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高市首相の積極財政で日本金利が2008年以来の高水準に 「金利のある世界」で株式市場はどう動く?

2025年度の政府補正予算案が閣議決定され、その規模は新型コロナ禍以降最大となりました。高市首相の財政積極姿勢が色濃く反映され、財政拡大に伴い日本の長期金利は2008年以来の水準まで上昇しました。「金利のある世界」へ移行する日本市場において、どのような投資戦略が有効になるのかを解説します。(※2025年12月4日収録のマネックス証券YouTube動画に基づく内容です)

補正予算の概要と背景

山口慧太氏(以下、山口):マネックス証券のぐっち〜こと山口です。今週もニュースをピックアップして、市場への影響を確認していきます。どうぞよろしくお願いします。

ーー本日はどのようなニュースに注目していきますか?

山口:2025年11月28日、日本政府が2025年度の政府補正予算案を閣議決定しました。規模は18兆3,034億円と、新型コロナウイルス禍以降で最大となっています。

高市首相はかねてから財政積極派と言われていましたが、今回の補正予算、いわゆる追加予算において、かなり大規模な金額を決定したことになります。

ーーそもそも補正予算とはどのようなものでしょうか?

山口:前提として、年度の初めに「どの程度お金を使い、どの程度の収入が見込まれるか」を決める当初予算というものがあり、「それでは足りない、もっとお金を使う必要がある」と追加的に編成される予算を補正予算といいます。

ーー追加で編成される予算ということですが、そもそも財源はどこから賄っているのでしょうか?

山口:投影資料の「歳入」の欄に記載されています。税収が当初より増加している点も指摘されていますが、実際にはそれだけで賄えないため、国債を発行することによって追加で資金を賄っています。

ーー今回の追加予算はコロナ禍以降で最大ということですが、これは市場にとってどのくらいサプライズになるのでしょうか?

山口:もともと高市首相が財政積極派であるため、ある程度身構えることはできたと思います。ただ、コロナ禍と比較して何か大きなショックがあったわけでもなくこの規模の補正予算が決定したことは、一定のサプライズにはなったと思います。

補正予算の主要項目と投資機会

ーー実際にこの補正予算は何に充てられるのか、注目が集まる項目についてもおうかがいしたいです。

山口:主な支出内容については、財務省から発表されています。高市首相が掲げているように、足元の物価対策や危機管理投資など、成長を後押ししていく分野に投資資金を投入していくことが資料から見て取れます。

そのような分野の1つとして、現在株式市場でも活況となっているAI関連等がそれに該当します。投影資料の下部に示されている「経済安全保障の強化」の項目に、「『AI・半導体産業基盤強化フレーム』に基づく官民投資の促進」とあり、国を挙げてAIや半導体分野への投資を進めていく点に注目できます。

山口:もう1つ、「防衛力と外交力の強化」の項目では、GDP比2パーセントを水準とした防衛費を増額していくことも示されています。AIの分野にも相応の金額が振り分けられますが、防衛費に関しては1兆6,560億円とかなり大きな規模となっています。

株式投資のヒントとして、三菱重工業を含む、「重工三社」と呼ばれる防衛産業関連株に資金が流入しています。さらに、防衛費をGDP比2パーセント水準とし、将来的には外部環境次第で3パーセントまで引き上げる目標があることから、防衛産業への資金投入は続くと見込まれます。このような見通しを踏まえ、防衛産業にフォーカスしてみる投資戦略も取れるかと思います。

財政拡大に伴う金利上昇の影響

山口:一方で、財政を拡大することは、良い影響ばかりではありません。その最たる例として、足元で日本の金利が上昇してきている点が挙げられます。

こちらのスライドには、短期金利と呼ばれる2年金利、長期金利と呼ばれる10年金利、超長期金利と呼ばれる30年金利の推移をグラフで示しています。2021年以降、各年限の金利が上昇してきていることがわかります。

中でも、市場のベンチマークとなっている長期金利(10年金利)は、2008年以来の水準となり、足元では1.8パーセントを超える水準まで上昇しています。

ーー2008年には何があったのでしょうか?

山口:2008年にはリーマンショックがありました。それ以降、日本の金利はどんどん下がっていきます。それまで市場では、一定のインフレーションが想定されていましたが、リーマンショックの発生により、株式市場と債券市場の双方に大きなインパクトがありました。その結果、政府は財政拡大に踏み切ることになります。

その後、日本銀行は金融緩和を推し進めていき、長らく低金利時代が続きました。そのような中でコロナ禍を経て、日本でもインフレーションが起きるようになりました。その過程で長期金利も上がってきたという背景です。

ーー特に2025年のあたりを見ると、超長期金利と長期金利の差も広くなり、超長期金利が上昇していることがうかがえます。

山口:おっしゃるとおり、超長期金利は黒い線で示していますが、1999年以降で最も高く、2025年時点で過去最高値を更新しています。そして、なぜ超長期金利のほうが上昇しているかが、ここまで話してきた財政の動きと深く関わる部分となります。

山口:超長期金利は、財政赤字の拡大や政府の債務残高の増加によって、市場が「日本の財政が持続可能なのか?」という懸念を持ち、その結果として上昇してきたという背景があります。

ーー期間が長くなるほど将来の見通しが読みにくくなり、投資家としてもそのぶんのリスクを上乗せしたいということでしょうか?

山口:そのとおりです。スライドにあるように、リスクプレミアムを要求していく点ももちろんですが、債券価格変動の期間は、長くなればなるほど価格変動が大きくなります。不確実性が高まることでボラティリティ(変動幅)が上昇し、それが金利の上昇につながります。

先行きのヒントとしては、高市首相が来年も同様に積極財政を掲げて、財政赤字や政府債務残高の増加を市場が意識し続けた場合、長期金利や超長期金利がさらに上昇していく可能性があり、日本がより「金利のある世界」に近づいていくと想像しています。

金利上昇局面で有利・不利なセクターと銘柄選定

ーー「金利のある世界」というのは、例えば私たちが銀行にお金を預けている時、金利というリターンが得られるなど、身近に感じやすい側面があります。実際にこの市場を見るうえで、「金利のある世界」というのは、どのようなところに着目すれば良いのでしょうか?

山口:スライドに、金利の上昇局面において、有利・不利となりやすいセクターや業種、ファクターをまとめました。みなさまも想像しやすいかと思いますが、金利が上がると、銀行は利ざやが拡大するケースがあるため、銀行や保険といった業種は金利上昇局面で有利とされています。

一方で、不動産やREIT(リート)は、お金を借りて不動産投資を行うビジネスモデルであるため、金利が上昇すると資金調達コストが高くなり、一般的には不利と言われています。

それ以外にも、キャッシュが多く金利収入が増えやすい企業は相対的に有利となる一方で、債務残高が大きく利払い負担が増えてしまう企業は不利な局面となります。

バリュー企業とグロース企業の関係についても、このような財務構造の違いとイメージが似ています。新興企業やグロース企業は手元に十分なキャッシュがないことが多々あり、そのような企業は借入によって運転資金を賄っていると考えられます。金利上昇局面では利払い負担が増すため、不利とされています。

一方で、バリュー企業は財務基盤が磐石であることから、一定の企業運営ができる点で有利と考えられます。

ーーグロース企業は将来の利益に期待して買われることが多く、金利が上がるとそのぶんの価値が引かれてしまうということでしょうか?

山口:もちろん財務面だけでなく、株式の評価に関しても、金利が上がると評価に用いる割引率が大きくなり、理論価値も低下します。そのため、金利上昇局面では、グロース企業が不利になりやすい側面もあります。

「銘柄スカウター」のご紹介

ーー実際に「金利のある世界」において有利な企業として、銀行や保険、キャッシュリッチ企業、バリュー企業について挙げましたが、銀行や保険といった業種は比較的着目しやすいかと思います。バリュー企業が実際どのような企業なのか、当社のツールである「銘柄スカウター」を使った絞り込み方法をご紹介します。

ーー「銘柄スカウター」のWebサイトを開き、「10年スクリーニング」のタブを押します。そうしますと、「マイスクリーニング:バリュー」として、業種や時価総額決算月などで絞り込むことができます。

ーーこのように、「詳細条件」の「条件を追加する」から絞り込むことができます。「自己資本率50パーセント以上」は借金に頼らず財務が安定した企業です。また、PBRというのは基本的に会社の資産に対して株価が割安かどうかを表す指標で、1倍以下が割安だと判断されます。今回は「PBRが0.7倍以下」で設定します。

ーーバリュー株といっても、業績が悪化していて割安に見えるだけのケースは避けたいため、今回は「前年同期比の営業利益が18パーセント以上」「10年間の最高更新の売上高が予想される銘柄」も絞り込み条件として追加します。

ーーこれらの条件でスクリーニングすると、68件の企業が該当します。自己資本率で比べたり、チャートを開いて株価の上昇を図表で比べたりすることが可能です。

山口:今回の条件では68件がスクリーニングされたと思いますが、より絞り込むにはどのようなことがご提案できますか?

ーー例えば、本日(2025年12月4日)撮影月の「12月に決算がある銘柄」について絞り込むことも可能です。「12月」を選択しスクリーニングすると、対象銘柄を6件に絞り込むことができました。

ーー「分析指標」のタブを押すと、予想配当利回りも一気に比較することが可能です。

山口:利回りが高いほうがより安く買うことができるため、割安かどうか指標としては配当利回りも重要です。ここでは、非鉄金属が3銘柄ほど出てきていますね。

ーー非鉄金属のセクターには、他にどのような銘柄がありますでしょうか?

山口:2024年からかなり調子が良いフジクラや、JX金属等がが入っていたと記憶しています。かなり好調なセクターで、銘柄の内容は確認する必要がありますが、割安感があればチェックしても良いのかなと思います。

ーー「銘柄スカウター」では、このように銘柄を厳選して、企業概要を比較することができます。

山口:本日は、政府の補正予算案とその影響について解説しました。参考にしていただければ幸いです。ご視聴ありがとうございました。

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