■中長期の成長戦略
● 中期経営計画の概要
(1) 新中期経営計画の背景と骨子
アクシスは2026年2月24日、新たな中期経営計画「Go Beyond」(2026年12月期~2029年12月期)を発表した。前中期経営計画「Vision 2027」策定以降、生成AIをはじめとするAI技術やローコード開発が可能なSaaS型業務プラットフォームが急速に普及し、顧客のデジタル化ニーズが質・量ともに拡大している。こうした事業環境の変化を踏まえ、同社は「Vision 2027」を前倒しで刷新し、新たな成長戦略を打ち出した。
新計画では、「SIの先へ、価値共創パートナーへの進化」を謳っており、従来のSI事業の枠を超え、顧客価値向上・企業価値向上・社会的価値向上の3つを中期経営方針に据えている。システム開発の受託者という枠を超えて、顧客の経営課題に伴走し、ともに価値を創出するパートナーへの進化を目指す方向性は、前計画で掲げたITコンサルティングへのシフトの延長線上にあり、一段と踏み込んだ内容と言える。
なお、本計画の確実な遂行に向け、執行体制の変更も同日発表された。現CEOの小倉博文氏がCSO(最高戦略責任者)として戦略立案に専任し、現COOの横田佳和氏が新CEOとして経営全般を統括する体制へ移行する。2026年1月に配置したCTOを含む社内取締役4名・社外取締役3名の体制でガバナンスと執行力の両面を強化しており、中計達成に向けた経営の布陣と位置付けられる。
(2) 財務目標と投資計画
本計画の最終年度である2029年12月期において、同社は以下の財務目標を設定している。
1) 売上高:14,000百万円以上
2) 営業利益:1,600百万円以上
3) 営業利益率:12.0%以上
4) ROE:18.0%以上
5) 配当性向:40.0%以上
2025年12月期実績(売上高8,134百万円、営業利益888百万円)を起点とすると、4年間で売上高は約1.7倍、営業利益は約1.9倍への成長を目指す計画であり、CAGR(年平均成長率)は売上高で約14.5%となる。前計画期間における実績成長率とおおむね整合する水準であり、意欲的ではあるものの非現実的な数字ではない。中長期的にはM&Aなどによるトップライン成長なども検討しており、売上高200億円規模への拡大や東証プライム市場への移行を意識した成長戦略である。
投資計画については、総額80億円超の成長投資を予定しており、内訳はM&Aに40億円超、人材投資に30億円超、サービス開発・設備投資に10億円超となっている。前計画の総額55億円から大幅に増額しており、特にM&A枠の割合が注目される。資金源としては、2026年~2029年の営業キャッシュ・フロー累計70億円超(成長投資控除前)と手元資金34億円(2025年12月末時点)に加え、必要に応じた借り入れも視野に入る。
株主還元面では、配当性向40.0%以上への引き上げに加え、累進配当制度を導入し、公表配当予想額から減配しない方針としている。株主還元総額は4年間で15億円超を見込んでおり、成長投資と株主還元の両立を図る姿勢が一段と鮮明になっている点は株価の下支え要因になるだろう。
(3) 事業戦略
成長戦略としては、SI主力産業の深耕と未開拓産業への展開、成長性の高い技術領域やサービスの拡大、AI活用による事業の高度化の3つが相互に連携・補完する構造となっている。
まず、SI主力産業の深耕と未開拓産業への展開については、金融・公共社会インフラ・情報通信といった同社が強みを持つ既存3領域をさらに深耕しつつ、製造業をはじめとする新たな産業分野への進出を図るべく営業体制を構築する。商流面では、パートナーとの取引比率を50%以上に引き上げるなどアライアンスを強化する。また、ITコンサルティング等の上流工程やデジタル基盤・ネットワーク構築といった高単価領域へのシフトを進め、高付加価値領域の売上構成比を拡大する計画である。
成長性の高い技術領域やサービスの拡大については、AI、Cloud、SaaS/ワークフロー(Salesforce、ServiceNow等)、ERP(ビズインテグラル、mcframe)、データ分析(Tableau、Snowflake等)の5領域を重点技術と位置付け、人材育成を強化する。具体的なKPIとして、ITコンサルティング・PM人材を49名から120名以上へ、フルスタックエンジニアを172名から350名以上へ、AI系資格保有者・関連研修受講者を15名から100名以上へ拡充する。ITサービス事業においては、モビリティを中心としたクラウドサービスの拡充と、自社AIプラットフォーム「コミュニケーションインサイト」を活用したサービス展開にも注力する方針である。
AI活用による事業の高度化については、AIを全事業に共通する「横串」の基盤と位置付け、顧客向けDX支援におけるAI活用提案、既存・新規サービスへのAI機能の組み込み、開発・運用工程における生産性・品質向上の3領域で事業を高度化する。生成AI+RAGによるデータ活用の高度化や、業務効率化AI、意思決定支援AIなどは具体的なAI戦略として評価できる。
(4) 今後の注目点
新中期経営計画は、前計画のITコンサルティングへの方向性を継承しつつ、AI戦略を中心に据えた事業の高度化とM&Aなどの成長投資により、一段上のステージを目指す内容となっている。
今後の注目点としては、まず、M&A戦略の具体化がある。M&Aの実施は前計画期間中も検討はされており、40億円超の投資枠を設けていたものの実施には至っておらず、今後は対象企業の発掘と実行力がカギとなる。高付加価値ビジネスや先端技術を持つ企業の獲得が実現すれば、オーガニック成長に加えた大きなアップサイド要因となるであろう。2つ目の注目点は、人材戦略の進捗である。コンサル・PM人材やAIスペシャリストの確保・育成は計画の根幹であり、採用市場がひっ迫するなかでの実行状況を注視したい。最後に、新経営体制の下での計画遂行力がある。創業者である小倉氏が戦略立案に専念し、横田新CEOが経営を統括する体制は、事業規模拡大に対応した合理的な役割分担と捉えられ、事業推進の加速が期待される。
同社が掲げる価値共創パートナーへの進化が着実に進展し、各財務目標を達成できるか、今後の進捗に注目したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 三浦 健太郎)