円安は止まらず、金が上がり、株式市場はバブルの様相を帯びている。しかし、経済学者・池田信夫氏は「見えている現象の裏では、日本経済の構造的な崩壊が始まっている」と語る。急速に進む円安、ドルの信認低下、労働規制強化による供給力の低下。いま起きている変化は、一時的な景気循環ではなく「体制の転換期」だと言う。
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円安を加速させた「積極財政」と市場の円売り
高市政権誕生後、わずか1週間で円は5円も下落した。 1日1円ずつ進む円安――その背景について池田氏はこう指摘する。
「高市首相は“ニューアベノミクス”を掲げているが、安倍政権とは本質的に違う。安倍政権は金融緩和と同時に財政健全化を目指していた。一方、高市政権は財源を考えずに積極財政を行うと発言しており、これは明確な円売り要因になる」
実際、海外ヘッジファンドは円の空売りを仕掛けており、為替は1ドル160円が介入ラインと見られている。
ドルの信認低下――金とユーロが買われる構造転換
円安だけでなく、世界的にも「通貨の力学」が変わり始めている。池田氏は「トランプ政権以降、ドルの信頼性が揺らいでいる」と分析する。
「アメリカは基軸通貨としての地位を自ら手放そうとしている。トランプは“ドル高は輸出を妨げる”と発言し、ドル安政策を続けてきた。しかし、ドルが信頼を失えば、世界は金やユーロへ資金を逃避させる。実際、金価格は今年だけで50%上昇し、ユーロも強含んでいる」
戦後80年続いたドル基軸体制が崩れれば、国際経済は通貨の多極化という不安定な時代に入る。日本の輸出入、企業収益、投資行動のすべてに影響を及ぼす構造的変化だ。
物価対策がインフレを助長する皮肉
高市政権の減税・給付金政策は「物価高対策」とされるが、池田氏は「それ自体がインフレ政策だ」と断じる。
「インフレを抑えたいなら、需要を冷ます必要がある。ところが、減税や給付金は逆に消費を刺激し、物価を押し上げる。円安が進めば輸入物価も上昇し、さらに悪循環が続く」
供給能力が落ちた状態で需要だけを膨らませれば、結果としてスタグフレーション(不況下の物価上昇)を招く。
株式バブルは「2008年型の崩壊」を迎える可能性
現在の株価上昇についても、池田氏は「AIバブル」と表現する。
「2008年のリーマン・ショック前とよく似ている。 債券も原油も下がっているのに、株だけが上がり続けている。何かのきっかけで、バブルが弾ける可能性がある」
経済のファンダメンタルズ(実体)を伴わない株高は、いつか必ず反動を伴う――池田氏の警告は冷静だが重い。
「働き方改革」が日本の潜在成長率を下げた
池田氏が最も深刻と見るのは、金融でも財政でもなく「労働供給力の低下」だ。
「働きすぎを是正するのは一見よいことだが、知的労働者まで一律に縛ると、生産性が下がる。財政出動で需要を作っても、働く時間が減れば供給が追いつかない」
この「供給力の低下」こそが、日本経済の長期的な足かせだという。
池田信夫「2026年の日本経済シナリオ」
「円安と株高の表面だけを見れば景気は良く見える。だがその下では、ドル体制の崩壊と日本の供給力低下という深刻な問題が進行している。これは単なる景気循環ではなく、構造的な転換期だ」
池田氏は2026年にかけて「通貨体制」「財政構造」「労働市場」の3つが同時に変化する「構造危機」に入ると見る。
Zoomウェビナーで語られる「2026年の日本経済はどう動くのか」
この分析をさらに深掘りし「2026年の日本経済はどう動くのか」を読み解くオンライン講演を開催します。
<Zoomウェビナー情報>
イベントタイトル: 円安・金利・株価 ― 2026年の日本経済シナリオ
日時: 2025年11月15日(土)10:00~11:30
形式: Zoomライブ配信(後日録画視聴あり)※質疑応答あり!
登壇者: 池田信夫(『池田信夫ブログマガジン』著者)
参加費: 5,500円(税込)
主催: まぐまぐ
詳細・申込はこちら→ https://peatix.com/event/4630529/
【登壇者プロフィール】
池田 信夫(いけだ・のぶお)アゴラ研究所 所長/経済学者。東京大学経済学部卒業後、NHK入局。その後、経済学の研究・政策論評を行い、著書に『アベノミクスの幻想』『今さら聞けない経済教室』などがある。現在はアゴラ研究所を主宰し、メディア・経済・技術の交点から社会を分析している。
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