

Next: 「ロックフェラーの死」をどう利用?トランプ、そしてゴールドマン



崩れゆく世界の均衡と秩序

ロックフェラー財閥の事実上のトップが亡くなったことで、財閥内の混乱、後継問題がささやかれていますが、これまでロックフェラーとロスチャイルドのパワーバランスで保たれていた均衡が崩れ、世界の秩序が崩れる懸念があります。

デイヴィッド・ロックフェラーの後継者としては、自身の息子さんのデイヴィッド・ロックフェラー・ジュニアもいますが、彼は音楽の道に興味があると言われ、ロックフェラー財閥のビジネスにはあまり関心がなさそうです。

むしろ、甥のジェイがジョン・ロックフェラー4世としての立場もあり、最も自然だと思いますが、生前、デイヴィッドとジェイは金融市場でしばしばぶつかり、険悪な関係とも指摘されました。一時経営が苦しかったシティ・グループを、甥のジェイ率いるゴールドマンが飲み込もうとしたために、叔父のデイヴィッドが激怒したと言います。

後継問題がすんなりいかないと、ロックフェラー・グループにはしばらく混乱が続き、グループの結束が弱まる懸念がまずあります。

トランプ氏、ロックフェラーのライバル・ロスチャイルドと接触か

同時に、相対的にロックフェラーよりもロスチャイルドの影響力が高まると、さまざまな面で均衡が崩れ、変化が生じる可能性があります。

例えば、トランプ政権の誕生ですが、デイヴィッド・ロックフェラーが健在であればなかったかもしれません。彼の死が3月20日に報じられましたが、実際にはもっと前に亡くなっていた可能性もあります。あるいは選挙に影響力を行使しうる状態ではなかったのかもしれません。

トランプ大統領は、IS(イスラム国)への攻撃を本格化するといい、そのためにロシアと協力すると言っています。

しかし、ISはもともとロックフェラー系のモンサント社の傘下の民間軍事会社によって訓練を受けたと言われ、オバマ政権下では、ISへの攻撃は手抜きとも見られる状況があり、しばしば武器が「誤って」IS側に回っていたことも知られています。ISへの攻撃には、事前に通告がなされたともされます。

そのISをトランプ大統領が攻撃することは、ある意味ではロックフェラー・グループに喧嘩を売るような行為とも見えますが、ロックフェラーがトランプ氏でなく、ヒラリー・クリントン氏を推していたことからすれば、わからなくもありません。

【関連】ロックフェラーに喧嘩を売るトランプ。2017年のパワーバランスはこう変わる=斎藤満

トランプ氏は選挙前に英国を訪れ、ロスチャイルドと接触していたとの情報もあります。トランプ大統領の誕生は、すでにロックフェラーよりもロスチャイルドの影響力が大きくなっていたことの表れととれなくもありません。

もっとも、ロックフェラーは大統領選後に、ロスチャイルドと和解を求め、トランプ陣営での影響力を持つようになったとの説もあります。

Next: 高まるゴールドマン・サックスの存在感。ロスチャイルド系企業が優勢に



ロスチャイルド系企業が優勢に

いずれにせよ、ロックフェラー・グループの体制立て直しが遅れると、産業界でもロスチャイルド系が勢力を強める可能性があります。

石油関連では、ロックフェラーのエクソン・モービルやシェール企業に対して、ロスチャイルドにはロイヤル・ダッチ・シェルブリティッシュ・ペトロリアム(BP)があります。

金融はもともとロスチャイルドの支配産業で、欧州各国の中央銀行から、バークレイズ、香港上海銀行、ゴールドマン・サックス、メリルリンチ、ハリマン、ヴァンダービルトがロスチャイルド系であり、日本では三井銀行系が入ります。因みに、三菱銀行系はロックフェラー系に入ります。

軍事面では、ロスチャイルド系としては、ビッカース、アームストロング、ロッキード・マーチンが、メディアではロイター通信、ニューヨーク・タイムズ、ABC、CBSなどがあります。

高まるゴールドマン・サックスの存在感

金融市場では一時ロックフェラー系のシティ・グループが市場をリードし、利益を独り占めしていた時期がありますが、トランプ大統領の勝利あたりから、ロスチャイルド系であるゴールドマン・サックスの存在感が高まっています。

一例をあげると、大統領選挙の行なわれた昨年11月7日前後の市場の動きにこれが見られます。開票の途中経過が出始めたのは、すでに8日の東京市場が開いた時間です。当初2人の接戦が伝えられましたが、接戦州でトランプ勝利が伝わるたびに米国株の先物が大きく売られ、これを見て日本株もつれ安となりました。

ここで米株の先物を売っていたのがゴールドマン・サックスと言われます。トランプ氏が優勢と伝えられた時には、米国株の先物は800ドル以上の急落となっていました。日本株もつられ、一時1000円も下げています。

ところが、8日の東京市場が閉まるあたりから、米国株の先物が下げ止まり、今度は急ピッチで買い戻され、ニューヨーク市場が開くころにはむしろプラス圏に戻っていました。ここで先物を買い上げたのもゴールドマンと言われます。

その過程では、「トランプ大統領になれば、大型減税、インフラ投資、金融規制改革が期待できる」との宣伝をして買いを誘いました。

現在のトランプ政権には、財務長官など主要ポストにゴールドマン出身者が加わっていますが、すでに選挙結果が決まろうとするその瞬間にも、ゴールドマンが大きな存在感をもって市場を動かしていたわけです。

この時点で、市場の目はシティ・グループからゴールドマンに移りました。以後、市場をリードするのはゴールドマンと見られるようになりました。

デイヴィッドの生前は、その配下のシティ・グループとジェイが肩入れするロスチャイルド系のゴールドマンが主導権争いをする場面も見られましたが、デイヴィッド亡き後は、金融市場でのロスチャイルド系の影響が強まり、やはりロスチャイルドの影響力が強い各国中央銀行とゴールドマンの連携が予想されます。市場も、彼らから目が離せなくなるでしょう。
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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2017年3月30日)
※太字はMONEY VOICE編集部による

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