12月5日のFOMC前に9月PCE(米国個人消費支出)統計が公表されるが、ヘッドライン2.8%、コア2.85%前後――と数字は見えている。FRBは実体経済を掴めず、利下げも据え置きも「どちらでもいい」状況だ。米国が迷いながら最小単位で利下げする局面では円安になるアノマリーが再現中。感謝祭からクリスマス休暇に入り、海外資金流入は細る。12月FOMCに漂うのは「まっ、このへんでいいか」という虚無感だ。
プロフィール:脇田栄一(わきた えいいち)
FRBウォッチャー、レポートストラテジスト。1973年生、福岡県出身。個人投資家を経て東京都内の大手株式ファンドでトレードを指南。本来は企業業績を中心とした分析を行っていたが、08年のリーマンショックを経験し、マクロ経済、先進国中央銀行の金融政策の影響力を痛感。その後、FRBやECBの金融政策を先読み・分析し、マーケット情報をレポートで提供するといった業態を確立。2011年にeリサーチ&コンサルティング(現eリサーチ&インベストメント)を起業。顧客は機関、個人投資家、輸出入企業と幅広い。ブログ:ニューノーマルの理(ことわり)
米利下げでも円安
FOMC前の12月5日に、9月PCE(米国個人消費支出)関連の統計が公表されるとのこと。
別に5日を待たなくても、ヘッドラインが2.8で、コアが2.85(2.9)あたりでしょう?となると、12月利下げの確率って実際45%くらいでしょうね。FEDウォッチはバイアスが掛かっているので(投資行動にバイアスが伴うことは必然)。
実際には「据え置きでも、利下げでもいい」という考えに至るしかない。会合の参加者も実体経済がどうなっているのかわからないので。
マーケットも反応しづらいでしょうね。それまでのマクロも低調だけど必然というか。
当ブログは9月20日に、「米国の連続利下げによって、ドル安どころかむしろ円安になる」という内容の記事を上げました。
過去の(自身の)記録を見れば、政権との関係で躊躇しながら利下げすればこうなるというアノマリーは存在するわけだし、米国の機関の資産規模が大きくなっていればキャリートレードは活発化するわけです。
つまり、迷いながら最小単位(25bp)で、しかも間隔をあけながら……みたいな状況だと、米国が政策金利を下げても円は売られるんですよね。まぁ、いつもこの通りになるってことはないわけですが。
「虚無感」は当然
で、今はそのとおりになっていて(米利下げなのに円安)、米国の状況から考えると当面このままですね。政府日銀が介入しても政策金利を引き上げても無理なので、政治家のメンツのために国資を投入する必要はないでしょう。効果がないので。
結果的に円高になったとしても、それが理由ではない。12月‐1月という時期の問題でそうなるだけで、無駄に日本が動くべきではない。
10月は過去最大の海外からの資金流入(買い越し)があり、それが日経を押し上げたわけだけど、米国では11月27日が感謝祭で休場でしょう?翌28日も短縮取引でクリスマス休暇に突入するタイミングなんですよね。(※編注:原稿執筆時点2025年11月27日)
それでいくと海外からの資金流入ってこの時期減少しキャリー環境もちと変わり資金流入が細る。だからやや円安が落ち着いているって見方もできるのだけど、商いは薄くなるので値が跳ねやすくなる側面もある。なので一概にはいえないわけですが。
だから日本が何かをやるのであれば、通貨当局はこのような背景を知っておくべきだし、新政権にも説明しないといけないと思うんですよね。しているのかもしれないが。
タイトルの12月FOMC「虚無感」っていうのは、FRBも迷走しているし、10月にがんばり過ぎた米国の機関がそこにあまり期待していないというか、「まっ、このへんでいいか」とかそういう感じなんじゃないかなと感じたからです。
本記事は脇田栄一氏のブログ「ニューノーマルの理(ことわり)」からの提供記事です。
※タイトル・リード・見出しはMONEY VOICE編集部による