2004年に5万円ほどで買えたメープルリーフ金貨は、いまや98万円に迫っています。この20年で起きたのは、単なる「インフレ」ではありません。リーマン・ショック、地政学リスクの激化、米国一極体制の揺らぎ――それらが示すのは、ドル基軸体制そのものの動揺です。では、この流れは今後20年でどこへ向かうのか。アメリカの復権はあるのか、それとも世界は多極化と混沌を深めるのか。金価格の軌跡を手がかりに、次の時代の通貨秩序と資産価値を考えます。(『一緒に歩もう!小富豪への道』田中徹郎)
株式会社銀座なみきFP事務所代表、ファイナンシャルプランナー、認定テクニカルアナリスト。1961年神戸生まれ。神戸大学経営学部卒業後、三洋電機入社。本社財務部勤務を経て、1990年ソニー入社。主にマーケティング畑を歩む。2004年に同社退社後、ソニー生命を経て独立。
20年で金価格は20倍に…
僕がこの事務所を始めてから20年以上がたちますが、開業当初の2004年4月、1オンスのメープルリーフ金貨は4万円台で買えた記憶があります。
ホンマかいなと思って、以下のように計算してみました。
当時の金1オンスの価格は430ドルあたり、ドル円レートは1ドル=104円ほど。
従って、金1オンスは「430ドル × 104円 × 105% ≒ 46,956円」(※当時の消費税は5%でした)。
このように確かにメープルリーフ金貨は4.7万円です。店頭価格は5%ほど上乗せされますから、5万円ほどだったでしょう。
相場を見ている人はご存じだと思いますが、現在メープルリーフ金貨の店頭価格は98万円ほどです。
果たして20年前、金の価格がこれほど上がると考えた人はいなかったと思います、
次の20年後は?
では、20年後はどうでしょう。
この質問は、「現在のドル基軸体制がどの程度混乱するか、あるいは安定するか」という問いと同意だと思います。
金は絶対的な価値を持つ資産であると同時に、通貨としての性格を持っています。
さきほど20年前と現在を比べましたが、振り返ればこの間は、以下のように世界の政治や経済が大きく混乱した時期と一致しています。
- リーマン・ショック
- 中国の台頭とアメリカの地盤沈下
- オバマ元大統領による「もはやアメリカは世界の警察ではない」宣言
- ウクライナ戦争
- トランプ大統領によるアメリカ最優先主義
言い換えればこの20年ほどは、ドルを基軸通貨とした世界の通貨秩序が、崩壊に向かって動き始めた時期といってもいいでしょう。
その観点でさらにさかのぼれば、確かに2004年より前の20年間は、以下のように、世界がドル基軸体制で安定した時期でもありました。
- 冷戦の終結と西側の勝利
- G7体制とドル基軸通貨体制の確立
- 日本経済の地盤沈下とアメリカ一極体制の確立
金の相場を見ても、それがよくわかります。
2004年からさらに21年さかのぼる1983年、金1オンスのドル建て価格は420ドル前後で2004年とほぼ一致しています。
金価格は必ずしも「通貨秩序の混乱」のみで決まるわけではありませんが、少なくともドル基軸体制の動揺が、金価格の上昇要因であることがわかります。
そのような視点から20年後の金価格について、少し考えてみたいと思います。
Next: 金の価値はこの先どうなる?長期投資家が持つべき視点
ドルの復権はあるか?
果たしてアメリカ経済はかつての圧倒的な強さを取り戻し、ドル基軸体制は安定を取り戻せるでしょうか。
もしアメリカの復権、ドルの復権があるならば、金価格は下がるはずです。でも今のアメリカを見ていると、逆に向かって動いているようにしか見えません。
では、アメリカに代わる覇権国が現れるのでしょうか。
確かに中国は一番近いところにいると思いますが、少子高齢化、社会保障の未整備、若年層の失業問題、貧富の格差拡大、地方政府の財政赤字拡大、国内のデフレ問題と世界へのデフレ輸出……まるで問題点のデパートで、今が国力のピークかもしれません。少なくとも人民元がアメリカにとって代わるとは思えません。
インドはじめアジア経済は成長を続けるでしょうが、基軸通貨になるほどの潜在力は感じられません。
このような点から近未来を考えるなら、いぜんアメリカ経済が先頭に立ちつつ、そこに中国やインド、ヨーロッパや日本と韓国、アジア諸国、中南米が続く形……言いかえれば、よく言われるように多極化時代です。
その結果として、世界の経済や通貨体制はより混沌の度合いを深めてゆくに違いありません。
これはさらなる金への信認の高まりで、そのあたりが向こう20年の金価格を予想する材料になるとはずです。
目先の金価格は少し早く上がりすぎるように感じていますが、長期的にみると上のようになる可能性が高いと僕は思います。
『一緒に歩もう!小富豪への道』(2026年1月30号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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