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「むずない」という独自の合言葉とともに、シンプルで再現性が高く、判断のブレが少ないFXのトレード手法を広めているスケーターさん。
同じ方法を実践する仲間同士で連帯し、皆で勝ちをつかもうとするスタイルはSNS時代ならではの動きです。そこに至るまでに経験した数々の失敗や苦悩も含め、今回は長時間にわたって本音を語っていただきました。
聞き手:鹿内武蔵
(FX雑誌『外国為替』vol.3より改変/インタビュー日:2023年1月19日)
投資家スケーターさんプロフィール
中2からスケボーばかりしていたら極貧のドン底に。現状打破のためにFXを学ぶも失敗を繰り返して短期間で何度も退場。しかし研究を繰り返した結果、7か月目で自分のトレードスタイルをつかむ。資金4千円から這い上がった金沢在住1988年生まれのスケートボーダー。
「縦積み」で退場寸前まで追い込まれ「横積み」へ
─まず、FXのキャリアを最初から振り返っていただけますか。
FXに触れたのは2015年で、チャイナ・ショックの2日前という、よりによって最悪のタイミングでした(笑)。テレビ越しで見る大暴落のインパクトは凄まじく、マーケットのリアルに圧倒されました。当時はネット中心で勉強し、導いた答えは「損小利大のトレンドフォロー」という、いわゆる王道に寄せて初心者なりに7か月ほどひたすら実行したのですが、結果は連敗続きで。そこで、ヤケクソになって伸びそうだと直感した場面でロットを思い切って積み増すという無茶をやったところ、偶然相場に味方されて初めて10万円勝ちを手にしました。あのトレードをもう一度やりたいと強く思って、そこから徐々に光が差しました。それが2016年の春ごろです。
それからは、「反転する波にいかに隙間なく乗るか」をテーマに研究を続けいていって。結論として、トレンド転換の最初の波、いわゆる第1波にフォーカスすれば勝負できそうだと判断して、深掘りしていきました。2017年には『縦積み』と呼んでいるポジションを大量に並べる方法を確立しました。そのころにFXのブログもスタートしたと思います。
その後の約3年間は、とにかく縦積みに集中し、ブログとメルマガも書き倒す日々でした。そんな中、2020年に一撃で900万円やられる経験をしたんです。コツコツ勝ってお金を増やして、もうすぐ1000万円になりそうというときに、大量のポジションを持ったまま雇用統計に突入してしまいまして…。あと40万円くらいで1000万円に到達するな、という状況だったと思います。
─やってしまいましたね…。試合終了目前でオウンゴールを決めてしまったという。
最低のスーパーゴールでしたね。約300万通貨持ったまま、ギャンブルの誘惑に駆られて若干の含み損を抱えたまま雇用統計に突入してしまいました。一気に200pipsくらい負けて、いきなり損失が700万円になり、そこからロスカットまでの間は絶望して床と一体化しました。ショックが大きすぎて当初は真正面から失敗と向き合えず、意識的に封じ込めていたと思います。それから、翌2021年の春にトレーダー3人でキャンプをしたんですけど…。
─ギャンブルからキャンプですか…。
そこで900万円負けたことを笑い話にしたことで、初めて自分でもその失敗にしっかりと向き合えました。『一撃で900万円負けられるってことは、逆に勝てることもあるんじゃないか?』と思って、積み増しスタイルで900万円を取り返すにはどうしたらいいか考えました。
それまでは1時間足レベルでのブレイクが起これば利確するような、短期の一つの波を狙っていました。一撃で900万円狙うには値幅も必要ですし、ポジションも厚く張る必要があります。そこで月足・週足の優位性に乗って、日足・4時間の波を狙うことにして、1時間足・4時間足での動き出しの局面でポジションを溜めて、動き出したら利益になるという、今までやっていた積み増しを時間軸を上げて試したんです。
それを『横積み』って呼んだり、メルマガにも書いたりしながら練習して、その年の春に実際にトレードを開始しました。その結果、僕の誕生日にあたる2021年の7月29日に、初めて月次で1000万円を獲得しました
─素晴らしい逆転劇ですね! メインの投資スタイルは、スキャル、デイトレ、スイングとかでいうと、どういう区分になるんですか?
デイトレードです。スキャルほど短くはなく、かといってスイングの長期保有でもない。月足・週足の優位性に沿って4時間足などを狙ってるときは2、3日かかりますが、決済までは長くても一週間以内です。大半がデイトレードで終わりますね。
─オーバーナイト(持ち越し)はしませんか?
僕はそれをあまり気にしてません。エントリーの際のチャートの形状でストップロスと利食いを設定して放っておきます。その結果として、日をまたぐこともあります。トレンドフォローを狙うようになってからは、ストップをタイトに置かないので、日またぎを気にしなくなりました。
─なるほど。お話ししていて、かなり研究熱心な印象を持ったのですが、もともとそういう気質なのでしょうか?
どうですかね(笑)。ズボラな性格なので、細かいデータの羅列を延々と追うのは向いていないと思います。実戦で手応えが出たものにしか興味を持てなくて、幅広く何かを学んだというよりは、目線の使い方をじっくりやって、ボリンジャーバンドを煮詰めてみて、本当に叩き上げでここまで来ました。
スケーターから専業トレーダーへ転身
─普段のライフスタイルを教えてください。お名前からして只者ではなさそうですが(笑)。
2児のパパをやっています。小3と年長の子どもがいるんですけど、彼らの送り迎えが生活の中心ですね。というのも仕事はトレードと情報発信だけなので、結構自由にできるんです。送り迎えが朝夕にあるので、その合間でトレードや発信に集中するスタイルです。
─FXを始める前はどんな生活だったのですか? FXや投資が近いところにあったのかなと。
20歳くらいまでは完全にスケボー中心の生活で、スケボーの上達だけを考え続けていて、大学は1年生を2度やって中退してしまいました。
そうなると実家にも居づらくなるじゃないですか。なので、パチスロで資金を作って一人暮らしを始めたんです。フリーターになってからも、スケボーが楽しすぎてバイトもきちんと行かないような状態だったものですから、次第にお金もなくなって、生活もかなり苦しくなりました。石川県には白山という山があるんですがけど、20歳になる年に夏の2か月だけで100万円くらい貯まる山小屋のバイトをしていましたね。
─スケボー最優先の暮らしだったと。山小屋のバイトは楽しそうですね(笑)。
そこで今の奥さんと出会いました。その後は4年間夏山バイトに通いました。夏は山に行って、バイトがないときはスケボーをするという生活を送っていましたが、4年目に結婚して子どもができて、スケボーだけではだめだというスイッチが入りました。
僕が27歳のときですが、縁があってホテルにフロントとして就職しました。手取りは少ないけど正社員でボーナスもあるし、なんとかやっていけると思ったのですが、確定申告のときにちょっとトラブルがあって、納税後の手取りが11万とか12万とかになってしまったときがあったんですね。
その請求は多分間違いなんだけど(笑)、体を使う以外の仕事をしないと自分でどれだけ働いても楽な生活ができない、と本気で思いました。根本的に今までとは違う働き方をしなきゃいけないと一念発起して、そこからネットでいろいろ調べた結果、FXにたどり着いたんです。勘違いから勝手に追い込まれてFXを始めたんです。
─投資、金融商品だとFX以外にも色々な選択肢がありますが、他に行かなかった理由は?
本当にお金がなかったので、少額から始められる前提がないと無理でした。選択肢はFXしかありませんでしたね(笑)。
─少額から始められるのはFXのメリットですね。それが2015年の8月で、チャイナ・ショックが待ち構えていたと。
そうですね。最悪のスタートでしたけど、日々修行で何とかここまでやってこれました(笑)。
「むずない戦法」は本当にむずかしくないのか?
─今、主戦力にしている新手法があるとか。
2022年5月まで続けた積み増しは、正直に言ってハードでした。反転の第1波を狙うので極端な逆張りだったんです。波を見極めるのがとにかく難しくて…。トレンドフォローは第1波後の押しに対して仕掛けますが、逆張りはその前にポジションを持つため、裁量判断の比重が大きすぎました。
その余地をなくすために、現在の僕の戦い方は全てトレンドを判断する目線とボリバン(ボリンジャーバンド)だけで組み立てています。その二つを使って王道のトレンドフォローを狙う手法を、去年の5月から年末までかけて完成させました。これが、コミュニティで呼んでいる『むずない戦法』です。現在では、大きく取れる横積みを月1回だけ狙うのと、むずない戦法でのトレンドフォローを日々狙っています。
─対象の通貨ペアは?
どの通貨ペアでもロジック自体は適用可能です。個人的にはドル円、ポンドドル、ゴールドドルをメインに見ています。その三つだけでも十分にチャンスはあります。どうしても馴染みのある通貨ペアに手が伸びがちですが、条件を満たすならどれでもOKです。
─むずない戦法は完全公開されてるんですか?
むずないのやり方の詳細は「むずないセミナー」という有料講座でお伝えしていますが、セミナーに参加された人には、お伝えした戦い方をTwitter(現、X)でツイートしてもらっています。各時間足のチャートの画像を載せてツイートしてもらって、さらに結果まで載せることをセミナーの活動としてやっています。だからTwitterで調べれば、やり方は多分分かります(笑)
─今日も何人もツイートされてますね。流れが可視化されて盛り上がりそうです。
同じ戦い方をやろうとしている集団なので、通貨ペアごとに違うやり方を繰り出していたらおかしいですよね。皆で攻撃の打ち方をシンクロさせたいので、それを確認し合うのが目的です。自身のアウトプットとしても、「#むずない」とつけてツイートしていただきたいですね。むずないってなんだろうって人は、このタグで検索すると何となく雰囲気がつかめると思います
─言える範囲でいいので、どんな手法か教えてもらえませんか。
もちろんです。ルールは二つあって、一つ目は勢いを見るためのルールです。具体的にはボリバンの±1σの外側に終値があるかどうかに注目します。外側に突き出ているなら、内側に潜るまでずっと外側に走ると考えます。外側にあるときは外側に伸び続ける、内側にあるときは外側にブレイクするまでは内側にとどまる、というのが基本のルールです。
この前提部分では勢いを見ています。外側にあるときは勢いがある、内側にあるときは勢いがないと考えます。これに加えて、±1σを突き抜けた回数でトレンドがどっちに出ているかという方向感を判断します。
上昇トレンドが出る流れで説明すると、レンジから+1σを1回上に抜けたときに、第1波が出たと考えます。その後にミドルラインか-1σで押し目買いが入るだろうと予測します。これが2波です。そして+1σを下抜けてから、実体で-1σを割らずに2回目の+1σブレイクをしたら、トレンドが発生して第3波ステージに移行したと判断します。
─迷う余地が少なそうで、再現性が高そうですね。
単一のチャートで見れば非常にシンプルです。ただし、この状況を作っている場所が時間足ごとに異なり、4時間足ではここ、日足ではここ、という具合に入り組んでくるので複雑になります。優先順位に関しては「日足が最優先」と決めてしまえば、日足のここしか触らないという風にルールが明確になります。1回目の突入は調整かもしれないから見送る、その後2回目の突入以降は、ひたすら4時間足や1時間足で買いを狙っていくというイメージです。
これがむずない戦法で一番重視している「ボリバンSTF」を使った環境認識の方法です。ここからさらに目線の見解も付け加えていきます。2回目の突入後の第3波ステージに入ってるころには、ダウ理論で考えても上昇トレンドになっていることが多いです。逆に第1波が出た段階では、ダウ理論では上昇トレンドになりづらいので、必然的にいったん押してくることが多くなります。
─ボリバンの±1σは分かるんですが、STFというのは…?
Sは僕の名前のスケーターのSで、TFはタイムフレームです。かなり適当に聞こえますが、必要に迫られてネーミングしちゃいました。MTF(マルチタイムフレーム)でやっているという意味を込めて、それに寄せています。
このボリバン±1σの境界線に注目する方法は、トレンドフォローだけでなく逆張りでも使えます。トレンドの反転まで至らなくても、いったん反発して戻すポイントを見るのにも有用です。基本的な見方のルールは決まっていますが、それをどう利用するかは自由です。さまざまな手法と組み合わせやすいので便利ですよ。
─この環境認識、ボリバンSTFが基本にあって、エントリーや決済は自分のやり方でもいいわけですね?
そうですね、それも可能です。第1波が出たあとに日足が確定した時点で上を狙うか下を狙うべきなのかが決まっちゃうので、その日の買いと売りの目線は常に固定されます。今日は買いのチャンスしか拾わない、売りのチャンスしか拾わないという前提を踏まえた上で、同じ見方で上方向の第1波ステージ発生が見えたら、ミドルラインや-1σで買って、終値が-1σを割ったら損切りするだけです。第1波ステージ発生が短期で見えたら開戦の合図ですね。本当に隅から隅までこれを使い倒すだけで、僕の戦い方は出来上がっています。
─なるほど。目線が固定されるのは初心者もやりやすそうですね。
むずないは手法としてはシンプルです。勝率や値幅は突出しませんが、一貫させやすいのが最大の強みでしょうか。ルール外のことさえしなければ、トータルで十分プラスにできる手法だと思います。
アドリブ=裁量という誤解
─一貫性とか繰り返しって、トレードにおいて非常に重要なキーワードですよね。退場していく人たちは、一貫性がなくて乱れまくって最後に一か八かの勝負をしてしまいます。
とても大事だと思います。僕自身のトレードのスタートが、短期の波の中を積み増しするという、再現性が乏しい手法でしたから。短期で伸びるかどうかが肝なので、伸びる前に決め打ちでボタンを押すしかないんです。本当に危なっかしい戦い方をしていたと振り返って思います。今ではその対極の、ごくシンプルなやり方を実践しているので、まるでトレードをしていないかのごとく精神が楽です。
─していませんか(笑)。
以前のやり方と比較すれば利益の伸びは控えめです。ただし今はロットを厚く張れることで欠点をカバーできています。もし最初から順張りだけだったら、僕の性格的にじれったくなって余計なことをしていたかもしれません。
─むずない戦法は、どちらかといえば初心者向けですよね?
そうですね。シンプルで大勝は難しいものの、やりやすさがあります。利益を伸ばすことがそんなにできないというか、伸ばしたところでさほどメリットがない手法なんです。リスクリワードが1:1の勝ちを手堅く積み重ねていこうという考え方なので、本物の投資にかなり近いやり方です。投機として見ても、心に優しいやり方だと思います。
─アドリブ要素は極力排除すべきということですか?
その通りです。アドリブ=裁量というのは間違いです。裁量を発揮する部分は、チャートに映ったローソク足の波形認識の部分だけです。その結果、どういう戦い方を仕掛けるかは仕組みに任せるべきです。さもないと思い通りにならなくて、フラストレーションがたまって絶対バカをやっちゃいますね。
─なるほど。環境認識に裁量の要素が入るのは仕方ないとしても、そこから先のもっとコアなお金の部分に裁量が入ると心が耐えられないということですか?
やり方、戦い方、攻撃の打ち方の部分はあらかじめ決まった方法を忠実に実行するのが強いです。そこに自分の考えを挟むべきではありません。
気分とか体調もトレードに影響しますよね。積み増しという不確実な手法をメインで戦ってきたので、神頼みではないですが、目に見えない力すら味方につける必要があると本気で思っていました。トレードの際は、自分の心のあり方には常に神経を尖らせています。
目標は、全員がFXで勝つこと
─今後、中長期で「これをやる!」という目標はあるんですか?
夢みたいな話ですが、発信を聞いている人全員が勝つことです。そこに向かって走るのが、発信者の責務だと思っています。FXについて発信することで、他人の人生を大きく揺さぶっている自覚があります。とりわけ僕のもとに来るのは熱心な方が多いんです。そういう人に、「勝てませんでした」では絶対に終わってほしくありません。そういう気持ちが去年のむずない戦法誕生につながりました。本気で勉強してる人には一人残らず勝ってほしい。そのために僕ができることを一つずつクリアしたいです。
─熱い目標ですね。最後に読者に向けて熱いメッセージをお願いします!
勝っても負けても別に構わないと思えるような、身を預けられる戦い方を一つでも手に入れてください。信頼できる武器がないと、値動きを追いかけ続けて延々と振り回されてしまいます。自分の得意技を一つ見つけることを第一目標にして突っ走れば、明るい未来が待ってます!
インタビュー日◎2023年1月19日
投資家スケーターさんのSTF理論を基にしたチャート分析アイデア
source: 外国為替 ドル円日足
source: 外国為替 ドル円1時間足
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