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こうすれば円安は止まる。金利差では説明できない真因と、市場の信用を取り戻す唯一の条件=脇田栄一

高市内閣の発足以降、円安は加速し、物価高への歯止めはまったく機能していない。金利差では説明できない円独歩安が続くなか、責任ある財政拡張の中身も、通貨供給の出口も示されないまま、政権は解散総選挙へと突き進んだ。市場が日本を信用しなくなった理由はどこにあるのか。円安を本当に止める手段は残されているのか。マーケットの視点から、日本経済が直面する現実を整理する。

プロフィール:脇田栄一(わきた えいいち)
FRBウォッチャー、レポートストラテジスト。1973年生、福岡県出身。個人投資家を経て東京都内の大手株式ファンドでトレードを指南。本来は企業業績を中心とした分析を行っていたが、08年のリーマンショックを経験し、マクロ経済、先進国中央銀行の金融政策の影響力を痛感。その後、FRBやECBの金融政策を先読み・分析し、マーケット情報をレポートで提供するといった業態を確立。2011年にeリサーチ&コンサルティング(現eリサーチ&インベストメント)を起業。顧客は機関、個人投資家、輸出入企業と幅広い。ブログ:ニューノーマルの理(ことわり)

どうすれば円安に歯止めがかかる?

高市内閣が発足した10月下旬から円安が急速に進み、物価対策どころか物価上昇を援護してしまい、これに歯止めが掛からない。そして現内閣はその止める術を知らないまま解散総選挙に打って出た。大変な振る舞いに映る。

では、どうすれば円安に歯止めがかかるのか?

金利差というストーリーを信じる人たちも、米国が連続利下げして日本が利上げしても、まったく円安に歯止めがかからない事実を見て困惑している。

この金利差主義の前提には高金利通貨は買われやすい、といった財政規律を無視した認識が蔓延しているからである。

今回のような「無制限に増刷する」といった印象を持たれてしまうと「通貨安と悪性インフレがこの水準であるにも関わらず、財政も無視して増刷するのか?」といった認識もマーケットで広がることになる。

たとえば、米国はどうだろう?米国で財政拡張をしても通貨安不安は発生しない。それは基軸通貨だからということではなく、財政出動が経済成長に直結しているからである。

日本の場合は違う。以前からお伝えしているが、財政出動しても成長に直結しない。急激な少子高齢化と低賃金によって需要が見込めない。費用対効果で1以上のものはほとんどない、といった大きな事情を抱えている。

インフレ対応にしてもそうである。米国は迅速に、そして急激に利上げする。日本は政治への配慮からそのようなことはあり得ないし、それ以前に消費に基因するインフレが発生しない。むしろ円安インフレといった利下げ要因のインフレが発生しているのが現況だといえる。

そして今回は露骨だが、高市総理によって責任ある財政拡張とは言いつつも、その責任の部分が不明なまま。米国の場合は流動性の出口は出口戦略として正確にコミットし、確実に通貨供給を止める(マーケットから信用される)。日本は「通貨供給のブレーキ」がわからないので、信用されていない。

積極財政といえばMMT理論たるものがあるが、それは国内における閉鎖的な考えで、国際的な為替マーケットでは通用しない。デフォルトはしない(国内MMT論者)、しかし通貨は売られ毀損する(国際マーケット)。止まらないインフレによって、家計がデフォルトに近づいても構わないのだろうか。

評論家のコメントなど見かけるが、金利差神話を盲目的に発信し続ける人たちはマクロ経済寄りの人たちで、彼らは市場参加者でもなくマクロファンドの考え方も持ち合わせていない印象を受ける。MMTを信じ込む人たちは、リフレ派ともよばれているが、通貨安インフレという概念が存在しない。

「悪性インフレが起こり、それでも財政を拡大する。そしてその効果も出口もわからない。よって通貨は売られ輸入インフレは継続」という流れである。

この考え方であれば通貨は毀損し物価は上昇し続けるだけである。エコノミストの中にも、マーケット寄りの考え方の人たちはいるが、このような人たちは表に出てこない。テレビ向きでないからである。だからビジネス番組では現場とかけ離れた論調が中心になる。

現在の円安を止めるには?

防衛ラインといわれる160円のところで、通貨当局が為替介入を発信した。しかしそれは今までと変わり映えしない。「断固たる」「あらゆる手段」といった精神論だけで、数字的なものはでてこないから、むしろ追い込まれたNGワードだと看做される。

これまでどおり時間稼ぎになるか否か(為替介入)、といったところで、さらにいえば現在の巨大な為替市場の中で、米国と連携したとしても為替介入に効果ナシ といえるだろう。(米国はこの状況でも日本の単独介入に釘を刺している。※為替報告書)

米ドル/円 週足(SBI証券提供)

いま高市政権が円安を止めたいということであれば、抽象的な言葉ではなく、具体的な中央銀行的なフォワードガイダンスを発信することである。原因が積極財政なのであれば、放漫財政ではないことを数値でコミットしなくてはならない。これだけで円独歩安は止まる。

国債発行のルールにコミットする。制度化まで踏み込めばもっと効果はある。

・国債発行額を「GDP比でいくらまで」と数値化する
・時間軸を明確にする
・補正予算における発動条件の数値化
・その他発行ルールの取り決め

…このようなガイダンスを総理自身が発言することで、「政治判断でまたコロコロ変わる」といった日本の印象は確実に変化する。日本の経常収支は第一次所得収支によって大幅な黒字である。よって、経常赤字で利上げを講じた通貨危機の国々と比較し、上記のようなガイダンスとともに円高反転のチャンスを日本は持っているのである。

しかし、このような日中関係を含む大変な国難の中、困難に向き合うのではなく逃げるように現総理は解散総選挙を表明した。国民生活は完全な置き去り状態で、本当に残念なことだといえる。

image by:yoshi0511 / Shutterstock.com

本記事は脇田栄一氏のブログ「ニューノーマルの理(ことわり)」からの提供記事です。
※タイトル・リード・見出しはMONEY VOICE編集部による

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