■ADワークスグループの今後の成長見通し
3. 成長戦略
同社は2027年以降のさらなる飛躍に向け、コアスキルの強化によるアセット事業の進化とノンアセット事業の育成により事業ポートフォリオの拡張を推進していく。また、同社の強みを生かせる成長市場を見極め、成長・撤退の選別と資源の再配置を行うことで事業ポートフォリオを最適化し、資本効率及び企業価値の最大化を目指す方針だ。
アセットビジネスにおいては、顧客の多様化、アセットの多様化、エリアの拡大に取り組み、さらなる成長を目指す。顧客の多様化については、一棟再生販売事業に加えて、不動産小口化事業やオフィス区分事業に進出することで拡張してきた。また、アセットの多様化として、ホテル物件の取扱いを2025年より開始したほか、蓄電所ビジネスにも新たに参入する。エリアの拡大として、海外事業についての新たな戦略を2026年夏頃に決定する方針で、アジア圏も含めて検討を進めているようだ。
一方、ノンアセットビジネスでは不動産クラウドファンディング事業、私募ファンド事業、ホテル運営事業等を新規事業として育成していく方針で、2026年に事業立ち上げを進めていく計画だ。
(1) 不動産クラウドファンディング事業
同社は不動産クラウドファンディング事業を新規事業として立ち上げる計画だ。投資家の募集から利益の配当まですべてをWeb上で完結できることや、1万円と少額から出資できるため顧客層のさらなる広がりが期待でき、中長期的な成長期待は大きい。現在、許認可手続きや商品となる物件の取得を進めている段階で、商品の発売に向けてプロモーション広告やブランディング・マーケティング強化を図る予定だ。同社の不動産の目利き力やバリューアップ能力を活かし、信頼度の高い運用・サービスの提供を目指している。商品設計においては、賃料収入による配当だけでなく、キャピタルゲインも狙える商品を販売していく方針だ。さらに、数年以内に追加の免許を取得し、SPCを活用して資産をオフバランス化することで、ノンアセットビジネスとして事業を拡大していく戦略だ。
(2) 系統用蓄電所事業
系統用蓄電所事業とは、系統用蓄電所※を開発し、蓄電した電力を電力市場(JEPX)で売電することで収益を得る事業である。オペレーションについては外部委託する。太陽光発電所の増加や電力需要の増大等により、定置式蓄電システムの導入拡大を政府が国策として推進するなか、ESG投資事業であり安定収益も見込めることから参入を決定した。
※ 電力ネットワーク(発電所や送電線、変電所、配電設備等の電力系統)や太陽光発電等の再生可能エネルギー発電所などに直接接続され、充電した電気を家庭や工場などに送電可能な蓄電池システムのこと。
蓄電所の規模としては、1年程度で稼働開始できる比較的小規模の蓄電所(設備投資額で7~8億円)を開発し、将来的にはファンド化によるノンアセットビジネスへの展開を見据えている。2026年3月に三重県で1号案件が稼働を開始するほか、同年8月に熊本県、同年12月に鹿児島県でそれぞれ稼働を開始する予定となっている。2026年内にはあと7拠点の確保を目指す。
(3) ホテルオペレーション事業
訪日外国人旅行者の増加を背景に活況を呈しているホテル市場への新規参入を開始する。2027年に自社開発のSA型ホテルが完成予定で、そこから運営事業を開始し、ノウハウを蓄積したうえで運営受託サービスを展開していく計画だ。ホテル運営については人手不足の慢性化により、アウトソーシングの需要が高まると予想されており、ノンアセットビジネスの一環として育成していく考えだ。受託サービスの対象はSA型ホテルに加え、サービスアパートメントや民泊物件なども想定している。
(4) 私募ファンド事業
資本効率を高める施策として、私募ファンド事業を立ち上げる。一棟収益物件の仕入れ競争力が向上するなかで、資金面での制約がボトルネックとなっている。これを解消するために、再販や開発物件をファンドに売却しノンアセット化を進めることで、資金効率が改善し、さらなる仕入力の強化や収益獲得の機会拡大が期待される。
2026年に第1号ファンドの組成を目指し、人員・物件の確保を進めている。規模としては50億円以上となる想定で、バリューアップ型のオフィスビルまたはレジデンスとなる見通しだ。
(5) 経営基盤の強化
経営基盤の強化施策として、引き続き人的資本投資に注力していく。同社では生産性向上に寄与する各種のエンゲージメント向上施策を2025年に実施した。具体的には、管理職対象の研修によるマネジメント力の向上で組織力強化に取り組んだほか、管理職・次期管理職層を対象にした合宿を実施し、経営戦略の浸透と経営課題に対する議論を行うことで、経営施策の実行力向上に取り組んだ。また、経営層と従業員の双方向コミュニケーション機会も創出した。
これらの取り組みの結果、従業員のエンゲージメントスコア(経営戦略の伸長、経営層への信頼など)が大きく改善するとともに、これに連動して離職率も2024年の17.8%から2025年は9.0%と大幅に低下した。同社は、オフィス区分事業の円滑な立ち上げを、これらの取り組みにより従業員の意識改革が進んだ成果であると捉えており、今後もこうした取り組みを継続していく方針だ。
また、2026年は企業価値向上に向けた先行投資の一環として、5億円を投下しブランディングの強化にも取り組む。ADWブランドの認知度向上を図り、顧客獲得や売上の拡大、優秀な人材の採用及び定着につなげていく考えだ。創立140周年の記念式典やテレビCM、屋外・交通広告などによるコーポレートブランディングに取り組むほか、プロダクトマーケティングを強化する。こうした取り組みにより、BtoC事業(不動産小口化事業、オフィス区分事業、不動産クラウドファンディング事業)の成長を促進し、長期ビジョン(BtoC事業比率40%)の実現を目指す。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)