■要約
1. 会社概要
kubell(クベル)は、国内最大級のビジネスチャットサービス「Chatwork」の提供や、業務のDXを推進し、中小企業の生産性向上を支援する業務プロセス代行サービス「タクシタ」をはじめとするBPaaS(Business Process as a Service)事業を展開する。同社の強みは、日本国内の労働市場が抱える構造的課題に対し、的確なソリューションを提供している点にある。少子高齢化による労働力不足や中小企業の生産性向上の必要性に対応するため、ITリテラシーが低い企業でも容易に導入・活用できるツール「Chatwork」を中核に据え、多くの中小企業に貢献している。「Chatwork」は日本国内で97.3万社以上(2025年12月末時点)の導入実績を持ち、特に中小企業層に向けたサービスの提供により競合との差別化に成功している。さらに、BPaaSという新しいクラウドサービスモデルを推進しており、業務プロセスをクラウド上でアウトソーシングすることで、中小企業のDXを支援している。これにより、DXが進みづらいIT未熟層であるマジョリティ市場に対しても、導入しやすい形で提供していることが大きな強みである。
2. 2025年12月期の業績概要
2025年12月期の連結業績は、売上高9,529百万円(前期比12.5%増)、営業利益485百万円(同400.8%増)、経常利益458百万円(同506.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益215百万円(前期は1,172百万円の損失)となった。期初予想は外部環境や投資計画を踏まえて修正されたものの、修正後の業績予想に対しては売上高及び各段階利益のいずれも達成した。とりわけ利益面での大幅な上振れが際立っている。EBITDAは1,371百万円(同60.0%増)、EBITDAマージンは14.4%に達した。EBITDAマージンは中期経営計画で定めた2026年の目標レンジ10~15%を前倒しで達成し、想定以上のスピードで収益構造が改善している。この背景には、事業全体における売上総利益の改善と運営効率の向上がある。売上成長とコストコントロールを両立させたことが業績予想の達成と収益構造の改善につながった。
また、BPaaSドメインの売上高は1,000百万円を突破し、2023年のサービス開始からわずか2年で、主力の「Chatwork」に次ぐ第2の柱へ成長した点も特筆すべきである。BPaaSドメインの拡大は、ストック型収益の積み上げと顧客接点の深化を通じてグループ全体の収益基盤を安定化させる役割を担っており、今後の持続的成長を支える重要な要素であると弊社では高く評価している。
3. 2026年12月期の業績見通し
2026年12月期の連結業績は、売上高10,768百万円以上(前期比13.0%以上増)、EBITDA1,500百万円以上(同9.4%以上増)と、引き続き増収増益を見込んでいる。ビジネスチャットの基盤拡大を継続するとともに、BPaaS事業では規模拡大と収益性改善を同時に推進することで、売上成長を再加速する。従来路線での成長持続ではなく、成長軌道の再強化を明確に打ち出した点に経営の積極姿勢が表れている。
中期経営計画では、最終期である2026年12月期の財務目標を売上高15,000百万円、EBITDA1,500百万~2,250百万円、EBITDAマージン10~15%としている。この目標に変更はないものの、M&Aや新規事業等の一定の不確実性を含んでいることを踏まえて、業績予想はこれらの効果を織り込まず保守的に設定した。こうしたアプローチは投資家とのコミュニケーションの透明性を担保するとともに、達成可能性を重視する堅実な経営姿勢を示すものである。
ただし、同社はこれまでの実績を通じM&Aのノウハウを順調に積み上げてきており、M&Aは重要な成長戦略の一角を占める段階へと進化した。案件探索から実行、統合までを自律的に推進できる体制を確立している点は、非連続な成長を現実的な選択肢とする基盤が整備されつつあることを意味する。
したがって、業績予想については、堅実な成長継続を見込みつつも計画達成に向けたアップサイド余地を内包していると弊社では見ている。
■Key Points
・国内最大級のビジネスチャットサービス「Chatwork」や、業務プロセス代行サービス「タクシタ」をはじめとするBPaaS事業により中小企業の生産性向上を支援
・2025年12月期は、売上高・各段階利益のすべてで修正後の業績予想を達成
・2026年12月期は、売上高で前期比13.0%以上増、EBITDAで15億円以上を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木稜司)